ある日、雨の日の休憩だった。 お姉さまたちが、ひょんなことからペットの死の話になった。死さえも、この魔女たちの円卓の上では珈琲の供でしかない。 私は犬を飼っていたことがあった。まっ白なスピッツで、思慮深そうに不服を訴える顔とはしゃぎながら人の脇に黒い鼻を突っ込んでくるイケメンだった。そんな彼は三年前にお空の橋を渡り、今頃は同じところにいる祖父の脇に鼻を突っ込んでいることだろう。 「でも今はいいわねぇ!骨をダイヤにできるんですって」 「え。骨をダイヤに?そんなことで
休憩の時間である。 私は階段で休憩所へゆこうとしていた。 「生ハムちゃん!階段なんて暑いでしょ。乗っていきなさいよ」 ひとりのお姉さまがそう誘う。私は断る理由もないし、「ほんじゃお邪魔しま~す」と乗り込んだ。 「そうねぇ、あそこに比べれば私たちって幸せよね」 「そう思わなくちゃいけないわ」 お姉さま二人はなにか深い会話をしていた。私は話がわからないので、のんびりと古いエレベーターに凭れて脳内で歌舞伎町の女王を流していた。 「あ、お疲れ様です」 エレベーターが開
私は、仕事が好きだ。 決して楽ではないし、給金がとてつもなくいいわけでもない。契約社員で、月給が二十万をこえたことはまだない。 だけど、ルーティンをこなし、自分で決めたノルマを達成して、満足に包まれてバスで帰るのが好きだ。 或いは、忙しすぎてさばききれなかった案件に頭を悩ましながら、明日もいっぱいだ~、うわ~、と嘆いてから眠るのが好きなのだ。 その平穏が、あるおじさんによって崩されつつある。その話をしたい。というより意見を聞きたい。 この人をどう扱っていいのか