【毎週ショートショート】オノマトペピアノ

今日は担当変更があってから、最初の仕事だ。
早速、担当する家を覗く。
私は突き上げ棒をセットし、鍵盤蓋を開いた。
背筋を伸ばし、呼吸を整えて演奏を待つ。

担当する家はシドニーの辺境。
体重3桁越えの婦人のお宅だ。
さあ、彼女が目を覚ました。
演奏開始。

ドシドシと廊下を歩く音を奏でる。
テレビをつけて、ソファに座るとフラットだった座面が歪んで、内部の金具がミシミシと軋んだ。
そして何やらビデオカメラをテレビに接続し始めた。
再生されたテレビの中では広いソラの下で、2人の子供がシーソーに乗って楽しそうに遊んでいる。
しばらくすると、2人は家の中に戻って、画面が切り替わる。
どうやらホームビデオのようだ。
わんぱくな子供たちのようで、食器を外に投げたり、戸棚の上から小麦粉をドファッと落としたりしている。

ビデオの中は音に溢れていて、鍵盤を弾く指が忙しかった。
ただ、このビデオの中の喧騒に比べて、この家は妙に音が少ない。
見れば婦人は涙を流していた。
机の上に飾られた写真を見れば、その理由は推測できてしまう。
ただ、私にはどうすることもできない。
せめて豊かに彩ってやりたいと思いながら、ピアノを弾く手に力を込めた。

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