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『FACTFULNESS』

物事は本質で見ることが大事

ファクトフルネス(FACTFULNESS)とは、「データを基に世界を正しく見る習慣」を意味する。多くの人は、「自分が知っている世界は、事実とそうかけ離れたものではない」と信じこんでいるだろう。

1.みなが同じ勘違いをしている

質問 世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?
A 約2倍になった
B あまり変わっていない
C 半分になった

正解はCだ。ところが正しく答えられたのは世界平均で7%だけである(2017年14カ国・1万2000人を対象に行なわれたオンライン調査による)。

著者らは、さまざまな国のさまざまな分野で活躍する人々に一連の質問をしてきたが、いずれも正当率は低かった。学歴の高い人や、国際問題に興味がある人たちの場合も同様だった。

そもそも無知が原因であれば、ランダムに答えた場合の(あるいはチンパンジーに選ばせた場合の)33%に近づくはずである。何も知らないというよりは、みなが同じ勘違いをしているのではないかと思われた。実際に回答の傾向をみると、誤った2つの選択肢のなかでも、より極端なものが選ばれることがわかった。

2.ドラマチックな物語を求める本能

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私たちは次のような考え方に染まっていないだろうか。

「世界では戦争、暴力、自然災害、人災、腐敗が絶えず、どんどん物騒になっている」

「金持ちはよりいっそう金持ちになり、貧乏人はよりいっそう貧乏になり、貧困は増え続ける一方だ」

「何もしなければ天然資源ももうすぐ尽きてしまう」

いかにもメディアでよく聞く話だし、こうした考え方は人々に染みついているが、著者らは「ドラマチックすぎる世界の見方」と呼んでいる。精神衛生上良くないうえ、そもそも正しくない考え方。

世界はこうしたドラマチックすぎる見方に反して、基本的にどんどん良くなってきている。「ファクトフルネス」という習慣を毎日の生活に取り入れて訓練を積めば、事実に基づいて世界を解釈できるようになる。そして判断力が上がり、何を恐れ、何に希望を持てばいいのかも見極められるようになる。

3.現実を正しく見るためには、次の2点に気をつけよう

1)「平均の比較」――平均は情報を素早く伝えられる上に、役立つヒントを得られることが多い。ただしそれを単独で用いた場合、分布が隠れてしまうという欠点を持つ。たとえば数学テストの男女の平均点を出すと、「527点対496点」という数字が出てくる。このように異なる独立した数字は、分断を際立たせる。しかし得点分布にしてみると、2つのグループはほとんど重なり合っていることがわかる。違いは分布のわずかなピークのずれに過ぎない。
(2)「極端な数字の比較」――世界で最も格差が大きい国といわれるブラジル。そこでは最も裕福な10%の人たちが、国全体の所得の41%を懐に入れている。メディアはこうした数字を、サンパウロのスラム街の風景にオーバーラップさせがちである。しかし実際のブラジル国民の大半は極度の貧困を抜け出し、バイクや眼鏡を買い、貯金をすれば子供を高校に行かせることのできる世帯だ。社会には「分断」といえるほどのものは見当たらない。ほとんどの人は真ん中にいる。

4.貧困は少なくなり、寿命は延びた

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次のうち、あなたの考えに最も近い選択肢を選んでほしい。
A 世界はどんどん良くなっている。
B 世界はどんどん悪くなっている。
C 世界は良くなっても、悪くなってもいない

世界30カ国の調査からは、世界の大半の人は、「世界はどんどん悪くなっている」と考えていることがわかった。だが実際には、数えきれないほどの「小さな進歩」の繰り返しが世界を変え、数々の奇跡を起こしてきたという事実がある。

極度の貧困の中で暮らす人々(レベル1に暮らし、1日2ドル以下で生活をする人々)の割合は、1997年には世界の人口の29%を占めていたが、2017年には9%まで下がった。いま世界の大部分は真ん中のレベル、つまりレベル2と3に暮らしている。これは1950年代の西ヨーロッパや北アメリカと同程度の生活水準だ。

もうひとつ世界の平均寿命を見てみよう。1973年には約60歳だったが、現在では約70歳になった。これは高所得国だけの数字ではない。わずか40年のあいだに、世界全体で10歳も寿命が伸びたのである

このほかにも、世界がどんどん良くなっていることを示す指標には事欠かない。それにもかかわらず、人々は「世界はどんどん悪くなっている」という思い込みからなかなか抜け出せない。その原因は私たちの「ネガティブ本能」にある。

5.ネガティブ本能を抑えるファクトフルネス

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ネガティブ本能にからめとられている私たちは、どうすれば物事が良くなっていることに気づけるのだろうか。

「悪い」と「良くなっている」は両立する――「世界は良くなっている」といっても、万事オーライというわけではない。頭の中で「悪い」と「良くなっている」という2つの考え方を同時に持つように心がけよう。

また悪いニュースのほうが広まりやすいのもあるメディアや活動家は、人々のネガティブ本能に訴えかけて利益を得ようとする。いくら良心的な報道機関であっても、中立性を保ってドラマチックでない世界の姿を伝えるのは難しいことだ。こうして良い変化は、私たちの耳に入ってこない。いっぽうで統計を見れば、良い変化がいたるところで起こっていることに気づくだろう。自分たちで探すしかない。少なくとも「悪いニュースのほうが広まりやすい」と心得ておけば、毎日ニュースを見るたびに絶望しないですむ

「なにひとつとして世界は良くなっていない」と考える人は、次第に「何をやっても無駄だ」と考えるようになる。そして世界を良くする施策に対しても否定的になってしまう。なかには過激派になり、まったく生産的でない極端な手段を支持する人も出てくるだろう。ネガティブ本能がもたらす悪影響のうち、最悪なのは希望を失うことなのだ。


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