【ショートショート】拝啓10年前の私へ

差し出された便箋には見覚えがあった。
この小さい水玉の柄は、自分が愛用しているものと同じものだ。

そして中に見えた癖のある文字にも心当たりがあるからだろう。
「これは10年後のあなたから」だなんて胡散臭い文句を添えて渡された手紙を疑う気がそれほど起こらないのは。

ただ、10年後の自分が、過去の自分に手紙を送れるとしたら、今、この瞬間がベストなんだろうなと推測はできた。
この手紙の如何によっては、私は計画を断念せねばなるまい。
心臓がうるさかった。
スマホのライトをつけて、手紙の1行目を照らした。

「時効が成立しました」

ありがとう、10年後の私。
これで計画の正しさが証明された。
後は実行するのみだ。

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