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間取りの考え方~平屋の大きな屋根の家~ 2.「構造チェック編」

コラボ企画が始まりました!

 Sawa~建築士のあたまの中さんのとのコラボ企画が始まりました!

 Sawaさんに書いて頂いた間取りの考え方~平屋の大きな屋根の家~』の記事を受けて、この図面を構造的な視点でチェックしていきます。
 この企画は、

Sawaさんの間取記事

私の構造チェック記事 (←今ここ)

Sawaさん記事

···

とリレーして記事を書いていく予定です。
 こちらが、初回Sawaさんの記事です↓

今回は、私の番になります。

建築士の分業

 まず、本題に入る前に、建築設計の分業について説明します。
 建築設計では、意匠・構造・設備と内容が分かれていて、それぞれ専門の人が担当します。

意匠設計者:デザイン性や居心地・使い勝手のよさ、建築法規などを考えて設計する。
構造設計者:地震や台風に対する安全性を考えて、設計する。
設備設計者:電気設備や、空調、換気、給水、排水設備を設計する。

意匠・構造・設備の役割

 一般的に、家を建てるお客様は、意匠設計者と打合せします。そして、意匠設計者は、それをもとに、構造設計者、設備設計者と連携しながら設計を進めていくことになります。(図1)
 今回は、この中で、意匠設計と構造設計のやりとりを、一般のお客様にも見て頂こう!という企画です。構造をやっている私からすると、普段、こんなふうに建物の安全性を考えているんだよ!ということをお客様にわかってもらえると嬉しいです。


図1 お客様・意匠設計者・構造設計者・設備設計者の関係

構造設計者がチェックすること1:壁量

 頂いた意匠図に対して、構造設計者がチェックすることは多くありますが、ここでは、重要な2項目について説明します。まず1つめは、壁の多さです。
 木造は、基本的に、ピン接合といって、接合部分が回転してしまう工法となっているため、壁がないと図2のように倒れてしまいます。


図2 木造建築物に壁がない場合

 地震力に対しては、図3のように、壁の中のすじかいや合板などで抵抗することになります。だから単純にいうと、壁の多い家=地震に強い家となります。


図3 地震に対して、すじかい・合板などで抵抗する

壁量を見ていきましょう!

 それでは、壁量を見ていきましょう!(図4)
 地震力は、X方向とY方向に分けて考えます。
 まず、赤い矢印(→)X方向に揺れた時には、赤い部分の壁が地震に抵抗します(全長さ合計37.8m)。
 青い矢印(↑)Y方向に揺れた時には、青い部分の壁が地震に抵抗します(全長さ合計18.9m)。
 はたしてこの壁の長さで足りているのでしょうか?

図4 壁量チェック

 壁長さ合計に壁倍率という係数をかけて、存在壁量というものを算出します。
【存在壁量】
 X方向 37.8m x  2.5倍 = 94.50m = 9450cm
 Y方向 22.5m x  2.5倍 = 56.25m = 5625cm

 では、どれだけ壁があれば安全なのでしょうか?
 必要壁量は、床面積や、風を受ける面積などから計算し、下記になります。
【地震に対する必要壁量】
 X方向 140㎡ x  11 = 1540cm  < 存在壁量9450cm OK
 Y方向  上に同じ 1540cm  < 存在壁量5625cm OK

【風圧力に対する必要壁量】
 X方向 850cm  < 存在壁量9450cm OK
 Y方向 3400cm  < 存在壁量5625cm OK

 地震力に対しても、風圧力に対しても、必要な壁量に対して、十分な壁量が存在しており、OKという結果になりました!
 これで、壁量については、地震時も風圧時も問題ないということがわかりました。また、壁配置のバランスなどもチェックするのですが、今回のプランについては大きな問題はありません。

構造設計者がチェックすること2:梁のかけ方

 今度は、梁のかけ方についてチェックします。

図4  ちなみに「梁(はり)」というのは、この部分です。↑
柱から柱に、水平にかける部材です。

 平面図に、屋根にかける梁を落とし込んでみます。(図5)  青と赤で書き込んだ部分が、屋根の梁になります。そして、梁サイズが大きくなりすぎてしまわないか、チェックします。

図5 屋根の梁のかけ方

 今回は、赤で書いた部分が、壁から壁まで距離があるので、梁サイズが大きくなってしまうところになりました。(「105x330」と小さく書いてあるのは、梁サイズが105mmx330mm必要という意味です。厳密には屋根の種類などにより変わりますが、今回は、ソーラーパネル無しの金属屋根で設定しています。)
 梁サイズが大きくなると、部材が調達しにくくなる、天井に梁が出てきて邪魔になる、などの不具合が生じる可能性があります。
 梁を小さくするには、対面キッチン部分に柱を設置するという案もあります。

Sawaさんからの質疑に回答します

 また、Sawaさんから、構造の気になる点について記事に書いてあったので、回答しようと思います。(図5)
・駐車場の開口の大きさ
→梁が大きくなってしまいますが、可能な範囲だと思います。
・玄関ポーチ上部の屋根部分の納まり
→大きい梁が必要なので、垂れ壁などが出てきてしまいます。
・中庭の吹抜け屋根部分
→吹抜け屋根は、構造的には少し弱くなってしまいます。中庭部分に火打ちなど入れると強くなりますが、どうしましょうか?
・LDKの梁のかけ方
→図のようなかけ方になります。梁が大きすぎるのであれば、対面キッチン部分に柱を入れたり、梁を斜めにしたりする方法もあります。
・耐力壁のバランス
→バランスは問題ないです。

図5 Sawaさんへの回答

このチェックをSawaさんに返します!

 それでは、このチェックをSawaさんに返そうと思います。

構造チェック結果をまとめると
1. 壁量については、問題ありません。
2. リビングと、ポーチ、駐車場部分の梁が大きくなってしまいますが、デザイン的に問題ないでしょうか?
(柱を追加する対案もあります。)

ということです。

 それでは、長い記事になってしまいましたが、Sawaさんからの記事を楽しみに待とうと思います。
 皆様からのご意見、ご質問もどんどん受け付けますので、コメント頂けると嬉しいです。


つづきはこちら ↓

コラボ記事はこちらにまとめています。

よろしくお願いいたします。


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