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『The Worst Ones』にみるコンプレックスと受容

「容姿を誰それにバカにされた!」とクドクドと根に持って怒り狂っている人をたまに見かけるんだけど、そんなことにエネルギーを消費してどうするんだろうと。最近は「ルッキズムがあーだーこーだー」と見てくれを評価することを是としない文化が根付き、それを肯定しながら、なぜそんな戯言に耳を傾けるんだろう。

それはきっと、指摘していることを本人気にしているからだろう。いわゆる図星というやつだ。

多くの人は自分の見てくれを気にしているし、人に言われたくない。翻って多くの人は見てくれをバカにすると安易な攻撃になることも知っているということだ。

「オッサンwww」、「変なメガネwww」、「髪www」

TikTokあたりのライブやどこかの掲示板やソーシャルメディアでよく見る煽り文句。これはその安易さを、至極低脳丸出しで利用しているのだ。

だが残念ながら、こうした外見に関する罵倒は「大抵当たっている」。だから腹が立つ人は腹が立つのだろう。

でもオレは腹が立たない。本当に変な髪型をしているメガネのオッサンなので、まちがってないんだもん。
不細工と言われたことがないのはツイていると思うが、顔面は人それぞれなので知らんし、目に入っていないだけかもしれん。

オレはデブだったせいもあり、さんざデブだのなんだのと罵られた結果、見てくれを馬鹿にされることを気にしない人間になった。たしかに、デブだし運動できないんだからしかたねえ。特に小中高生にとって容姿や体格が標準外であることは悲劇的な。だから、にコンプレックスはあったけど、どうしようもないから受容するしかないよね。

オレの場合は「痩せりゃいい」といったシンプルな解決法があったので、痩せて改善したけど、病気が起因した体格や顔面はどうしようもない。だから、自分の特性として付き合っていくしかないわけで。
オレにも「前歯が90度曲がっている」いかんともしがたい不具合がある。これ英語を話すときにメチャクチャ不便だし、見てくれもすきっ歯でキモい。直そうか?と思っても五十路前に歯の矯正も何もないので放置してますけど。これも受容していくしかないんだなと。

いろいろね、コンプレックスってのは大変ですよ。大変なんですけど、それをやいのやいの言ってくる連中なんて、どーせ程度が低い連中なんだから「あー、はいはい、うるせーバカ」で済ますのが吉なんですよ。騒げば喜ぶだけなんだから。

『The Worst Ones』(2022)は、ゲットーのような貧しい集合団地を舞台にしたドラマ。ADHDや学校ドロップアプト、養子などちょっと標準からズレた子供たちを役者にたて、映画制作を試みる内容。なんでちょっとズレた子供たちを縁者に添えたのか?それはルッキズム批判同様、「それは批判に値しない」を描きたいがため。もちろんそれは一筋縄では行かない。貧困ポルノと言わんばかりだからだ。

「あら、意識高い!」

と思われるかもしれないが、フランス映画なので振り切っている。未成年にしれっとベッドシーンを演じさせる監督。

「オレ、あいつと寝る場面を撮るんだ!あいつ、アソコ沿ってるといいなあ!バナナ喰う?バナナ!」

などどはしゃぐ男に冷たい女。(こいつらなんだかんだと仲が良い!)キレまくるADHDの男の子。一発撮りに緊張して腰が抜ける監督。基本的にコメディの体だ。

ただ、この映画の登場人物たちは誰もが自信が無く、それを隠すように自信ありげに生きている。色々と受け入れて生きるのは、たぶん幸せではないのだけど良い生き方なんだろうなあ。

所詮映画の中の出来事だって?いやいや『The Worst Ones』の主役たちは作中映画同様、素人なのだ。

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