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【サロン連載小説】Jewel of love.SS『天然さくら色』〜Chapter2〜


本編『Jewel of love.』 Chapter 1は、こちら

1話〜6話まで無料で配信しています。この機にぜひ、お試し読みを。


では、唯ちゃん視点のSS『天然さくら色』、前回の続きを更新します。


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「そのぅ……、なんでアイツが怒ったんだか、いまいち」 


アリスさんは、恥ずかしげにモゴモゴとそう言って俯いた。


バツが悪そうに伏せられた睫毛にかかる金髪がえらい雰囲気あるなあって、あたしは妙なとこで感心。


なんなん、ハーフなん? この人。


めっちゃきれいやん。


絵のなかの人みたいやんなぁ〜?


ほやけどせんせぇは、そういうのにちっとも惑わされんようやった。


「ご自分の彼女がなんで怒ったか、わかんないんですか?」

「まぁ、うん……」

「ほんとーに、わかんないんですか?」


せんせぇはやけに低ぅい声で、アリスさんを追求しはる。


アリスさんは、ますますモジモジと俯いた。


「いや、なんか、わかんないでもないんだけど……」


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凛々子さんからの電話やと思ったら、 彼女のケータイをつかってかけてきてたのは、アリスさんって人やった。


内容は、せっぱ詰まった声のSOS。


昨日の夜、喧嘩して、アイツ部屋を飛び出したっきり帰ってこない。


せんせぇは「ゴメン、映画は今度」と言って、凛々子さんのマンションに駆けつけた。


あたしはわけもわからんと、走ってついていった。


久しぶりにお邪魔した凛々子さんのマンションにいた金髪の彼女を見て、あたしはやっと状況がのみこめた。


この人、イブに凛々子さんちのポストの前で突っ立ってた人やんなぁ?


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ほーか。


あれからやっぱ凛々子さんとこの人、ヨリを戻してはったんやな……。


真夜中に、ケータイも持たずに外に飛び出しという凛々子さん。


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アリスさんは勝手のわからない東京で探しに出ることもできなくて、じりじりしながら一晩中、凛々子さんの帰りを待ってたらしい。


目の下には、憔悴しきったクマがくっきり。


「春休みなんで遊びに来てて。でも、今夜もう帰んないといけなくて」


弱り切って、とうとうせんせぇに電話したのだという。


アイツの居場所、わかりませんか? なんて、どうにもバツが悪そう。


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「なんでたまに会ってるのに喧嘩になっちゃうんですか?」

「……いや、寂しーなぁ、つまんねーって、言っただけなんですけど」


 ただそれだけなんだけど、なんかアイツ、いきなりすっげぇ怒り出して。

 ブワー泣き出して、もう手がつけらんなくて。


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ぼそぼそと呟くアリスさんに、せんせぇはわざとらしく、ハァッとため息をついた。


「アリスさん、それ何回も言ったんでしょう?」

「……まぁ、言ったかもしんないです」

「アリスさん、彼女だって寂しいんですよ?」

「………………………………」

「責められた気がしたんですよ、たぶん」


そんなつもりじゃなかったんだけど。

なんて拗ねたように尖らせた、つやつやの薄桃色の唇。


すらりとした長身を縮めるように首をすくめた姿が、この人、妙にかわいらしい感じやんなぁ?


母性本能くすぐるってゆーか、ほっとけん感じってゆーか。


凛々子さんも、これにやられたんかなあ?


「とにかく心当たりを探してみます。アリスさんはここにいてください」

「え? あ、はい……」

「もし彼女が帰ってきたら、あたしの携帯に連絡ください」


わー、かっこええわー。


てきぱきと動き始めるせんせぇに、あたしは思わずポーッてなる。


と、せんせぇが、くるっとあたしを振り返った。


「唯ちゃん、どうする?」

「へ?」

「一緒に来る? それとも、ここで待ってる?」


なに言ってはるんやろ、せんせぇ。


一緒に行くに決まってますわ、そんなの。


あわてて立ち上がったあたしにせんせぇは微妙に満足げに微笑った、気がした。


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◇ ◇ ◇ ◇ ◇


続きは、こちらです。

『Jewel of love.』作 南部くまこ/絵 いばらき Since 2017/5/26
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