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Netflix映画「彼女」※ネタバレ含

私のnoteに辿り着いて頂きありがとうございます。私の人生を変えた映画「彼女」について、私の感じた衝撃をメインに書いていこうと思います。

あらすじ等はきっと頼りないですが、ネタバレは多く含むと思うので、ネタバレなしにこの映画を観たいと思っている方は、鑑賞後にまた来て頂けると嬉しいです。

みなさんは人生を変えるほどの衝撃を受けた映画はありますか?

私の人生でそのような経験は初めてだったし、こんなにも映画に影響を受けたのは初めてでした。

そしてこの映画を観る前の自分には、もう戻れないと思っています。それほどまでに私にはとても衝撃でした。


大まかなあらすじは、同性愛者のレイが高校時代に好きだった女性のDV旦那を殺し、二人で逃避行に出かけるロードムービーです。

私はさとうほなみさん目当てで、あらすじもそこそこ、レビューも一切見ずにとても軽い気持ちで見始めました。しかし、鑑賞後にあまりの衝撃でレビューを見ると賛否がかなりわかれていて、どちらかというと低評価が目立っていたのにまた衝撃でした。


それほどまでに私の心には刺さりすぎた。


その理由を自分なり丁寧に考えていく必要があると感じました。そして、何周も映画を観て、人と話し、色々考えて感じたことを以下に書いていこうと思います。


私がこの映画に思いっきり入り込めたのは、主人公のレイの気持ちや行動原理が自分と似ていると感じたからだと思います。

レイはお金持ちのお嬢様で美容外科医です。
家族関係は良好、兄や兄嫁も人格者で、一見何不自由なく生活をしています。セクシャルマイノリティではあるけれど、自分を愛してくれる性的指向の同じ人が思春期の頃から居ます(のちの恋人の美夏)
愛され、自分も大切に思うことができる相手と過ごし、仕事をし、平穏な日常に身をおき、自分自身幸せだと認識していると思います。穏やかな性格で、全てを持っている人。傍から見るとそんな人に見えるレイ。

私は割とフラットで、外に感情を露出するタイプではないので周りから見ると穏やかにみえる人間なのだそうです。自分でもそう見えてるだろうなと自覚があります。

ちゃんとそれなりに持っている。
仕事に就き、職場にも恵まれ、家族にも恵まれ、健康で何不自由のない毎日を過ごす人。
自分でも、これは有難いことで幸せだと思っています。
今までそんな自分に違和感を感じたことはなくて、「ちゃんと」幸せだなと思い、それが「普通」なんだと思っていました。
それをこの映画を観るまで疑問にも思いませんでした。
そして多くの人が自分と同じ感覚で生きているのだと思っていました。


その私と似ているはずのレイは人を殺めてしまう。
私とレイとの差…これが何だったのかとても疑問に思い、何度も見返しました。


私にとってその疑問を解決するシーンがありました。

七恵の夫を殺めたあとにレイと七恵が一緒にお風呂に入るシーンです。

レイはその時七恵に「私の人生なんてあんたがにこってしただけでボロボロになっちゃうんだよ」と泣きながら伝えるところです。

レイの思う私の人生とは何なのか。ボロボロになったものは何なのか。

それはきっと、その前まで過ごしていた10年間の「恵まれて幸せと感じる普通の人生」だったのではないかと思いました。

美夏の想いを受け入れ、与え返し、大切に思っている。幸せになれる相手と過ごす穏やかな日々。

どこかいつも冷静で「相手がこうしたら喜ぶだろう」と考えて行動し、能動的なようで実はとても受動的。美夏の誕生日は、そんなレイの心を語っているようなシーンだと感じました。


だけどレイは七恵の為に人を殺めた。


私は気づきました。

「私は、その人の為なら人を殺めてもいいと思うような人に出会い恋に落ちた経験がない」

私は今まで恋人の為に、お守りを作ったり、サプライズをしたり色々としてきました。
自分で言うのもですがサービス精神旺盛な恋人だったと思います。
演じているかと言えば違います。自分自身幸せはちゃんと感じていたし、相手が喜ぶことを思い浮かべて行動していました。
自分は行動派の能動的な人間だと思っていました。
だけど、会いたいと恋焦がれた事もなければ、障壁に打ち勝とうとした事もありません。
実はとても受け身だったんだと気づきました。
好きって言ってくれて嬉しい、気持ちに答えたい。私の行動原理はそこであったような気がします。

でも、もしそのような恋愛(と呼べるのかすらもうわかりませんが)をせずに、自分と向き合い、自分が心から好きだと思える相手を辛抱強く待っていたら。

私は激しく心が揺さぶられて、この人の為なら…と思える恋をしていたら、この映画がそれほど刺さらなかったかもしれません。


もちろん、私の人生は幸せです。平穏で家族を大切にに思う日々に何の文句もありません。


ただ、私はレイが羨ましく思いました。

一度でいいから人生がボロボロになるほど人を愛してみたかった。

七恵を見てとても嬉しそうに笑うレイ。そんな風に笑ってみたかった。

私は既婚ですし、今の人生で十分幸せです。なので、きっとその扉は一生開くことがありません。
だからこそ羨ましい。

もし私が今の人生で、その扉を開く相手に会ったとしたらもう本当に法に触れるかもしれません。

10年間の幸せな生活を捨てて得たレイの数日間の逃避行という幸せの旅。10年間が覆るほどの数日間、どれほど幸せなのか私も感じてみたいと思いました。


蛇足ですが、我が子に対する感情は、この深い愛によく似ています。この子の為なら死ねますし、この子の為なら人を殺めることができるかもしれません。なので、まるでレイの感情がわからないわけではないなとも思っています。

子供の存在は本当に貴重です。


そしてもう一人の主人公、七恵。はっきり言って、クソ女です。すごく性格が悪い人に見えます。
人を利用するために見え透いた嘘をつく。自分に向けられた好意を悪用する。レイが何故好きなのかさっぱりわからないほど、七恵はレイに酷いことばかりを言います。

でも、最後の七恵はとてもよかったです。

学生時代、レイを受け入れてなかった七恵。
時代がそうだったし、周りがそう言うから。
同性愛なんて有り得ないでしょう。そう思っていたのではと感じました。しかし同時にレイに対して特別な感情を持っていたのもわかります。

同性愛に対する憎悪なのか、全てを持っているレイに買われた憎悪なのか、素直になれない七恵。
向けられた好意に対して時には近寄ることを許し、人として受け入れている素振りを見せつつ、吐き捨てる。

だけど、最後にレイと結ばれた七恵は、性別を超えた愛に気づいているような気がしました。人はもっと自由に人を愛せること、そんなことを感じてとても心が揺さぶられました。


それからラストのシーンも印象的でした。

七恵の望み通り、七恵も手にかけることをできると言ったレイ。でも七恵のいない人生なんか嫌だと大泣きするレイ。
どうせ自分は生きてたくないから先に死なれるのが嫌なら、殺してあげるという七恵。

その言葉を聞いて、七恵に殺させない道を選んだレイ。愛の深さを感じます。

そしてそれに答える七恵。
「待ってる」というのは七恵にとってかなりの心情の変化です。生きてたくなかったのに、レイの為に生きる道を選んだ。

レイはとても幸せでしょう。
獄中でもきっと幸せを感じたままで居られる。


私はハッピーエンドだと思いました。


学生時代の挿入は七恵の心情の変化を描くのにとても重要でしたし、確かによく脱がされてるなとは思いましたが、最後の二人が結ばれるシーンはレイの表情がとても良く素敵で必要なシーンだったと思います。

女優さんの演技も表情がとても印象的でした。女性が主人公なので、言葉の選び方も丁寧で、印象的なセリフも多く、感情がしっかり乗っていて引き込まれました。


自分にそんな憧れがあったこと、人間の愛の自由さ、沢山の気づきがありました。

私はこの映画がとても好きです。

私がこの映画から受けた影響で、私の人生は大幅には変わりません。だけど、きっと今ある幸せを前より噛み締めることができるし、秘めた感情を知れたことで、きっと深みが出たと思います。

人生は変わらない、だけどすごく人生が変わった。そんな映画でした。






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