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40万円のセミナーであなたも整体師になりましょう!(なれるとはいっていない) 全健会体験5

もーいやだ。
もう通わない。
こんな施術院やめてやる!!

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通い続けたら70万払わされるなんて無理

私は会計事務所に勤めています。
会計事務所にとって年度末付近は確定申告と決算が重なる真の地獄を味わえる素敵な時です。

当然、肩こりもひどくなります。
本来はそんな時期にカイロの施術を定期的に受けられるって大変ありがたいこと。

でも、ここの全健会カイロプラクティックの治療院は長く通ったら70万円の健康グッズセットを買わされるアリ地獄。いくら肩こりが良くなったとしても通い続けたくありません!

しかし、闇は70万円の健康グッズセットだけではありませんでした。
何とまだ伏兵は潜んでいたのです……。

壮大なるフラグ回収「あなたも整体師になりましょう」

もう嫌だ通いたくないと思いながら貧乏性のため払ってしまったお金がもったいないと通う小市民の私。
あの中途半端な色恋営業をかけてくる勘違い50代カイロプラクターの顔を見るのは正直苦痛です。目線を伏せたまま施術院へ入っていくと、先生はこう言いました。

「今日は疲れてますねー!」
「はあ」
「視線が落ちてる!」

は?
え?
そんなところで判断してんの?

確かに年度末の激務で疲れておりますが、視線が落ちてるのはあなたの顔を見たくないからですよ。自分が嫌われてるとか気持ち悪がられているとか想定しないのは、浅いですね。カイロやってない人のほうが正確に判断できるところでしょうね。

「今日も背中が丸まってますねー!肩が内に入ってますよ!」

横になって肩をチェックされていると、ふと思いました。
(この人に対して心を閉じたいから、ここまで肩が内に入るんじゃないのかしら)
下らない仮定です。

カイロに通って良かった点もあって、自分の身体に対して意識を向けるようになりました。肩を外に開くエクササイズをしてみたり普段から姿勢を気をつけてみるようになったんですね。

なのに、ここに来るとくるっと肩は内に入る。
非科学的な話で恐縮ですけれども、もう私の体はこの施術者を拒否しているのではないのか。そんな気分にすらなってきました。ああ年度末。疲れてる。

「ちょっと背中が内に入ってるので、肩甲骨はがしやってみますね!」
「えっ?」

気がついたら私の上半身は宙に浮いていました。
先生が肩甲骨だけを持った状態で私の体はぷらーんと施術台から浮いたのです。

は?
なにこれ!
怖いんだけど!!

私は頭が真っ白になりました。
先生は私の異変にも気づかず「はい反対もー」と同じように上半身が浮くくらい肩甲骨を引っ張り上げました。

何この施術!
強引すぎ!
ないわ!

今までおじいちゃん先生のかなりワイルドな整体を受けたこともあった私ですが、ここまでアクロバティックでひどい施術ははじめてです。

施術後、相変わらず笑顔で(※目は笑っていない)先生はまたあの内容があるんだかないんだかわからない系の全健会の動画を私に見せました。

???
これを見せて、何がしたんだろう。

私が首をかしげていると、先生は意気揚々とチラシを目の前に置きました。
「どうですか、なめこさん! なめこさんもカイロプラクティックを学んでみませんか!」

……?
???
???(宇宙猫の顔)

「え、学びません」
「どうして! 自分で学べば生涯施術料は0円なんですよ!?」
「そんな時間そもそもないです」
「時間は作るものですよ!」

私は治療院の応接セットにかかっている、松岡修造の日めくりを恨めし気に見ました。

修造さん、あなたに罪はありません。
しかし、この無駄に自論を押しつけてくるエネルギーが「やればできる!」「あきらめるな!」「努力あるのみ!」という修造の笑顔から生まれているのだとしたら……。修造さん。私はあなたを恨みます。

「そもそも時間が惜しいからここで施術を受けて自分でメンテナンスする労力をお金で買って省いているわけです。なんでそれが自分で勉強しなきゃならないんですか」
「まあまあ。年度末大変なのはわかりますけれども、すごくいいセミナーがあるんでぜひ参加してほしいんですよ」

私は眼前に広げられたチラシを見ました。
そして、入ってきた数字に息を飲みました。

セミナーの料金、40万円。

誰が行くかよ!!
「1日無料セミナー」とかならまだわかるけど、40万かけて1週間も時間とられるとか、年度末の今なんか特に論外!!

「先生、これでもし私が講習受けて整体師になったとしますよね」
「はい、すばらしいですね!」
「先生はそれでいいんですか? 整体師が増えたらライバルが増えるってことなんですよ? お客を取りあう相手が増えるってことなんですよ?」
「そんなのは大丈夫ですよ! みんな健康になればいいので!」

????????????????
答えにならない答えに、私は困惑しました。
この人頭お花畑なんだろうか。大丈夫か。

私はここの治療院は「整体師募集」というノボリを掲げているようなところだったと思いだしました。
なるほど、そういう意味ではブレてはいないわけです。意味不明だけれども。

しかし、この金額。
1週間40万円、1日当たり5.7万円。
会場費などの実費や人件費を差し引いても、結構良い利益が見込めるセミナーに見えます。

私はピンときました。
これはバックマージンがあるな。
この人、私をカモろうとしてる?

「いや、セミナーとか興味ないですし行かないです。チラシもいらないです。次は来週の土曜日が良いんですけど」
「あ、はい……」

あからさまにしょぼくれる先生。
わかりやすい。

最後に先生は、帰り支度する私を見てこう言いました。
「今日の服はグレーですね」

反撃スキル:もみ返し

次の施術日。
私は怒りに震えていました。

「こんにちはー、おや、今日も視線が落ちてますねー」
能天気に浅い解釈を並べる先生に、余計に怒りが煽られます。
「それ、先生の顔見たくないだけなんですけれども」
「えっ?」
「あのねえ!」
私のぶち切れスイッチが一気にONになりました。

「こっちは年度末で忙しいんですよ!そんな大切な時期に肩甲骨はがしなんて強烈なことやられたら困ります!! あれからもみ返しがひどくて頭がボーっとして仕事の能率が落ちたじゃないですか!!!」
「えっ、えっ、もみ返しがあったということですか?」
「そうですっ!前回施術から2~3日もみ返しがひどかったんです!」

呆然とする先生に、私は畳みかけました。

「あのねえ、先生、治したいって気持ちありがたいですよ!? 体を良くしたいって気持ちありがたいですよ!? だけどその気持ちが行き過ぎたらだめなんですよ!先生は『良くしたい』って気持ちが強すぎる!!! 良くなるにしたってペースってもんがあるんです! 自分のペースで施術しないでください!私の体のペースを無視した施術をしないでください!!」

私は強い視線で先生の顔を見据えました。
久々に先生の顔を見た気がしました。
さすがにこの時はいつものわざとらしい作り笑いも消えていました。

「ちゃんと相手の生活見てくださいよ!! 相手のペース見てくださいよ!!! 生活乱れるような施術をされたら困るんです!!!」

「いや、いや……もみ返しっていうのは今もあるんですか?」
「今はありません」
「ずっとひどかったってことですか?」
「帰宅直後から3日くらいがピークでした。そのあと緩やかに落ち着いていた形です。なんでそんなこと聞くんですか」
「いえ、ずっと痛いということならばそれは器質的問題かと思いまして、それなら病院にいったほうが――」
「病院に行かなきゃならないような施術してるんですか!!最低ですね!!!」

すっかりヒートアップしてしまった私は激おこモードが収まりません。今までの高額健康グッズだの高額セミナーだのプレゼンされてきたストレスが一気にここで濁流のように放出されました。

「で、では、そうですね……今日は肩を触らないで施術しますね」
「そうしてください!肩は触られたくないですっ!!」

激おこのまま私は施術台に乱暴にどすっと横たわりました。
我ながら、ここまでしても通う貧乏根性が情けないです。ああ、回数券さえ買わなければこんな目に合わなかったのに。回数券、買わなきゃよかった。

そう過去の自分の愚かさを呪ってもはじまりません。「あと3回、あと3回で解放される」と呪文のように繰り返して自分をなだめます。

しばらく無言でのソフトな施術が続いた後、先生が口を開きました。

「あのーすいませんでした」
「はあ」
「何か他にも気が付いたことがあったら言ってください」
「そうですか。じゃあ言わせてもらいますね」
たまりにたまった不満を吐き出すべく、私は腹を決めました。

「まずBGM。どうしてこのBGMを流すのですか」
「えっ? BGM……ですか?」

ここの治療院でインテリアに関する違和感があったのは前も書きました。しかし施術中にインテリアは目に入りません。そこまでの問題ではありません。しかし、BGM。テメーはだめだ。

ここの治療院ではいつもJ-popの曲が流れていました。しかも、浜崎あゆみやBUMP OF CHICKEN、YUIやいきものがかりなど、どう考えても50代男性が好むような音楽ではない曲がかかっていました。

「それは、世代かなって思う音楽を選んでかけてますが」
「やっぱり!!!」

そう、世代です。あゆは世代です。
確かにそうなんですが、私はバンギャル。浜崎あゆみは友達が聞いていたから聞く程度で、世代だからって思い入れのあるアーティストではありません。聞いていて心地よい音楽なわけではありません。

ならば好みの音楽であるヴィジュアル系バンドの曲をかければいいかというとそれもまた違います。確かに推しの歌声が聞こえてきたらテンションはぶちアガりますが、施術台の上で頭をぶんぶん振るわけにもいかないのでかえってストレスがたまります。

そうじゃないんです。
ここは治療院なんです。
癒し、リラクゼーションの場なんです。

「J-popかけるのやめてください」
「こういう曲は好きじゃないですか?」
「好き嫌いの問題ではなく、J-popってビートを刻む音楽が多いからです。ドラムやベースの音でドン、ドン、ドン、ドンって響く音って交感神経には効きますけど副交感神経優位にはなりません。しかも意外とそのビートが早くてドン,ドン,ドン,ドンくらいのテンポで刻まれると明らかに脈拍より早いんですよ。そうすると心音もそっちに引っ張られてばくばくしてくる。これは興奮させて気分を上げようとする時には有効です。しかしここは治療院ですよね、施術中は癒されたいしリラックスしたいし深く呼吸がしたい。そういう時に一般的なJ-popの楽曲は合ってません。私はこの場でJ-popが聴きたいとは思いません」

ずっと腹にため込んでいたモヤモヤを吐きだせて、私はすっきりしました。

「す、すいません。曲かけ直してきます」
「はいお願いします」
「どんな曲だったらいいんでしょうか」
「ヒーリングミュージックや歌の入らないインストゥルメンタル、波の音や川のせせらぎなどの自然音が良いです。あと、音量は聞こえるか聞こえないかくらいにしてください。BGMはあくまで添え物で、施術の邪魔をしないのが大切です。『これはあゆの曲だな』ってわかっちゃう時点でだめなんです。音楽が流れてるかな、流れてないかな?くらいのラインで流してください」
「はいわかりました」
「パーソナライズしたBGMを流すより老若男女誰が聴いても心地よい癒し系の曲をかけたほうがいいと思います」

先生は静かなジャズっぽい曲をかけ直し、戻ってきました。

「他にも何か気になることはありますか」
「先生、体を起こしたり腕を動かしたするときに『はいそうです、良くできました』『そうですそうです、すごいですねー』って言いますよね。あれやめてください。私は幼稚園児ではありません。幼稚園児にするような、よしよし系の声掛けはやめてください。一人の尊厳ある大人として扱ってください」
「それはすいませんでした」

こうやって指摘したことを先生は素直に受けとっていきます。私の険もずいぶんと治まってきました。

しかし、ここでゆるめるわけにはいきません。
単純にイラつくから言っているわけではないのです。感情をぶつけたくてやってるわけではなく、相手と距離を置くためにこれだけ派手にブチ切れているのです。

回数券消化ももう後半戦。
冷静に考えて、通院を延長(回数券を追加購入)させグッズを買わせセミナーに通わせるために、ここから向こうは怒涛の攻勢を仕掛けてくるはずです。

そんなの面倒くさくてかなわないので、「イタイ客」「面倒くさい客」「クレーム客」のイメージをせっせと醸造しておく必要があります。重箱の隅まで、つつけるところまでつつき倒す。相手の欠点を見つけたらすかさずえぐる。

普段の社会生活だったらやってはならないことだらけ、180度違う塩対応のオンパレードです。

「私先生からグッズは買わないですよ」
「そうですか」
「なぜなら先生はセールスが下手だからです。私はセールスのテクニックに優れた人を尊敬します。そんな人たちから比べると先生のテクニックはあまりにもお粗末です。例えば枕。私が枕に興味を示した時に先生はマットと一緒に使わなければ意味がないと斬り捨てましたね?あれがだめ。まずは興味を向けた枕を買わせるんです。枕ならマットより安いし買うのに抵抗も少ない。枕を買ってから『枕良いでしょう!マットと使うともーっといいんですよ!』とアピールすれば、本当に枕が良いと感じている客はマットも欲しくなります。はじめは高くて躊躇していても、ここまで良いならと心惹かれるようになります。そこを先生は『枕とマットはセットで使わないと意味がない』と切り捨てた。だからだめなんです。そんなセールスの技術が低い人から私は物は買いません」
「なるほど……」
「すぐは売れないすぐは売れないって言ってますけど、そんなの怠慢ですよ。ここはお金持ってる人も多い土地柄なんですから、本気で売ろうとしたら70万のセットだって売れますよ。そもそも時間をかけて売ろうとしていること自体が間違ってる。いいですか、ここは転勤族の多い土地柄ですよ?そんな人相手にゆっくり売ろうなんて思ってたら、気がついたら異動で北海道や関西に飛んでたりするんです。いなくなっちゃうんです。戦略が間違っていたら物は売れません。だからすぐは売れないは間違いです。すぐ売れないのではなく、シンプルに売れません」
「ふーむ……」

これだけ吐き出したら、もうすっきりしてとげとげした言葉も出てこなくなるだろう。私は施術中にそう思いました。しかし、甘かった。
施術後、先生は「健康美」を提示してきたのです。

また全健会の印象の薄い動画を見させられて、そのあとに先生は言ったのです。
「なめこさん。なめこさんもカイロを始めれば僕らのような健康美が手にはいりますよ!」と。

……………
エッ……………
健康、美……………?

私はまた宇宙に放たれた気分になりました。自分の理解を軽く超えることを突きつけられると、人は宇宙猫の気分になるのでしょう。そう、私は理解できませんでした。僕らのような健康美というものを。

正直、先生の肌は汚いです。50代だったら年相応かもしれません。男性は女性よりももともと肌のきめが粗いので、そこまできれいじゃなくても普通だと言われればそうです。

しかし、私はヴィジュアル系バンドをずっと推してきた身。
V系の男性がどれほどの努力をして美を保っているのかを身に染みて知っています。そして、男性であっても美に忠実であれば驚くほどに美しくなれることも知っています。

「僕らのような健康美が手にはいります」
確かに、先生の基準では先生は美しいのでしょう。健康美なのでしょう。
しかし、私の基準からすると先生は明らかに美しくありません。

私は、美しい男が好きです。
美しい男を何人も眺め、愛してきました。
だからこそ、ここはゆずれない。

先生、あなたは美しくありません。

美に対して意識の高い方って、年齢に関係なくお綺麗なんですよ。身ぎれいになさっていて小ぎれいな格好をなさって、そんな人生の先輩たちを見ると大変素敵だなあって思います! 私もそんなふうに年を重ねられたらなと憧れます。結城アンナさんのように年を重ねたいです。

一方で、先生は明らかに美に対して意識低いのです。
頬のでかいシミを平気でさらしてシワは深い。肌つやが無くてカサカサ。本気で美に取り組もうと思ってるなら美容皮膚科にいって相談くらいしてほしいです。今時シミなんて簡単に取れるし乾燥肌だって改善できます。

それが単なるカイロプラクターなら全然OKなんですよ。シミあってもシワ深くても施術が上手ければOK。でしょう?

でも、健康美をうたって70万円の健康グッズを買わせようとして40万円のセミナーに「自分たちみたいな健康美になれる」という名目で誘おうとするならば、言わせてもらいます。

あなたは、美しく、ないです!!!!
私、あなたみたいには、なりたくない!!!

一生懸命相手の欠点を指摘しまくり、もうこれで行けるだろうと思ったらそれを上回るハイパンチ。
すごいわ、全健会。人材豊富すぎです。

でも、施術もあと3回!
あと3回で解放される!
がんばれ私!!


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