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PMO案件の楽しみ方

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コンサルティングファームで働く以上、PMO案件は避けられないものである。にも関わらず、PMO案件を敬遠する若手は多い。敬遠とまではいかないものの漫然と取り組んでしまい、成長機会を逃してしまっている若手も多いように感じる。

一方で「PMO案件にしっかりコミットし、バリューを出せるようになること」は、コンサルタントとして成長しこの業界で生き残っていくために避けて通れない、とても重要なことだと認識している。

何故か?以下2つの理由がある。

①「プロジェクトが動く」レベルの"具体"を知る機会であること
②問題解決力の磨き込みと証明の機会であること

本稿ではこの2つの理由について深堀することを通じて、PMO案件を楽しみ・きちんとバリューを出していくマインドセットの構築に寄与できればと考えている。PMO案件でのバリューの出し方がいまいちわからないという方にも是非読んでみて欲しい。

①「プロジェクトが動く」レベルの"具体"を知る機会であること

前提として、コンサルタントによる提言は、顧客の行動変革に繋がる気付き(=示唆)を含んでこそのものである。実際の行動変革を行いその行動変革があるべき姿を実現すること、更にはコーポレートファイナンス的なインパクトを生むことができてこそのクライアントバリューである。

顧客のあるべき姿の実現に繋がる提言をするためには、現場のリアル、例えば変革を拒む業界慣習や既得権益などの存在を考慮できるようになるべきであるが、そのためにPMO案件へのコミットが良い経験になるはず、というのが1つ目の主張である。

(コンサルティングファームが関与するものも含め)事業会社が自己変革を目的に企画/実行するプロジェクトにおいては、実際には「あるべき姿の実現」には至らず、プロジェクトの途中で止まってしまう案件が、想像以上に多いと聞く。

何故か?実際にプロジェクトを動かすは、現場である。その現場で、新しく何かをやろうとすると、今まで是とされてきたしきたり的なものが否定されることがある。あるいは、現場が「今の仕組みや顧客との関係性上できない」と考えていること(あるいは思い込んでいること)を克服しないと前に進まないことがある。

戦略提言がゴールの案件の場合、関与するコンサルタントは一部の業界有識者を除けば、そういった現場の事情/感情を深いところまで理解できていないケースがある。仮に理解していたとしてもカウンターパートである経営陣への報告内容において現場の動かし方までの各論に踏み込むのはなかなか難しいものである。

一方、PMO案件では、そのプロジェクトのゴール(=あるべき姿)を実現するために、現場が「やりたくないこと」や「できないと思っていること」を1つずつ潰して前に進んで行く必要がある。そのためには1人のコンサルタントとして、現場の方々が大切にしていることに寄り添うことが重要だし、現場の実態を踏まえてリーズナブルな(現実的で実効的な)代替案を提案できるようになる必要がある。

このような取り組み(=PMO案件)を経験していくと、いつのまにか、仮に全然違う業界の案件でも「きっと現場はこういう風に感じるんだろうな」という想像ができるようになってくる。あくまで想像レベルであり、提言に落とし込めか?というとそう簡単な話ではないが、確実にリアリティのある/解像度の高い示唆が出せるようになるというのは実感値としてある。

実際にプロジェクトを推進することを通じて、「プロジェクトが動く」レベルの"具体"を知ることで、より解像度の高い示唆を出せるようになるというのが、PMO案件を経験した方が良いと考える1つ目の理由である。

② 問題解決力の磨き込みと証明の機会であること

問題解決のプロセスとは、色々言い回しはあると思うが、概ね以下の5つのプロセスから成り立つものと理解している。
①解くべき問いを立てること
②解に対する仮説を立てて検証すること
③検証結果をアクションに落とし込むこと
④人を巻き込んで実行すること
⑤成果を検証すること

先述した通り①〜⑤をやり切ること自体が非常に難しいものである。当たり前ではあるが、解くべき問いが高度になればなるほど、より一層難しくなる。

解くべき問いの難易度というのはレイヤーで変わってくる。コンサルティングのプロジェクトにおいては、以下のレベル分けが適用できる。
A.プロジェクト(コア論点)
B.モジュール(サブ論点)
C.タスク(個別論点)

コンサルティングファームのスタッフレベルにおいては、C.タスク(個別論点)について、①〜⑤の問題解決プロセスをきちんと回せるようになることがまずもって重要であり、そのための訓練の場としてPMO案件こそが有効であるというのが、本稿の2つ目の主張だ。

いままで多数の後輩の指導を行なってきたが、C.タスク(個別論点)のレベルにおいて、意識的に問題解決プロセスを回しているスタッフは思いの外少ないように感じる。

確かに、タスクレベルの問題解決において、スタッフは漫然と上司に指示された作業だけを処理していていれば、なんとなくプロジェクトが回ってしまうことがある。そうすると何となく仕事ができた気になって「PMO案件なんてつまらない」的な態度になってしまうのも、わからなくはない。

一方できちんと頭を使って意識的に問題解決プロセスを踏まないと、問題解決スキル自体は身に付かない。観測範囲においても、本人はできているつもりでも要求水準に満たないジュニアスタッフは数多く見かける。

先述した通り、問題解決プロセスは、レベルが上がるにつれ考えるべき要素が増えて難易度が上がるという性質がある。初級レベルが十分にできていないのに、いきなり上級レベル(戦略案件など)にチャレンジしてもなかなかバリューなど出すのは難しい。

まずは、C.タスク(個別論点)の解決において、問題解決的なアプローチが必要であることを認識し、意識的に取り組むことを通じて問題解決プロセスをきちんと回しきるスキルを身につけることこそが、この業界で生き残り、より高度な仕事にチャレンジし、職位と報酬を上げていくために、とても重要なのだ。

では、C.タスク(個別論点)の問題解決においては各プロセスで具体的にどのようなことを意識して取り組むべきなのか?最後にこの点について細かく見ていきたい。

①解くべき問いを立てる
日々発生している小粒の問題について、意識を張り巡らせ、感知能力を高めていきたい。
具体的には、PJ全体の進捗状況を確認しながら、進捗が遅れているタスクや、新しく追加されたものの担当が振らず浮いているタスク、顕在化していないものの筋が悪そうなタスクを、自分から主体的に、発見しにいく。
発見した問題がプロジェクト全体にとってどれほどの重要度か?という点についてもきちんと思考を巡らせておくことが大切である。

②解決策の仮説を立てて検証すること
③検証結果をアクションに落とし込むこと

C.タスクレベルの問題解決おいては、実務的にはある程度妥当性の高い仮説を立てられたら、きちんと検証する前にいきなり実行する場合が多い。PMO案件(特にタスクレベルの問題解決)の場合は途中修正が簡単で、ある程度のトライアンドエラーが許されるからだ。

このレベル/フェーズでの関係者や上長への壁打ちは、仮説自体を検証するというよりは、仮説の解像度と打ち手の実行精度を練り上げるために活用するのが良い。打ち手と実施プロセス、担当者と実施スケジュールまで固めてしまう。

④人を巻き込んで実行すること
①〜③で、どれだけ頭を使って考えたか?が如実に出るのが④である。⑴プロジェクトリーダーにエスカレーションして重要度の高いタスクと認識してもらい、お墨付きを得ること⑵実際に手を動かすメンバーに説明して理解を得ることが重要になる。

⑴⑵とも相手が頭の中で考えていることを想像して、タスクに協力してもらう為には何を理解してもらう必要があるのか?どういう配慮ができていたら喜んでくれるのか?逆に何に配慮できていなかったら逆鱗に触れてしまい、非協力的な態度を招いてしまうのか?等について考え抜いた上で、メール/チャット/電話/直接的な会話などあらゆるコミュニケーション手段を駆使して、相手を巻き込んでいく。

⑤成果を検証すること
タスクレベルの問題解決においては、タスクを実行したのち、⑴問題が実際に解決したのか⑵新たに別の問題が発生していないかを確認する。

④のタイミングで相手に重要性を十分に承知してもらえておらず未着手のまま放置されてしまう/やろうとしてみたら何か阻害要因が発生して思うように進まない等ということが頻繁に起こる。なので、提案して終わりではなく、自分が主体的にコミットして問題を解き切り、ちゃんと解けた確認することが重要になる。

上記①〜⑤のプロセスを意識的に回せるようになると、次第に凡ゆるシーンで応用できるような問題解決スキルが身に付いていくものと考えている。

最後に

以上、本稿ではPMO案件の重要性について、PMO案件を積極的に楽しむための視点を意識しつつ、解説を試みた。PMO案件を楽しみ、コンサルタントとして成長する機会に役立てて頂けたら幸いである。

筆者自身、まだまだ未熟者ではあるが、
コンサルタントとして働いていく中で得た気づきを言語化していくこと、皆さんからフィードバックを頂くことを通じて、更に成長していければと考えている。お気づきの点などあれば、是非コメント頂きたい。

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