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Cocktails

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カクテル小説
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Cocktail: スクリュードライバー

神保町は本の町。その片隅の裏路地で、私はBARを営んでいる。あえて読書BARとは謳っていないが、この町の裏路地の店にやってくる客は、たいてい本が読める落ち着いた空間を求めていた。

今夜も常連の客が、カウンター席に一人とテーブル席に一人。それぞれいつもの酒を飲みながら、本の世界に没頭している。そして若い女の客が一人、テーブル席で文庫本をめくっていた。

『カランカラン』
カウベルが小気味良い音を立

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Cocktail: ハネムーン

Cocktail: ハネムーン

「いらっしゃいませ。あ、こんばんは。奥の席取ってありますのでどうぞ」
仲良しのマスターが笑顔で二人を迎えてくれる。私は彼に腕を絡めたままバーカウンターの横を通り抜け、奥の二人席に座る。
「一年記念日おめでとうございます。まずはいつものでよろしいですか?」
マスターの問いかけに
「ありがとう、俺はいつもので」
と答え、彼がこちらを見る。
「私もいつものでお願いします」
「かしこまりました」
そう言う

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Cocktail: ベルベットハンマー

Cocktail: ベルベットハンマー

『今宵もあなたを想う』
その言葉を見て、私はSNSをスクロールする指を止めた。彼はいま何をしているだろうか。会いたいな、と言いそうになって声を飲み込む。

2ヶ月前、付き合って5年になる彼が仕事の都合でヨーロッパに行ってしまった。早ければ3ヶ月で帰ってくると言われたが、まだいつ帰国できるかは分からないらしい。毎日数回のメッセージと、週末は時差を計算してビデオ通話もしている。それでも、会いたい気持ち

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Cocktail: ダイキリ

Cocktail: ダイキリ

午後八時。バイトからアパートに帰った私は、疲れ切っていた。途中のコンビニで買った弁当を電子レンジで温めるが、食欲がない。二口つまんで食べるのを諦めた。

薄暗いワンルームで独り、冷めていく弁当を眺めながら思う。もうダメかもしれない。何がダメなのかは分からない。でも、もうダメかもしれない、という考えばかりが頭を巡る。最近夜は毎日こうだ。

部屋にじっと座っているのが居たたまれなくなって、勢いで靴をは

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Cocktail: シャディ・グローブ

Cocktail: シャディ・グローブ

ふぅ。小説の第一章を読み切った私は、文庫本を閉じて息をついた。休日の午後、窓から差し込む明るい日差しが少し傾いてくる時間。私はリビングのソファに寝転がっていた。ぱらっ。頭の上の方で、ページをめくる音がする。ソファの端に深く腰掛けた彼が、膝の上に広げたハードカバーの本を読み耽っている。

彼は眉間に軽くしわを寄せ、大きな手を口元にあてて、小説の世界に集中していた。文字を追って、二つの瞳が左右に動く。

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Cocktail: マイアミ

Cocktail: マイアミ

「あちらのお客様からです」
私はスマホの画面から顔を上げた。目の前に、半透明のベールのようなお酒が注がれた華奢なカクテルグラスが差し出されている。さらに顔を上げると、バーテンダーが誰かを指し示していた。その手の先に目線を移すと、黒いスキニーパンツにお洒落な柄のシャツを着て、髪にふわりとパーマをかけたイケメンが座っている。………あれ?

「先輩、おひさしぶりです」
イケメンが言った。その声と、優しそ

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Cocktail: ナップ・フラッペ

Cocktail: ナップ・フラッペ

フォンダンショコラが口の中で溶けていくのを味わう。完全になくなってしまってから、ホットワインを一口飲む。チョコと赤ワインの相性はどうしてこんなにも良いのだろうか。

港町の繁華街。雑居ビルの四階にあるスイーツバーに、私は一人でいた。メッセージアプリのトーク画面には、私の
『先に入って待ってるね』
というメッセージと、一緒に来るはずだった友達の
『ごめん!どうしても行けなくなった…』
という返信。

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Cocktail: フレンチ・コネクション

Cocktail: フレンチ・コネクション

「ヌナ知ってますか?牡蠣100グラムには、リポビタンD一本分と同じ1000ミリグラムのタウリンが含まれてるんですよ!タウリンって身体に良いって聞いたんですが、牡蠣フライの追加頼むべきですかね?」
向かいの席に座った部下が、口いっぱいに牡蠣フライを頬張りながら言う。韓国人の彼は、教育係でペアになってしばらく経った頃から、私のことを“ヌナ”と呼び始めた。彼の説明によると、韓国語で年上女性に対する呼び名

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