セミナーで学んだことまとめ(RNAウイルスに対する自然免疫応答) 

以下の論文のジャーナルクラブで学んだことをchatGPT4oを駆使してまとめた。

https://www.cell.com/immunity/fulltext/S1074-7613(24)00077-3

INFによる抗ウイルス作用

 ウイルス感染において、感染細胞ではウイルスのRNAやDNAを認識するRIG-IやSTINGを介した自然免疫応答によりインターフェロンが誘導される。INFは、I, II,および III型の3種類が存在する。細胞外に分泌されたI, III型INFは、INF受容体の下流でJak-Stat経路を通したISG(IFN-stimulated genes)の転写誘導により、抗ウイルス作用を持つタンパク質が発現する。主なタンパク質の作用として2'-5'oligoadenylates (2-5A)によるRNaseLの活性化で細胞内のmRNAを無差別に分解することや、INF-inducible protein kinase(PKR)による真核生物翻訳開始因子2a(eIF-2a)の不活性化によるゲノム複製の停止が知られている。

 本論文の主役であるOASはISGのファミリーの1つで、ヒトにおいては4つ、マウスにおいては12の遺伝子が存在するヌクレオチドトランスフェラーゼ(NTase)である。

論文の要約

「オリゴアデニル酸合成酵素1が翻訳停止を促進しインターフェロン生成を保護する2つの抗ウイルスメカニズムを示す」というタイトルの論文(Harioudh et al.)は、インターフェロン誘導性抗ウイルスタンパク質OAS1のRNaseL非依存的な作用の他に、非依存的な抗ウイルスメカニズムを発見した。
主要な発見:

  1. 西ナイルウイルス(WNV)に対する非標準的メカニズム:この研究で注目すべき発見の一つは、OAS1がWNVに対して酵素非依存的なメカニズムを用いることです。マウスのOAS1bは、RNase L活性を欠いているため、WNVに対して対して抗ウイルス活性はないと考えられる。しかし、マウスOAS1bノックインマウスではWTと比較してWNV感染における生存率とウイルス排除が改善した。RNase L活性化に依存しないこの経路では、OAS1は特定のmRNAのAUリッチエレメント(ARE)に結合します。この結合により、mRNAの半減期が延長され、持続的な翻訳が可能になります。特にインターフェロン(IFN)mRNAに対するこの保護は、WNVの複製を抑制する上で極めて重要です。

  2. SARS-CoV-2に対する標準的メカニズム:WNVに対する戦略とは対照的に、OAS1はSARS-CoV-2に対して標準的なメカニズムを用います。この場合、OAS1の酵素活性が重要となり、RNase Lを活性化する2-5A分子を生成します。この活性化により、ウイルスおよび細胞のRNAが分解され、ウイルスの複製が効果的に抑制されます。OAS1のこの二重機能は、遭遇するウイルスに応じて抗ウイルス戦略を切り替える能力を強調しています。

  3. アイソフォーム特異的機能:この研究は、異なるアイソフォームのOAS1の重要性も強調しています。WNVに対するOAS1の抗ウイルス活性は、特定の遺伝子多型から生じるOAS1 P46アイソフォームに関連しています。このアイソフォームはエンドメンブレン領域に局在し、特定のmRNAに結合します。特に、SNP rs10774671はOAS1遺伝子のエクソン6のスプライス受容部位に位置し、GアレルとAアレルという二つの異なる形態があります。Gアレル: このアレルはOAS1遺伝子のバリアント1をコードし、P46(46 kDa)アイソフォームを生成します。このアイソフォームはCaaXモチーフを含み、エンドメンブレン局在に関与します。Aアレル: このアレルはOAS1遺伝子のバリアント2をコードし、P42(42 kDa)アイソフォームを生成します。このアイソフォームはC末端の54アミノ酸が欠失しており、エンドメンブレンへの局在能力が低下しています。WNVに対する抗ウイルス活性は、特定の遺伝子多型から生じるOAS1 P46アイソフォームに特有のものであり、このアイソフォームはエンドメンブレン領域に局在し、特定のmRNAに結合します。同様に、マウスのOas1bもこれらの特性を示し、酵素活性を欠いているにもかかわらずWNVに対する抵抗性を示します

  4. IFN mRNAへの影響:OAS1はIFN mRNAに結合し、分解から保護することでその安定性を高め、IFNの生成を促進します。この保護により、IFNARシグナル伝達を通じてWNV複製が抑制されます。

  5. エンドメンブレン局在:OAS1のC末端CaaXモチーフは、そのプレニル化とエンドメンブレン局在に必要であり、WNVに対する非標準的抗ウイルスメカニズムにおいて重要です。

    • プレニル化とは プレニル化は、タンパク質のポスト翻訳修飾の一種であり、タンパク質のC末端にプレニル基(ファルネシル基またはゲラニルゲラニル基)が付加される過程を指します。この修飾は、タンパク質の膜結合性や機能に重要な役割を果たします。具体的には、プレニル化はタンパク質を細胞膜やエンドメンブレン(細胞内小胞体やゴルジ体などの膜構造)に固定し、特定の細胞内位置での機能を可能にします。

    • CaaXモチーフとは CaaXモチーフは、タンパク質のC末端に位置する特定のアミノ酸配列を指します。「C」はシステイン、「aa」は疎水性アミノ酸、「X」は特定のアミノ酸を指します。このモチーフは、プレニル化のターゲットとなるシグナルであり、システイン残基にプレニル基が付加されます。その後、aaX残基がプロテアーゼによって切断され、最終的にカルボキシル基がメチル化されます。

    • OAS1のCaaXモチーフの役割 OAS1(オリゴアデニル酸合成酵素1)のC末端にはCaaXモチーフが存在し、このモチーフがプレニル化のターゲットとなります。この修飾により、OAS1はエンドメンブレンに局在します。エンドメンブレン局在は、OAS1の非標準的抗ウイルスメカニズムにおいて重要な役割を果たします。

    • エンドメンブレン局在の重要性 エンドメンブレン局在は、OAS1が特定のmRNA(例えばIFN mRNA)に結合する能力に直接関与しています。OAS1がエンドメンブレンに局在することで、これらのmRNAが分解から保護され、その半減期が延長されます。結果として、インターフェロンの生成が持続し、ウイルスの複製を効果的に抑制します。

主要なトピックの理解

オリゴアデニル酸合成酵素(OAS)ファミリー:

  • OASファミリーには、ウイルスの二重鎖RNAによって活性化されるとATPから短い2’-5’オリゴアデニル酸(2-5A)分子を合成する、インターフェロンによって誘導されるタンパク質が含まれます。これらの2-5A分子はRNase Lを活性化し、RNAを分解してウイルス複製を抑制します。


2', 5'-結合オリゴアデニル酸(2-5A)の構造

インターフェロン(IFN):

  • IFNはウイルス感染に対する自然免疫応答において重要な役割を果たすサイトカインです。IFNは多数のIFN-stimulated genes(ISGs)の発現を誘導し、ウイルス複製および拡散を抑制します。

AUリッチエレメント(ARE):

  • AREは炎症性サイトカインなど短期間のみ必要な遺伝子のmRNAの非翻訳領域(UTR)に存在する配列で、mRNAの安定性と翻訳を調節します。AREに結合するタンパク質は、mRNAの安定化または不安定化を引き起こし、遺伝子発現に影響を与えます。

RNase L:

  • RNase Lは2-5A分子によって活性化される酵素で、ウイルスおよび細胞のRNAを分解し、タンパク質合成を停止させてウイルス複製を抑制します



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