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ロースクールの司法試験合格率ランキングと変遷

今回は各ロースクールの司法試験合格率のランキングと推移を整理していきます。

参照する使用は、文部科学省が公開した法科大学院等特別委員会(第95回) 配布資料(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/041/siryo/1421098_00001.htm)です。

便宜上、関東・関西圏のうち上位ローと呼ばれるロースクールを整理していきます。具体的には、東大・京大・一橋・阪大・神戸・慶應・早稲田・中央についてみていきます。

1 全体の司法試験合格率ランキングと推移

(1)H29~R1のランキング

合格率全体

合格率トップ層としてよく挙げられるのが、一橋・京大・東大・慶應の「4強」です。それに続く形で、大阪・神戸・早稲田が続きます。中央は近年他校に大きく後れを取っている印象です。

(2)H18~R1の変遷

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全体の傾向として、新司法試験が開始されてから数年で合格率は大きく低下しましたが、その後水平推移し、近年は若干上昇傾向にあるようです。合格者数の定員が変わらない中で受験者数が減少傾向にあることが原因でしょう。合格者数削減が予想されていますから、今後も合格率が伸び続けることはあまり考えにくいと思います。

先ほど一橋・京大・東大に慶應を加えて「4強」としましたが、上記グラフからわかるように、H26年あたりを境に慶應は他の3校に後れを取っている印象があります。この傾向は既修・未修別で見るとより顕著になります。

2 既修者の司法試験合格率ランキングと推移

(1)H29~R1のランキング

合格率既修

既修者合格率に限ってみれば、東大・一橋・京大が頭一つ抜けており、「4強」の中では慶応は出遅れている感があります。

既修者合格率の変遷を見てみましょう。

(2)H18~R1の変遷

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既修者合格率を俯瞰してみると、①新司法試験開始当初からずっと強い層(一橋・京大・東大)、②大なり小なり合格率を落としている層(慶應・早稲田・大阪・神戸・中央)の二極化が進んでいるようです。

詳細を見ていくと、既修者合格率では一橋・京大・東大が「3強」となっています。慶應はH30年で大きく合格率を落としました。R1年で回復したものの、その間にも合格率を伸ばした3強に大きな差を付けられている状況です。

ここ数年では、慶応に加えて早稲田・大阪・神戸が3強に続く後続群となっています。ただ神戸は、各ローが合格率を伸ばしたR1に唯一成績を落としており、年による変化が激しい点が見受けられます。

また中央もH29年頃から他校に大きく後れを取り続けています。

3 未修者の司法試験合格率ランキングと推移

(1)H27~R1のランキング

合格率未修

いずれのローも近年は合格率が似たような数字に集中しており、既修者合格率のような差は見受けられません。唯一中大ローが若干遅れを取っている程度です。

むしろ、未修者合格率全体の低さが目に留まります。既修者合格率が上位ローでは45~75%で推移していたのに対し、未修者合格率では15~35%で推移しています。

2)H18~R1の変遷

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未修者合格率の推移をみると、H29年以降ほとんどのローで合格率が集中しています。

このなかでも近年高水準にいるのが、一橋と大阪でしょうか。ただ既修者合格率で見られたような有意な差は見受けられません。

他方、中央は未修者合格率の点でも唯一他の上位ローに後れを取っています。

4 既修と未修の対比

既修者合格率と未修者合格率とを並べて対比してみます。

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想像以上に合格率の差は顕著で、未修者では上位ローにおいても30%の合格率に留まっています。

普段、ニュースサイトなどでは既修未修合わせた全体の合格率が紹介されていますが、その陰にはこのような大きな差が隠れてしまっています。

また、未修者はロー全体の標準修業年限以内の終了率(=ストレート率)が50%程度しかありませんので、これを加味すると相当厳しい数字だと言えます(既修者ストレート率は80%程度)。

5 その他

前回のnoteには、既修・未修別の上位ローの留年率・ストレート率・退学率についても資料整理していますので、そちらもご参照ください
・留年率から見る上位ロースクール
https://note.com/namayoukan/n/n8fa0553c3618)。

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