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【後編①】開拓して、出会い、ともに耕される

「津軽あかつきの会」は20年以上続く、津軽のおかあさんたちで構成されている“伝承料理という活動”をするグループです。“伝承料理”とは単なる郷土料理のことではなく、学び、伝えていく“活動”そのものをさします。地域おこし協力隊2年目に入会しないかと、お声がけいただきました。
当時、コロナが蔓延し始めた頃で、津軽あかつきの会の、お客さんを受け入れて食事を提供するという活動ができなくなってしまいました。活動を継続していく方法の1つとして、レシピ本を発行しようということになりました。結果、柴田書店という出版社から昨年の7月に「津軽伝承料理」という本を出版することができました。

このレシピ本では、普段メンバーのお母さんたちが作っている料理を数値化したり、調理工程を明確にしたりするという作業がとても重要でした。というのも、大体みなさんは味や感覚でレシピを記憶しているので、そのままだとレシピ本に掲載できないのです。
「このザラメは何g入れるのですか?」と聞くと、「●●さんの手で3回分だ。」と言われます。「この具材は何分茹でるんですか?」と聞くと、「ちょんどよく。」と言われます。そういう状態で88品を、誰もが分かる状態に持っていくのは、本当に大変な作業でした。ただ、私はその作業の中で、津軽の料理のいろんなことを教えていただきました。でも、やはり料理をしてこその伝承料理だなと思っています。レシピ本を作っている時は、「バッケみそ」を作る時は、鍋を3時間ほどかき混ぜ続けないといけないのですが、その大変さは文字に起こすだけではわかりません。実際にかき混ぜさせてもらった時、30分ほどで根を上げてしまいました。水分が減ってきて、時間を増すごとに混ぜづらくなっていく「バッケみそ」の重みは、かき混ぜてみないとわからなかったなと思います。
また、レシピ本は春夏秋冬で構成されていますが、冬のレシピが一番多くなっています。なぜかというと、津軽では長く厳しい冬を越すために、夏や秋のうちに保存食を用意し、冬でもしっかり栄養が取れるように長年工夫してきたからです。料理から、冬だけでなく、津軽の四季についてのいろんな情報が私の中に蓄積されている感覚は、とても新鮮なものでした。個別の事象から、普遍的なものを見出す感覚を、津軽あかつきの会で磨かせてもらっている感じがしています。

このような津軽あかつきの会の素晴らしい活動を支えているのはもちろん会員のみなさんですが、会長の工藤良子さんの力も大変大きいと感じています。いつも「津軽あかつきの会」にとっていいことかどうか、ということを考え抜いて決断を下し、自分にとっての理想と津軽あかつきの会にとっての理想を切り分けて考え、津軽という地域が残してきた“当たり前”のものへのリスペクトがあります。その他にもたくさん学ばせていただいているのですが、そのたくさんのものがあったからこそ、20年以上この活動が続いており、いろんなところで高い評価を受けているのだと思います。もし津軽あかつきの会に興味をお持ちの方がいましたら、まずはぜひ一度食べに来てください。


この記事は、2022年11月10日(木)に依頼を受けた、弘前大学人文社会科学部、キャリア形成の基礎、働く人を知る②講演内容をリライトして掲載したものです。
後編②へと続きます。


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