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予算がなければPRはできない?~知事、紅白歌合戦に出ましょう~

中越地震の発生、風評被害に苦しむ観光業界


泉田知事が就任して早々に中越地震が発生。

山古志の道路が崩れ、陸の孤島化や土砂崩れの映像がテレビに毎日のように流れたことによって、新潟県全体が危険な状態だと映り、風評被害によって新潟市を含む下越、上越、佐渡市などの観光業界は大打撃を受けた。

観光復興戦略会議の開催

そこで急遽、新潟県観光復興戦略会議を立ち上げ、観光業界の関係者約100名が集まった。

たまたまNAMARAも新潟県観光協会に入っていたことや観光に関わる仕事もしていたので招集がかかった。

見渡せば旅館業界、旅行代理店、佐渡汽船、JR、ホテル関係者など皆ピリピリしている。

それもそのはず、地震の影響が全くない地域も報道による印象で予約のキャンセルが相次いだからだ。

泉田知事と篠田市長が入って来る前から、みんな死活問題だから、あちこちで文句が聞こえる。

「そもそも新潟県はPRがヘタなんだ…だからこういうことが起きるんだ…」


新潟のPRはヘタなのか?

ざわつく中、知事と市長が入ってきた。
司会者がまごつくと、泉田知事がスパッと突っ込みを入れた。これがまた一層緊張感が走った。

戦略会議がはじまり、最初に手をあげた男性が

「先ほど、新潟県はPRがヘタとか言っていた方がいらしたが、新潟県はけっしてPRがヘタなわけではないんです!」

さすが戦略会議に出席するだけあって、ひととは違う角度からものを言う人もいるんだなと思いながら次の言葉に期待した。


「新潟県はPRがヘタなんではなくて、PRに掛ける予算がないのが原因なんだ」

と声高に言っていたので拍子抜けした。


それからいろんな人が話していたが、PRがヘタだ、PRの金をどうするだとか、ひとつも戦略の話がないまま終了時間を迎えようとしていた。

残り二分となり、司会者は

「では最後にどなたか」

と意見を求めると、反射でさっと右手を挙げてしまった。このメンバーの中で一番最年少でペーペーの僕が最後を締めることに。


「えー、先ほどから観光PRがヘタだとか、予算がないとかもめていましたが、これを一発で解決する戦略があります。」


この一言で場内はどよめきと共に、疑問視する空気が流れた。僕は躊躇することなく続けた。なぜなら時間が二分しかないのだから。


知事!"紅白"に出ましょう!!

「まず、泉田知事と篠田市長!」

僕はふたりを人差し指で指しながらかなり大きな声で

「ふたりでデュエットで歌って、紅白歌合戦を目指しましょうー」



この後の三秒くらいの静けさは、かつて経験のない沈黙でした。

僕は慌てて

「新潟県を代表する泉田と政令都市代表の篠田、この”ふたつの田んぼ”でインパクトが足りないのであれば、バックコーラスに田中真紀子、菊田真紀子、吉田六左衛門の”みっつの田んぼ”も入れましょうー」


会場は怖いくらいの静けさが続く。一呼吸おいて、

「ふざけるな―――」

の怒涛の声が響く。ざわつく会場。


「昨日の新聞に新潟県は全国で一番離婚率が低いそうです。」

僕はいったい何を話し出したのでしょうか。きっと名誉挽回しようとしていたのです。

「つまり、新潟県は日本一夫婦円満県です。そこをPRしましょう」

もう何が何だかわからない状態です。

「田中真紀子と田中直紀のデュエットで『別れられないふたり』を歌ってもらいましょう・・・」

この後、どうなったかは想像にお任せします。


実はこれ、超戦略的な提案でした…

実は私、20代の頃に東京でレコードメーカーに勤めていました。
CDは数十円で作れます。
SMAPのCDの発売に合わせてCDを出す人はいません。
オリコンチャートにも谷間があって、ここぞというタイミングに「泉田篠田」の新潟をPRする曲のCDを商工会議所やJC、ライオンズ、ロータリークラブなど様々な団体に総力戦で買ってもらうのです。
SMAPのランクが落ちたあたりで、「泉田篠田」がオリコンチャートトップテン入りし、地震で応援効果もあってとうとうSMAPを抜いて堂々一位になると、マスコミが放っておきません。

朝のワイドショーのレポーターが

「SMAPを抜いて堂々の一位です。噂では紅白を目指しているとか…泉田知事、本当ですか?」

なんて質問され、

「いやいや紅白出場はまわりが言っているだけで、我々は少しでも風評被害が緩和され、観光客がふたたび新潟に訪れてくれるように願っています。もし可能なら被災地で紅白の中継だけでもやってもらって、新潟県の元気なところをお見せ出来たらうれしいです」

みたいなコメントをすれば、世論も動いて新潟県のPRをしてくれるかもしれない。
報道は無料だから。
新潟県のトップ自らが宣伝マンになればという話をしたかったのだけれども、時間もないし、まだこの時点では東国原知事も橋下知事も誕生していなかったから、首長が宣伝マンになるイメージがなかったので、みんなピンと来なかった…


PRに必要なのは「予算」ではなく「発想」だ

おかげでひどい目にあいましたが、新潟県が全国ニュースになるものを戦略的に打ち立てれば、お金をかけずにPRができるのです。

コロナ禍である今こそ、知恵と工夫で全国ニュースをつくるべきです。

ちなみにこの話はすべて実話で、議事録にも「紅白歌合戦」「別れられない二人」の文字などもちゃんと載っているようです。



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基本的にこのnoteでは新潟お笑い集団NAMARAの活動を通して、感じたことや、これからの取り組みなどを紹介していきます。

YouTubeでは、ナマラ江口としてのリアルな活動をお届けしておりますので、こちらも覗いていってみて下さい。


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