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文明崩壊世界ガイド(アウトサイド ヒーローズ)

1. 文明崩壊前史

「アウトサイド ヒーローズ」の世界では、かつて高度な文明、国際社会が形成されていました。

しかし環境破壊、国際紛争が続き、更に世界的な疫病の蔓延と、その特効薬による大規模な突然変異の発生により社会が混乱し、国際社会は分断されます。

待っていたのは全面戦争でした。

核兵器、化学兵器、ハイテク自動兵器……

更には大規模薬害を引き起こしたかつての特効薬が遺伝子汚染兵器に流用されて用いられ、世界中が悲惨な戦禍に巻き込まれました。

国々は一つ、一つと力を失っていき、ついに勝者のない戦争が終わった時には、"国家"と名乗れるものは無くなっていました。

この戦争は今、"最終戦争"と呼ばれています。もはや戦争をおこなうだけの力を持った者同士が並び立つ時代は、終わったのです。

2.文明崩壊の後、"国破れて、山河荒れ"

国家はなくなりましたが、かつての文明の技術は僅かに残っていました。生き延びた人々は、かつての大都市跡地に城壁で囲まれた都市を作り、暮らし始めました。

しかし戦争の爪痕は深く、また遺伝子汚染により凶暴な突然変異生物(=モンスター)が誕生、跋扈するようになりました。

人々は都市国家とその周囲の限られた土地に押し込められ、文明復興は停滞しました。

1世代、2世代と過ぎていき、かつての文明の生き証人たちがいなくなった頃、人々は再び生活圏を広げ始めました。

人々を苦しめた凶暴なモンスターたちも世代交代を始めたのです。

もちろん、モンスターが消えたわけではありませんでした。かつてのモンスターがライオンかトラか、というほどの危険性ならば、それが飢えた野犬になった、という程度でした。

しかしこのため、人々は少しずつ町の外、閉じ込められた領域の外に出ることが可能になりました。

都市の外に埋もれ、忘れられてきた旧文明の遺産を見つけ出すことで、人々は更に文明復興へと足を踏み出しました。

都市国家たちは互いに出会い、協力関係を築いていきました。

かつての文明には未だ程遠いですが、人々は少しずつ生活圏を広げておりました。

これが、物語が始まる頃の世の中です。

3.都市、人々の生存圏

文明崩壊後世界では、城壁を持った、ある種の都市国家に近い町が人々の生活圏の中心です。町は規模や機能によって、大きく3つに分けられます。

一つは"セントラル・サイト"。

これは地域の中心となる大規模な都市です。城壁によって安全圏となった「領土」を持ち、多くの人々が暮らしています。

例:オーサカ・セントラル・サイト、ナゴヤ・セントラル・サイト

二つ目は、セントラルというほど大規模ではないものの、地域の中心となる大きな都市。

多くは近くのセントラル・サイトを補佐する役目を持ち、特定の機能に特化しているため、〇〇・サイトと呼ばれています。

例:カガミハラ・フォート・サイト、オーツ・ポート・サイト

三つ目に、セントラル・サイトの周囲を取り巻くように存在する衛星都市、サテライト・コロニー。

大都市のベッド・タウンや、あるいは都市に付属した工業プラントとして機能します。

例:タカツキ・コロニー

物語の拠点となるナカツガワ・コロニーは、地理的に言えばカガミハラ・フォート・サイトのサテライト的な存在ですが、基本的に自給自足し、カガミハラとの交流も少ないので、やや特殊な立ち位置にあります。

4.文明崩壊世界の食糧事情

かつての大戦により世界中の土壌と水源が汚染されました。

長い年月をかけ、少しずつ環境は回復しつつありますが、未だに汚染の実態はわからないことが多いのが現状です。

"汚染された食物を食べるとミュータントになる"などとも噂されていますが不明です。

凶暴なミュータントの存在もあり、都市の外に農地を広げることは大変困難でした。

一方で旧文明は、便利な発明品を残していました。"分子再構成システム"によって食物を生産する"ミールジェネレータ"です。

腐ったもの、人間が消化できないもの、毒物……あらゆる物資を安全な食品に変化させるのです。

これにより人類は、文明崩壊の極限状態を生き抜くことができました。

しかし一方で、農業や食品生産の技術は失われているのが現状です。

今や野菜は貴重品であり、セントラル・サイトの高官であろうが、サテライト・コロニーの裏路地でその日暮らしをする労働者であろうが、土付きの野菜など夢のまた夢に見るような代物なのです。

一方でミールジェネレータの使用は、"何を入れても安全な食品が作られる"ということから、"何が材料になっているかわからない"という人々の食への疑いを抱きました。

実際に、場末の食堂では廃棄物をジェネレータに入れていることも少なくないのです。

幸いにもナカツガワ・コロニーでは近隣に文明崩壊前の農業プラントが残っていて、野菜や果物の生産を行うことができました。

これは保存状態のよい遺跡を確保し、再生させ、モンスターや略奪者から自衛することによって可能になっているため、他の土地では例え農業プラントを見つけることができたとしても、実現は難しいのが現状です。

農業が衰退した以上、畜産も同様の打撃を受けました。こちらもミールジェネレータの普及が逆風となりました。

モンスター化した野生生物を狩ることは危険であり、ハンターの身の安全を考慮すると安定した食肉の確保は難しいのです。

モンスターの肉を食べることは医学上問題はないとされていますが、単価も高く、流通も少なく、多くの人々がモンスター食を忌避する傾向にあるため、広く利用されることが少ないのが現状です。

ただし、一部の食通からは熱狂的な支持を受けています。

5.文明崩壊世界を支える技術

この世界は旧文明の遺産で生きながらえています。

先述の"ミールジェネレータ"とその元になっている"分子再構成システム"の他にも、ナノマシンや遺伝子操作技術、立体プロジェクタ技術など、様々なオーバーテクノロジーが用いられています。

特に重要なのは、バイオマスエンジンです。

スクーターの動力になる小型のものから、サイトやコロニーの電力をまかなう大型のエンジンまで、様々なものが使われています。

バクテリアが分解できる素材ならば何でも発電の材料にすることが可能で、人々の生活圏を守ることに貢献しました。

一方、"最終戦争"後の衰退期に失われた技術も計り知れません。精密制御の無人戦闘機、高出力レーザー兵器、低空人工衛星から攻撃をおこなう、通称"衛星砲"などはもはや使用、維持のための技術や資材が失われて、ロストテクノロジーと化しています。

こうしたロストテクノロジーを復活させようという動きがあります。特に衰退期の谷底を過ぎた後、"遺跡漁り"が埋もれていた技術を発掘、回収していきました。これによりナノマシンや高性能バッテリー、精密制御工作技術などが再発見され、文明崩壊世界の技術レベルを回復させることに貢献しましたが、現在ではめぼしい技術、驚くべきロストテクノロジーが新たに出土することは稀です。

6.ミュータント

"突然変異により、外見が変わった人々"の総称です。

一般的に変化の度合いにより、

軽微<軽度<中程度<重度<重篤

と区分けされています。

○軽微:ごく一部の変化のみ。

(例)

・眼の構造が違う(猫目、猛禽目、ヤギ目)

・耳が長い(エルフ耳)

・体毛の色が違う(葉緑素を含むなど)


○軽度:一目でミュータントだとわかるが、人間のシルエットは大きく変化しない程度の変異

(例)

・肌の色の変化(青、紫、灰色など)

・身体パーツの大きな変化(獣耳、天狗鼻、腕や脚など一部の巨大化)

・皮膚の一部に羽毛、鱗などの構造、毛皮化。

・多眼や単眼


○中程度:人間から大きくシルエットが変化する変異を一部に持つ(顔は人間の形を留めている)

(例)

・二対目の腕、脚

・一部の皮膚の硬化、外骨格化

・翼や尻尾を持つ


○重度:頭部の変異、全身に変異を持つ

(例)

・獣や爬虫類、あるいは更に異様な姿の頭部

・全身の外骨格化


○重篤:全身の変異により、人体の機能が大きく損なわれる

(例)

・発話が不可能である

・自由な移動が困難である

・通常の食事をとることが困難である

・自力呼吸が困難である


これらの変異への区分法は、重篤ミュータント以外、ミュータントの外見のみを基準にしています。また、実際には厳密な区分けが難しい例も多くあります。

尚、突然変異を引き起こす因子は非ミュータントも持っています。"トリガー因子"を持たないために変異が発症しないのです。

"ミュータント"の区分けはあくまで外見上の変化のみを参照する物なのです。

医学的に"変異因子"、"トリガー因子"はある程度解明されていますが、尚人々の間にはミュータントへの忌避感は根強くあります。

セントラル・サイトなど大きな都市ではミュータントを一般の人々に"見えない"ようにするし、小さなコロニーでは露骨に排除する例もあります。

ミュータントたちは貧困地域にコミュニティを作って暮らしていることが多いのです。

就くことのできる職も制限されることが多く、犯罪の加害者、被害者になることも多いことが社会問題になっています。

7."モンスター"

人間以外の突然変異を起こした生物は、総じて"モンスター"と呼ばれています。

実は、突然変異生物の問題は、文明崩壊前からちらほら出ていました。遺伝子汚染が広まり、地上のほぼ全域で突然変異生物が見られるようになったのは、文明崩壊以降のことです。

突然変異を起こした生物はそれまでの生物より頑強、凶暴になります。弱体化する変異は生き残らないのです。

彼らは第一世代モンスターと比べると危険性は落ちますが、やはり危険な生き物には変わりありません。

(作中に登場したモンスターの例)

・オニクマ(大熊。流れ出した血液が結晶化して、棘や鎧となって自らを護る)

・茨鹿(イバラジカ。建築重機ほどの大きさの鹿。角が全身から生え出し、イバラのように見える)

・ダガーリンクス(一対の鋭く長い犬歯を持つ、大型の猫。実は脳波を無線のように使って周辺にいる個体と密接な連携を取り、群れで狩りをおこなう)

8.文明崩壊世界の警察組織

文明崩壊した世界の政治の中心は各地のセントラル・サイトです。

司法権を持つのは各セントラルの"保安局"であり、警察権を持って捜査を行うのが、保安局の監督を受けた"保安官"です。

保安官はコロニーには正・副の2人、セントラル・サイトや中規模サイトにはそれ以上の数が配置されます。例えば、ナゴヤ・セントラルには4人の正保安官と、それぞれに副保安官が3人ずつ置かれています。

保安官は基本的に、先任が後任を指名します。3人以上の保安官が配置される都市においては、保安官同士の監視があり、後任の指名を他の保安官が差し止めることもあります。

しかし基本的に、保安官人事は各都市の問題であるため、特に小さなコロニーでは悪徳保安官による腐敗が起こりやすいのが現状です。

この問題に対処するのが、保安局から派遣される"巡回判事"です。彼らは保安官の素行や実績を審査し、不備や問題があると見做した場合、保安局の査問会にかけるよう、手続きする権限を持っています。

この世界の軍隊は、各地のセントラル・サイトに所属しています。そしてカガミハラ・フォート・サイトのように、軍事基地が民間人の居留者を受け入れて都市化したサイトでは、軍警察が警察権を持ちます。(司法権が保安局にあることは変わりません)

9.文明崩壊世界の交通事情

この世界では陸路が人流と物流の中心です。ただし、モンスターの危険があり、鉄道網は壊滅して使われていません。専らバイオマスエンジンと、水動力エンジンの自動車が用いられています。

空路は戦争の爪痕や飛行モンスターの影響により衰退し、回復していません。航空機の衰退と共に航空機技術も衰退していきました。

海にも危険なモンスターは多く棲息していますが、各地のセントラル防衛軍が協力し、大武装船団を作ることでモンスターの脅威から身を守っています。

10.文明崩壊世界地理誌

○ナカツガワ・コロニー

ホンシュー・アイランドの"背中"と称される大山脈、チュウオー・スパインの近くにある町です。
物語開始時点まで、住民はミュータントのみでした。

町の周囲には旧文明期の遺跡や、稼働を続ける農業プラント、そしてそれらを取り巻く深い森があります。

文明崩壊前は街道の一宿場町に過ぎず、更に山の奥にたくさんの町や集落がありましたが、現在では放棄され、ナカツガワ・コロニーが辺境の町となっています。

恐ろしいほど活力に満ちた自然の侵攻を食い止める人類世界の防波堤にして、"真人間"から見捨てられた者達の町、それがナカツガワです。

一方でナカツガワは農業資源に恵まれ、最寄りの町に最高級の"土付き野菜"を供給する、豊かな土地でもありました。


○カガミハラ・フォート・サイト

ナカツガワ・コロニーから旧幹線道路、"オールド・チュウオー・ライン"を西へ、丸一日走らせたところに位置する城塞都市です。

ナゴヤ・セントラル・サイトの北方を守るセントラル防衛軍の基地が旧文明期の軍事基地跡に建てられると、周辺に細々と暮らしていた人々が集まり、都市を形成するに至りました。

文民が軍属の数を大きく超えた今でもセントラル防衛軍が実質的に統治し、軍警察が治安維持に当たる軍事都市です。

軍事基地部分が"管理区域"、文民の居住地が"市街地"として厳密に区切られ、市街地への武器類の持ち込みが禁止されているなど、文明崩壊後の世界では珍しく、厳密な管理体制によって安全が確保されている町です。

このため流入する移民は多く、市街地は今なお拡大と再編成を続けています。

11."ストライカー雷電"

文明崩壊前にテレビ放送され、人気を博していた特撮ドラマ、そしてその主役であるヒーローの名前です。

[あらすじ]

城東大学の3年生、住公太郎は恩師の轟教授と共に、機械人類"エンジノイド"による、地球完全機械化を目論む悪の帝国・"ディーゼル帝国"の襲撃を受ける!

轟教授はディーゼル帝国の侵略に反対し、人類側に亡命していたエンジノイド、Dr.ダイナモだった!

辛くも襲撃から逃れるが、公太郎は轟教授を庇って大怪我を負ってしまう。再び迫る追跡者。

死を覚悟した公太郎に、轟教授は銀色の変身ベルト、"ライトニングドライバー"を託す……!

こうして公太郎は機械と電気の力を纏った戦士、"ストライカー雷電"となった。ストライカー雷電とディーゼル帝国のエンジノイド兵たちとの、長い戦いの幕が開ける……!


[解説]

子ども向けの枠を超えた重厚な脚本と激しいアクション、そして最新の特撮技術により、"ストライカー雷電"は当初予定していた話数を超えて放送を続ける、人気番組となりました。

放送は文明崩壊直前まで続きましたが、戦時下の非常事態体制によりあえなく打ち切られることになります。

戦いの過酷さ、虚しさ、そして分かりあうための努力の素晴らしさまでを描ききった作品が、戦争によって打ち切られてしまったのは、大変な皮肉と言えるかもしれません。




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