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蔵を作るには?

 前回につづき、「蔵」の話題です。

蔵を新築したいというお客様

 昔、
 「『蔵』を新築したいが、どうしたらいいか?」
 と相談を受けたことがあった。
 え? 蔵の改修ではなく、蔵の新築?
 蔵に魅力を感じていて、新しく作りたいという話だった。結局、その話はボツになったが、「蔵ってどうやって作るんだろう?」と、今まで考えたこともない宿題を頂いた。

先輩建築士に頂いたちょっと古い専門書

 以前に、先輩建築士の方が事務所を閉めるからと、古い建築本をいくつかゆずって頂いた。
 その中の1冊がこの本。

『木造住宅 設計とおさめ方』
社団法人 日本建築士会連合会 監修
社団法人 大阪府建築士会 編集
昭和55年発行
古いと言っても、私と同い年····

 当時の一般的な木造住宅の図面の描き方から、構造計算や設備設計、積算の方法まで書いてある、教科書的な標準仕様書的な本だ。
 現在、新築住宅を設計しようとする時には、だいぶ仕様が変わってしまって参考にならない。
 でも古い住宅を改修する時には、こんなふうに建てられていたのか、とかなり参考になる。
 土壁の仕様も何種類か載っていて面白い。

蔵についての記述が

 そしてなんと、その本に蔵についての記述があった。

*土蔵について記してみよう。
◆土蔵の型式は、全国各地にそれぞれ異なった意匠のものがあるが、近畿地方のものについて記してみる。

 おお、この地方による違いも気になる。誰か研究した人はいるのだろうか。
 では、土壁の構造はどうなっているかというと

◆一般に、二·三の土蔵と称して、2間✕3間のものが多く、屋根は本瓦葺きで、勾配は5~5.5寸とする。壁の厚さは20~30cmで、屋根にも12~15cmの土を塗り付ける。軒先の鉢巻きと称する部分は、2段または3段をつける。
◆壁は白漆喰壁が多く、腰は御影石張りまたは人造石塗り洗い出しとするか、または杉の焼き板で厚さ18~24mmぐらいのものを相決り加工をして、堅羽目板張りとすることもある。

などなど、各仕様が書かれている。
 壁厚20~30cmって、かなり厚いな。防火のためにはそれくらいいるのか······。
 柱は13.5~16.5cm角の木の柱らしい。普通の住宅は、10.5~12cmだから、それに比べるとかなり頑丈。
(一般の方は、外部から見ると、土壁や石積みだけで建てられているように見えるかもしれない。が、ほとんどの土蔵は、骨組みは木で作られている。)
 そして、土蔵の参考図まで載っている。

じゃーん!

 これを見れば、新築で土蔵を作ることができる!?
 でも、実際はこれができる職人さん(特に左官)が、なかなか居ないだろうから、難しいんだろうな。
 と思ったら、本にも書いてあった。

◆木造の土蔵は、大量の材料と非常な労力を必要とするから、今日では鉄筋コンクリート造りで計画されることが多い。
◆次に鉄筋コンクリート造りの土蔵の実例を示しておく。

 そりゃそうだよね。鉄筋コンクリート造だったら、手間も工期も短縮。防火上も強度上も問題なし。
 でも、あのお客様が欲しかったのは、コンクリートの蔵ではないんだろうな。

 ということで、まだまだ蔵の研究は続く?かも?
 地方や時代によるバリエーションも気になる。また、わかったことがあれば書こうと思う。

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