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マイノリティとかマジョリティとか、善と偽善とか、虚構と現実について、モヤモヤ考える映画2本

映画を観る習慣のない私が、ここ数ヶ月、ミニシアターの楽しさにはまっています。年末にパーティで出会った、アーティストであり映画評論家のヴィヴィアン佐藤さんの影響。

自作のヘッドドレスを纏うヴィヴィアン佐藤さん

この夜は『 K2』(下北沢)にて。ヴィヴィアンさんが上映後トークに参加する下記2本を観てきました。

🎦『愛について語るときにイケダの語ること』(2020年)
 監督・出演:池田英彦さん
 撮影・プロデュース:真野勝成さん
 構成・編集:佐々木誠さん

🎦『マイノリティとセックスに関する、極私的恋愛映画』(2015年)
 監督:佐々木誠さん

映画通でもセックス通でもない私ですが、興味深かったので感想を。

『愛について語るときにイケダの語ること』

『愛について〜』の初公開当時、私はニューヨークに住んでいました。それでも、日本で話題になっていたことは覚えています。

通称コビト症と言われる身長100cmの青年イケダ(池田英彦さん)が、末期ガンと診断される。イケダは、悔いなく死ぬために、自分のセックスを映像に残す…

というようなコンセプトを目にして、印象的だったし、「なんか、わかる」と感じて、記憶に残っていたのだと思います。

死を宣告された池田さんの2つの望み、
「死ぬ前にセックスして映像に残したい」
「デートというものを経験したい」
を叶えるべく、このプロジェクトを手伝ったのが、池田さんの20年来の友人であり、脚本家の真野勝成さん。

真野さんはカメラを回して、池田さんが亡くなるまでを記録。池田さんが亡くなった後に、佐々木監督に編集を依頼して、映画化が実現したようです。

佐々木監督に渡された映像は60時間以上。その半分は、池田さんが自撮りした風俗嬢たちとのハメ撮りだったそうですが、完成した映画は、私の感覚では、AV要素ナシ。 

映画の中心となるのは、イケダのデート相手に抜擢されたサトミさん(毛利悟巳)との擬似デート、および、イケダとカメラを回す真野さんの会話であり、とても穏やかなものでした。

演じられた擬似デートのはずが、途中でサトミさんの「問いかけ」に対して、イケダは本気で「返事」をしてしまう。
そこに、「(女性を)好きになることをセーブしてきた」というイケダの課題が見えて、「ふむ」となったり。
「池田さん、正直過ぎる。。ホントのデートだって半分は虚構だから、楽しめば良いのに」と思ったり。

映画は、どんどん痩せ細ってオムツになっても、カメラの前ではあえて、「男の自分」を示そうとするイケダの姿を写しながら終わりました。

途中で、私の目から涙が出たけれど、泣かすことを狙ったシーンがあったわけでも、どのセリフに泣かされたというわけでもなく。

佐々木監督/ヴィヴィアンさん/真野さん
ロラン・バルトの写真論とか、裏話とか


『マイノリティとセックスに関する、極私的恋愛映画』

こちらは、映像作家志望の学生「ワタシ」(若い佐々木監督=佐々木君)のカメラを通した世界。

ワタシ(佐々木君)と、一般的に”マイノリティ”と言われる障がい者たちとの対話の中で、観ている私たちは、性とか生について、考えさせられます。
タイトルから連想される生々しい映像や表現は、一切ありません。

ポスターがやたらカッコいい

途中、ワタシ(佐々木君)の、若者特有のズレた熱さや、薄っぺらい発言にイラッとした私。
そして、自分が作り手に騙されていることに気づいたのです。
(私自身、ライター業をしていて、インタビュー記事でさえ、一種のフィクション性を含むことは知っているくせに)

さらに映画を観ながら私は思い出しました。かつて一見「真っ当な男性」と、彼のセックスについて「それ異常だよね」「いや普通だ」と平行線の会話をしたことを。

普通とか異常とか。マイノリティとかマジョリティとか。愛とか同情とか。善と偽善とか。そして、フィクションとかドキュメンタリーとか、虚構とか現実とか。

これらの目に見えない境界線について、モヤモヤさせられて、もちろん答えがないまま映画は終わりました。

で、急にタイトルまでも気になって、
「そもそも、『極私的恋愛』ってなに?恋愛なんてすべて私的だし!」
という、全体的にモヤモヤな感じが、残された余韻です。でもこの感じ、キライじゃない。

時代も地理的距離もあちこちに飛びながら、
話が深まる映画論

2本の映画は無関係であり、深い関係がある

以上2本の映画は、本来はまったく別物です。

『マイノリティとセックスに関する、極私的恋愛映画』が先に公開されていて、真野さんと生前の池田さんは、ただ観客として観に行ったそうです。

その際、二人は佐々木監督に挨拶はしたそうですが、数年後に、池田さんの映像の編集を依頼することになるとは思ってもいなかったそうです。

2本の映画の上映後、私は真野さんに聞いてみました。

私:「佐々木監督に会っていなければ、または編集を断られたら。池田さんから託された映像をどうするつもりでした?」

真野さん:「いやー、どうしてたんでしょうね。誰かほかの人にお願いしていたのか、、。そのときは、全然違う作品になっていたでしょうね」

私:「佐々木監督から上がってきたものを観て、『こう仕上がったか!』みたいな驚きがありましたか?」

真野さん:「それが、あまりにもイメージ通りで驚きました。そして、その映像を観て初めて、佐々木さんが扱うテーマと、僕たちが持っていたテーマは、同じなんだと気がついたんです」

やはり、この2本はセットで観て正解でした。

今後の公開予定

5月12日まで、下北沢k2にて公開。
連日、上映後に豪華ゲストを迎えてトークイベントも開催!(ゲストは日程により変わります)
詳細の確認、チケット購入は下記リンクより♡

🎦「愛について語るときにイケダの語ること」
https://k2-cinema.com/event/title/56

🎦「マイノリティとセックスに関する、極私的恋愛映画」
https://k2-cinema.com/event/title/57

以上です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
※本記事は、佐々木監督およびヴィヴィアン佐藤さんより公開許可をいただいています。

追伸:こちらは、友人たちからの「”18歳向け”に期待したのになんやねん」というクレームを受けて、指定解除を申請中です。
本記事は大丈夫でありますように🙂


最後までお読みいただき、ありがとうございます✨💕