【未完の資本主義~テクノロジーが変える経済のカタチと未来】2019年9月出版
おはようございます。ここ三日、6時半にアラームしてるのにも関わらず、8時に起きてしまって罪悪感を感じてます。
この本は、世界でも有数の経済学者が、現在の資本主義が抱える問題とその処方箋を問うた、珠玉のインタビュー集です。ページをめくると、「多くの人がどうでもいい仕事に就いている」「ユートピアは実現できる」「GAFAの支配には対抗策がある」など、刺激的な主張が次々と登場します。
1.AIによる大量失業は当分訪れない
ポール・クルーグマン氏は、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者である。彼の理論は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の理論的支柱という役割も果たしている。クルーグマン氏は、「AIがすべての仕事を奪うという話は、下手なSF映画の類」と一刀両断する。農業従事者が減少しているように、仕事の代謝はいつの時代にも起こっているのだ。
しかし、AI脅威論が叫ばれる背景には、世界的に進む格差の拡大がある。現在は「2つに分かれる道の分岐点にいる」というのが、クルーグマン氏の分析だ。道の1つは寡頭政治、つまり一握りの富裕層が政治を支配し、民主主義すら脅かされる道である。そして、もう1つは政治の力で富を分配し、中間層を復活させる道である。
後者の道を進むためのポイントは、格差が経済的なものではなく政治的なものであり、分配のための富はすでにあると認識することから始まる。
『アベノミクスはなぜ上手くいかないのか』
安倍政権はクルーグマン氏の理論に基づいて、大規模な金融緩和を柱とする「アベノミクス」を実行している。その結果、ほぼ完全雇用が達成され、人手不足が声高に叫ばれるようになった。その一方で、2%のインフレ目標は達成できていないままだ。
クルーグマン氏はその原因を、日本の生産性の低さやイノベーション創出の少なさではなく、企業が賃金やモノの価格を上げようとしないことにあると見ている。さらには、生産年齢人口の急速な減少と、移民に対する不寛容性が経済成長を阻んでいるという。
2.いま起きているのは「Bullshit Jobs」の蔓延だ
デヴィッド・グレーバー氏は、文化人類学の教授であり、アナーキストの活動家としても知られている。そんな彼が、「Bullshit Jobs(どうでもいい仕事)」という名のエッセイを雑誌に発表した。大きな組織では、本人すら意味を見出せない仕事に就いている人が増える一方で、そうした人たちが高給を得ている。
こうした主張が大きな反響を呼び、彼のエッセイは書籍として出版された。大した仕事もせず高給を得ているのだから、本人はさぞ満足だろうと考えるかもしれないが、実態は逆である。みじめな気持ちになり、心身症を訴えるケースなどが多い。こうした状況を受けて、グレーバー氏は人々の労働に対する考え方の変化を望んでいる。
意味のない仕事をなくすための近道は、看護師や保育士、運転手といった人の役に立つ仕事の賃金を上げることである。そして、究極の手段は、誰にでも最低限の生活ができる現金を渡すユニバーサル・ベーシックインカムの実現なのである。
3.テクノロジーは働く人の格差を広げていく
『国全体が裕福になったと思える成長はもう訪れない』
エコノミスト誌は2011年、「過去10年間でもっとも影響力のある経済学者」についてアンケート調査を行った。その一人に選ばれたのがタイラー・コーエン氏。
彼は、AIが仕事を奪うという考え方を改めるべきだと主張する。経済成長にともない、古い仕事が消え去り、新しい仕事がどんどん生まれるという現象は、今に始まったことではないから。
しかし、テクノロジーが普及するにつれて、それを使いこなすスキルの有無により、収入に大きな格差が生まれるとコーエン氏は警鐘を鳴らす。トップ10%から15%の層はかつてないほど裕福になる。一方で、大多数の人は細々と生活を続けるという社会がやってくるのだという。高度成長期のように国全体が豊かになるような成長は、もう訪れることはない。
4.トマ・ピケティ著書『21世紀の資本』
トマ・ピケティは著書『21世紀の資本』において、資本の分配・富の再分配の観点からグローバルな資本課税強化を提唱した。これに対し、ショーンベルガー氏は、データ資本主義における「データ納税」というアイデアを提案している。これは現金を納税するかわりに、保有するデータを公共に開放するという考え方だ。
人々がいま生きているのは、労働者だけでなく小規模な資本家さえも報われず、GAFAのような一部の巨人のみが勝者となる世界だという。もし一部の大企業が保有するデータを開放できればどうか。多くのスタートアップは、そのデータを用いて、よりよい製品やサービスを開発できるようになる。こうして豊かになるチャンスが生まれるというのがショーンベルガー氏の主張だ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?