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【散文】秋の一声

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あちらこちらから鈴虫の声が響いてきて、夜の街を震わせていた。涼やかな音色が空気に充満して空まで登っていくみたいだった。

そのおかげか、古ぼけた街灯の光や車のヘッドライトさえ、言いようのない美しさを孕んで見える。

いつもの帰り道なのに、どこか特別な場所に迷い込んでしまったような。ノスタルジー、と自分にしか聞こえない声を出してみる。

そうしたら、もうすぐ金木犀が咲くかもね、と返事が聞こえた。

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