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【小説】巨大なヒルの妖怪

江戸時代末期、それはそれは巨大なヒルの妖怪が江戸を襲っていた。その大きさ、太さはまるで大木のようであった。そのことから、人々はキノヒル(木のヒル)と呼んでいた。

このヒル、人間の血は吸わないものの、酒蔵を見つけてはその中の酒を飲み尽くしてしまう。

町の侍らは、刀をひるがえし、ヒルを真っ二つにした。しかしこのヒル、真っ二つされてもくたばらず、それぞれが動き出した。それに一瞬ひるんだ侍たちだったが、次々と斬りかかる。

その結果、ヒルはどんどん増え、六匹のヒルになってしまった。これには手が負えないと、侍らは逃げ帰った。

それに怒ったのは、昼から酒ばかり飲んで働きもしない怠け者の一兵衛という男。酒蔵の酒を飲み尽くしてしまうヒルに激怒した。急いで道具を持って、ヒルの元へ向かった。

一方その頃、六匹のヒルは、集団で行動しており、頭も六つあるものだから、ますます酒を飲むスピードは早くなっていた。

「やいヒルども!そんなに酒が飲みてぇんなら、これでも飲みやがれ!」

一兵衛は、酒がたっぷり入った桶をヒルの目の前に置き、その場をすぐに離れる。

我先にと桶に頭を突っ込もうとするヒルら。すると、酒まみれの六匹のヒルはみるみるうちに絡まっていく。

「かかったな馬鹿!それにはガソリンもたっぷり入ってるんでい!」

そう言い一兵衛は、身動きの取れないヒルらに向かって、右手を掲げる。

実は炎魔法が使えた一兵衛。右手から火球がヒルめがけて飛んでいく。

酒とガソリンまみれの六匹のヒルは、あっという間に火に包まれた。


後に、酒屋を開いた一兵衛。あのヒルを退治した有名人のお店ということもあり、大盛況。

『六本キノヒル』という名前のその店は、後に『六本木ヒルズ』と言われるようになったという。

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