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甘美な同情

その生涯で苦しい体験をし
ことにある種の瞬間に
その悲哀を味わいつくした者は
そうしたときに全く思いがけなく
親身にも及ばない同情を示されるのが
どんなに甘美なものであるかを
よく心得ているものです

ドストエフスキー(書簡集)

同情するというのは難しい。確かにありがたいのだが、余計なお世話なときもある。翻して「甘美な同情を誘う人」もいる。

そんな誰にでも同情してもらえる話をして、慰めてもらえたら満足なわけ?

映画「正欲」

もうわかんないんだよね。「あ、何か声をかけたほうがいいのかな?」とか「声をかけないほうがいいのかな?」とか。

この人はどういう人だっけ?落ち込んでいるとき声をかけたほうがいい人だっけ?放っておいてほしい人だっけ?と考えるのは面倒くさい。でも、

苦しんでいるのに声をかけてくれなかった

とか思われるも嫌だし。ていうか、そんなことを考えた時点で100%外面を気にしているじゃねぇか!とゲロを吐きたくなる。余計な事するのもオレ、しないのもオレ。それでどう思われるのかはもう知らんから、直球しか投げられない。

そうやって、オレの目の前に色々な人が来て、色々な人が去っていく。もちろん自分から寄っていて、去っていくときもある。

去っていく人が惜しい、去っていくのも惜しい。来てもらうのはうれしいけれど、面倒だ。

一人が好きなくせに、一人が不安なのだ。

ぼくには誰もいません。
ここには誰もいないのです、不安のほかには。
不安とぼくは互いにしがみついて、
夜通し転げ回っているのです。

カフカ(ミレナへの手紙)

所要時間: 7分 (BGM: CHAINSAW BLOOD/Vaundy)
画像: 『メランコリア』(2011)


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