見出し画像

引き取る息の、最後の深さ。

父が逝った夏が、またひとつ去った。

齢60になるまで大きな病気も怪我もなく穏やかに生きてきた父は、いきなり弩級の病魔に襲われそのまま還らなかった。

それまでの父は、心も見た目も本当に若々しかった。髪が薄くなり、髭に白いものが混じりはしたけれど、何枚か残る50代の写真を見るにつけ、年齢相応には見えない。

その年代にさしかかった今の自分も、同世代の平均値よりはだいぶ若く見られるけれど、だからこそ父のように、老いることなくいきなり終わりが来るのかなと思うこともある。

父の終わりまで、私はあと10年。

今から10年前の記憶は、ほんの先週くらいの印象だ。死もきっと、来週ぐらいの近さにあるのかもしれない。だからと言って、今の毎日を150%で生きようなどと前のめりにはならないけれど、去った時に多少は惜しまれる存在でありたいなとは思う。せめて。

そのお金で、美味しい珈琲をいただきます。 ありがとうございます。