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知らない男と一年程過ごした話 パート1

中学2年生の春
母と私は夜ご飯を食べていた。
母と私は仲が悪かったが、
こうして夜ご飯を一緒に食べることは
ごくまれにあった。

まれにあったのだが、
まれにあったのだか、、
今日はいつもと違っていた。

料理は2人分


ではなく3人分だった。


母と私と、



まっっったく知らない男の人がいた。

何も言わない男の人はもくもくとご飯を口に運んでいた。
たまに これ美味しいな みたいな
感じで「うん」と小さな声が漏れていたくらい。

母は嬉しそうに「美味しい?」と聞いていた。
コクコクと頷く男の人を見て「作り甲斐あるわー!」と笑いながら。

私はずっと 誰なんだこいつは そう思いながら
少しずつご飯を食べていた。

母には彼氏がいたのでこの人は彼氏ではない。
彼氏のことを激愛していたので浮気でもない。

となると考えられるのは



やめた。
考えるのをやめた。
嫌なことが頭を駆け巡ったからではなく
何もわからなかったから。
本当に何もわからなかったから。

食事が終わると男の人は寝転がってテレビを見はじめた。

こいつは誰なんだと私は思いながら
なにも言わないその男の人と一緒にテレビをみた。

母は嬉しそうに後片付けをしていた。
鼻歌は昭和の懐メロだった。


次の日もその男の人は夜ご飯を食べにやってきた。
男の人は昨日と同じで何も喋らない。
私も聞けない。
母は嬉しそう。

そんな日々が数ヶ月も続いた。

数ヶ月が過ぎたあたりから男の人は徐々に喋るようになり、
気が付けばベラベラと一生喋り続ける奴になっていた。
とても喋っていた。

唇がすり減って無くなってしまわないか心配してしまうほどには。

私はこの男のことを推定32歳程だろうと
仮定していたのだが
なんとびっくりすることに16歳だった。
老け過ぎていた。
ハンサムではあった。
ハンサムではあったが老け過ぎていた。


目はくりっとしていて、目に光は0。
唇は分厚くぷるんとしていた。
髪の毛は汚い金髪で、いつも作業着、
ニッカポッカを着ていた。
汚れていたので仕事を頑張っているっぽかった。

私は偏見まみれなのでニッカポッカを着ている人はヤンキーだと決めつけていたので

怖くて自分から話すことはなかった。

ある日学校帰り友達と遊んでいて、家の近くを通ったので、ちらっと家をみると
まだ母も私も帰ってないのでその男の子は玄関前に
チョボっと座って私たちの帰りを待っていた。

友達に「あの人何歳やと思う?」
と聞いたら「32歳くらい?」と言っていた。

家の近くから少し遠く進んでから
めいっぱいの声で「やんな!?!?」
と言った。

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