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新規事業開発で、金脈がないところを掘り下げてしまう3つの罠

新規事業についてアイデア段階(企画のみ, POCでプロダクトマーケットフィットまで行っていない)で、大企業のご担当者を中心にメンタリングする機会を多くいただきます。

優秀な方々にも関わらず(というより、大企業で優秀だからこそ)、構造的、知識的、心理的な罠にはまり易く、機会損失が発生していることがあります。

新規事業というと、挑戦的でポジティブなことを書きたくなりますが、実態としては撤退が8割の世界。早めに軌道修正をして新しい挑戦をすることも、生産性アップに重要と感じるので、あえてまとめました。

成功確率が低そうだがアイデアを手放せない人が多い

ご自身も悩んでいるし、いろんな人に話しを聞いたり実験してみたり、非常に行動レベルでは頑張っているのだけど、なかなか進捗せず苦心している。

そんな様子をみてメンタリングする方も勇気を持って、そもそもTAMが小さいから考え直してみてはどうか?本当に実現したい未来はなにか?他の方法はないのかな?など問い、一緒に考えてみたところで、数週間たっても同じアイデアの周りをウロウロしている。。。と、いうことは良くあります。

松下幸之助さんも「成功とは成功するまでやり続けること」と仰ってますし、いいなと思う経営者の方は非常に執念深いです。一方、諦めない気持ちという美徳が先行して、柔軟性の低い近視眼的な思考におちいると逆に成功確率を下げることもあります。

何故、こうしたことが頻発してしまうのでしょうか?

新規事業開発の思考手順

皆さんは新規事業開発についてどんな思考をし実行されてますでしょうか。
一般的には、以下の様なステップかと思います。

人によって得意なスタイルは様々で、マーケットが存在する事業モデル(2、3が確認されている)において、新しい手法や資本力など戦略によって勝つことに長けた人もいますし、よりイノベーティブなアイデアを追求する場合は、デザイン思考的に2から入り、そこで得た気づきが自らのビジョン開発に繋がって、3、4と思考していく人もいます。(デザイン思考は2、3までやることを想定した手法ではあるのですが、アイデアの発案に注目が集まりすぎていると感じます)

必ずしもこの流れで進むわけではないですが、共通言語としてまずは定義しておきます。

①構造的な罠:POC段階にプロダクトマーケットフィット探索に、多くの時間を使いすぎてしまう

プロダクトマーケットフィットを探索する段階の変数は無限に存在します。

考案した事業コンセプトが市場に適応でき十分な事業へと成長させられるのかを、経験とセンスで選びとれるといいですが(経験のある人は成功のセオリーがあり、自分の得意な部分を入れ込むことで、変数を減らしているともいえます)、経験の少ない方は無数の選択肢に試行錯誤することになります。

この結果、事業コンセプトを手放す判断を自らに迫ることもなく時間を浪費してしまいます。

②知識的な罠:早く手放した方がいい事業コンセプトやアイデアを見極められない

では、どんな事業アイデアは手放した方がいいでしょうか?

・市場が小さい(ボランティアなら良い)
・4P(Product, Price, Place, Promotion)が成立しない
・技術発展や市場環境が追いついていない(早すぎる)
・ご本人の経営スキルと、事業の難易度がマッチしていない
・顧客のペインや強いニーズが存在しない(あったらいい程度)、等

一人でも顧客が存在することは非常に尊いことではあるのですが、やはり事業は結果的に投資対効果が重要になるので、提供するサービスやプロダクトが期待する規模で普及するのかどうかがキーになります。

月商2000-3000万円規模で停滞してしまう事業というのも、プロダクトの改善でないレベルで刷新する必要があり、全てを手放さないまでももっと大きな変化や流れを見逃していないか、大胆に俯瞰してみてみる事が重要ではないでしょうか。

手放す基準を自ら規定できておらず、惰性で進んでしまうことがあります。

③心理的な罠:事業コンセプトを手放しにくい心理

実は新規事業で、自分自身少し難しいと感じていても、手放せない理由はこの心理的な理由が一番大きいのではないかと思っています。

中途半端に進捗している
価格の議論は一切せずに、顧客ニーズを確かめるためにサービスを無償提供して、「あったらいい」程度のニーズを確認してPOCと言ってしまっているケースや、特定の顧客では支払いもあり活用されているがニーズがニッチで再現性が低いケース等。いずれかの係数で中途半端な進捗があるが故にアンバランスさを黙認して引き返せずにハマってしまうことがあります。

意思決定の数から心理負荷が大きい
手放すということは、捨てるという意思決定、探索で得た気づき無に帰すという意思決定、新しいコンセプト探索に改めて時間を使うという意思決定、関係各所に説明をして納得をしてもらう等、何重にも心理的な負荷がある。

執着心から手放せない
自分自身が閃いた瞬間の高揚感や、事業コンセプトレベルで面白いと他人から褒められたこと、自分自身でその選択が誤っていたことを認めたくないなど、執着心も湧いてきます。

仕事の役割になってしまっている
大企業であれば、その事業コンセプトで承認を得てしまっているので、そこのプロダクトマーケットフィットを探すことが自分の仕事だと、行動と思考範囲を無意識か意識かわからず定義してしまっているケースもあります。

そして上記をトータルして、投資してきた時間と費用とまわりの人間の顔を考えると、なかなか引き返すと言い出せなくなってしまいます。


サンクコストとして割り切り、経験を次の糧に

サンクコストと言う言葉があるように、投資回収が難しいと判断した時には、それらのコストを無視して(もちろん原因説明など関係者には誠心誠意行う責任はあると思います)、早期判断を行うことで損失をその段階までに納めるというのが、重要なのではと思います。

それに、かけたコスト=経験はなくなるわけではないので、早めにピボットして、未来どこかであの経験があったからと、connecting dotsのような形で活かせれば、それでいいのではないでしょうか。

諦めずにフォーカスするべきこと

事業コンセプトを手放せない理由ばかり書いてきましたが、決して挑戦を諦めて欲しいわけではありません。

様々な心理的な障壁を一度取り払って考えてみると意外とシンプルだと思うのですが、プロダクトマーケットフィットで試行錯誤するのではなく、事業コンセプトレベルでのスクラップ&ビルドを繰り返すことが重要だと個人的には思っています。

松下幸之助さんの言う「成功とは成功するまでやり続けること」というのも、決してアイデアを諦めないでということではなく、Visionさえ変わらなければ当初考えた方法と違うかもしれないが、その未来は実現できるのではと言っているのです。

人間は集中してその方面の知識や経験を積んでいくと、知恵やアイデアの幅が広がっていきます。サービスブラッシュアップレベルでの試行錯誤も重要ですが、もっと社会を素直な目でみて事業コンセプトレベルでも、その知恵やアイデア、閃きを活用することで、より成功確率の高い事業コンセプトに辿りつけるのではないかと思います。

最後に、メンターからのアドバイスを鵜呑みにしせず、自ら選びとるセンスを磨くこと。

世の中にはいろんなメンターが存在します。特に大企業で新規事業をやっている方のまわりには、決めた事業コンセプトの中でアドバイスする人が多いと思います。

理由は様々で、相談者に目線を合わせてしまっている(そもそも相談が戦略レベルの話し)、精度をあげるべく様々な変数を優先順位つけずに指摘をしている(最後は重箱の角をつつく感じになる)、挑戦者に対して敬意を示すという姿勢のため心地よい対話に終始してしまう、等。

そもそも事業コンセプトが成功するのか、規模があるか、確率が高められるかに集中して議論をすべきです。そこの仮説が整ってからPOCで確認していくことでより動きはクリアになります。

相談を受ける側は、メンターの得意不得意を把握し、どのレイヤーのどこにアドバイスが欲しいか明確にすることもそうですし、もらったアドバイスに対しても意識的に情報を取捨選択をして、自分自身の事業に活かしていくことが重要です。

多くの人が挑戦し、これからの世界に必要な事業がもっと生まれてくることを願いつつ。

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