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「りんご農家の減少自体が課題」という思い込みへの反省

弘前市にはりんご農家が1万人以上います。人口17万人のうち5%がりんご農家です。弘前出身の友人に聞くと、親戚を辿ると大抵りんご農家がいるような状況です。

5月には「弘前りんご花まつり」、11月には「りんご収穫際」が実施され、収穫の時期には海外からの旅行者も多く訪れます。

農林業センサスによると、弘前市のりんごの生産量は気候によって変動はあるものの増加傾向にあります。海外での需要の高まりによって販売額は右肩上がりです。産業規模について明かにされている資料は多くはありませんが、2005年時で500億円規模の産業であると試算されています。周辺産業にも影響を与えるりんご産業は、弘前市の経済発展において極めて重要な要素です。

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しかし、産業が拡大しているにも関わらず「りんご農家」は減少しています。弘前市が実施したりんご農家への調査によると、7割のりんご農家は自分の子どもや孫に、りんご農家になることを勧めません。

2019年に弘前に移住しました。りんご畑で農作業をしながらりんご業界に関わるいろんな人と会う日々を送っています。"りんご農家の減少自体が課題"の認識のもと、解決のためにどうすればいいのかを考えてきたのです。そのことは、先日note の「おすすめ」にも選んでいただいた以下の記事をお読みください。

「りんご産業の維持のためにりんご農家を増やさなくてはいけない」

よく言われますし、私自身もそう思っていました。しかし、「生産量増加」「販売額増加」「大規模農家数増加」という事実があります。経済的な意味での産業の維持は出来ていると読み取ることはできるのではないでしょうか。生産に関して「効率化できている」とも言えるかもしれません。

1年活動してみて、上記のようなことが分かってきました。そのため、"りんご農家減少自体が課題"と決めてかかることはやめることにします。

まずそもそも、「りんご農家の減少」について考える時、「産業」「経済」「消費」などの「ハード」な面だけから見ていることを反省しています。

「ふるさとの風景を未来へと伝えたい」というメッセージを掲げる弘前シードル工房kimoriという会社があります。メッセージへ共感する人が増え、色々なメディアで取り上げられています。それを踏まえると、「ソフト」なところからも考える必要があると、より思わされます。

改めて「ソフト」なところから考えてみます。そうすると、1年間でりんご由来の素敵な文化にたくさん触れてきたことに気づきます。りんご畑での「モツ焼き」。冬の仕事として発達した「こぎん刺し」。収穫に使われる「根曲り竹の竹籠」や「木箱」。りんごと岩木山のロケーション。剪定バサミやボッコ靴などなど。個人的には畑での「おやつタイム」も欠かせません。暮らしを豊かにするヒントが「りんごのある暮らし」にはたくさんあります。

しかし、そんな素敵な文化を支えてきたりんご農家さんに関して気になる点があります。「りんご農家さんの価値が低く見られているのでは?」と感じることです。りんご農家さんはりんご農家さんで「普通のことをやっているだけ」と言います。謙虚なだけ、とも読み取れます。しかし、自分の子どもや孫にりんご農家になることを勧めない状況があります。ただ謙虚なだけと捉えることは難しいと思います。りんご農家さん以外に話を聞いても「りんごの作業なんて簡単でしょ?」と、軽く言われることが大半です。なぜ、りんご農家さん、りんご農家さん以外の双方からの評価が低いのでしょうか。まだ明かにできていません。これから向き合っていきたいと思います。

まずは自分自身反省します。これからは「ソフト」なところからもアプローチしていきます。そもそもりんご業界全体の問題、課題が何なのかを明かにしていきます。その上で、"りんご農家の減少"によってどんなことが発生していて、発生しそうで、それに対してどんなことをやっていくべきか。あらためて検討し、仮説を立て、実践していこうと思います。

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