東日本大震災は想定外なのか

私は高校、大学と地震学を専攻していました。
自己紹介でこのことを言うと人々は必ずこう言ってきます。

「地震予知はできるの?」「南海トラフ地震はいつ来るの?」

いつも聞かれているのでうんざりしていますが、ちゃんと答えるようにしています。

「地震がいつ起こるかはわからないが、備えだけはしてください。」

地震予知って何

地震はいつ・どこで・どれぐらいの大きさで起こるかは今の科学では不可能であると言われています。
人々が地震予知これほどまでに無意識にもとめているのは、自分自身の危険を減らしておきたいからです。
おそらく、人々が地震予知を”簡単”と考えるのには「天気予報」というものが存在しているからだと思います。
日頃、朝から晩までニュース番組をすると必ず天気予報が放送され、今日の天気のみならず1週間後の天気まで教えてくれます。
そういったことが地震でもできるのではないか?と人々に錯覚させているのではないでしょうか。

天気予報は「いつ・どこで・どんな天気になるか(晴や雨)」を予測し発表するものです。
一方で、(気象庁の)地震予知の定義は「いつ・どこで・どんな大きさ」の地震が起こることを予測できることとされています。

これだけを比べると確かに同じ3つの要素を決定すればよく、実際に日頃から天気予報もできているのだから地震予知も簡単にできそうと思うのも仕方がない。

しかし、両者には決定的な違いがある。
気象の場合はある程度の物理方程式を観測された初期値を入れることにより、精度よく予測できるために天気予報などが発表できるが、地震の場合は発生するまではどのように破壊されるかは予測できず、破壊が始まる(地震が起こる)とそこからは物理方程式を用いることでどれぐらい揺れるかを予測することができる。(これが緊急地震速報の仕組み)
ここで重要なのは、初期パラメータが存在するかどうかである。

ここで皆さんに一つ想像してみてほしい。
山のように積まれた砂山の上に新たな砂を落としたい。
その時にどういった動きをすると思いますか。
砂山の頂上にとどまるか、砂山から転がるか、あるは全体が崩れ落ちるか。

これは「砂山モデル」と言われ、予測し得ないことが小さな現象からおこりうることを説明するモデルとしてとても有名です。

東日本大震災は想定外だったのか

東日本大震災(平成23年東北地方太平洋沖地震)は予想外と言われています。
果たして本当に予想外だったのでしょうか?
確かに、これまで地球上ではおそらくM9以上の地震は発生していましたが、観測されていなかったり、発生しても人の多く住む場所での被害が少なく、認識されていない可能性があります。
それが、今回日本の東北地方や関東などの人の多い場所での被害が多く、まさかこんなにも被害の出る地震が発生するとは考えていなかったことが、「予想外」と言われる所以ではないでしょうか。

しかし、実際に地震学ではM9クラスの地震が発生する可能性が、示唆されていました。

「G-R法則」(グーテンベルク・リヒター則)と言われる理論が地震の発生を示唆しています。
これは地震の発生回数と地震の規模の関係で、地震の規模(M)が大きくなると地震の発生回数は減っていきます。
ですが、地震の規模が大きくなっても0になることはありません。
この0になるかならないかを0として扱ってしまったために、この東日本大震災のような大きな地震を「想定外」と言われてしまうことになったのです。

これからの私達が考えないといけないこと

日本で暮らす以上、地震は避けて通ることのできないものです。その心配を逆手にとって、地震予知を商売にしている人や、必要以上に心配を煽る人たちがいますが、現在の科学で地震予知はほぼ不可能と言っても過言ではありません。
そうした状況で我々がしなければならないことは
1)地震に対する知識をしっかりと持つ
2)日頃から地震への備えを考えておく
この2点を意識して生活することが大切だと思います。

最後に、東日本大震災から10年経ちましたが、これは別に区切りでもなく、被害にあわれた人たちにとっては一生忘れられないことです。
我々はその被害にあう人々を一人でも少なくできることが望みであり使命だと思います。
このnoteが少しでも人々に届くことを切に願っています。

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