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辺境でも研究者として暮らしていきたい、暮らしていく。

じぶんがこれからも「研究者」として生きていくためにはどうしていこうかと考えてみたことの記録です。

【追記】タイトルの辺境は「イノベーションは辺境から生まれる」という言説が念頭にありました。ネガティブな側面がないとは言いませんが、辺境ゆえのポジティブ性を込めたつもりでもあります。イノベーションと辺境の議論については、たとえば下記の加護野先生の議論をご覧ください。


少しでもやさしく:過酷な修業と競争のその後

研究者になりたいとがんばっているとき、あるいは研究者と呼ばれるなにかに成れたけれども暮らしているなかで困ったとき。あらゆる困りごとが生じます。しかしながら、さらに困ったことに、そのような困りごとをどのように解消してよいのかがわからなかったりします。

大学院在学時であれば、指導教員や指導教員ではないけれどコミュニケーションをとれる教員との関係において、もしくは大学院の同級生や先輩・後輩との関係において、なんとか問題解決を図るのだろうと思います。

それでもやっぱり困ってしまうのは、教員と相対するとちょっと緊張してしまったり、ほかの大学院生が少なかったりするからです。
さらに、研究者として大学や関連機関に就職をした後であれば、誰に聞いたらよいのかさっぱりわからないということもあります。

このような足掻く日々を精一杯戦っているみなさまに対して少しでも優しくあろうと書いたのがこちらです。

辺境で生きていく:カッコつきの「豊かでない環境」

いつだって隣の芝生は青く見えます。青々としている。
隣をみなくとも、じぶんの庭の芝生で寝っ転がっていられる、芝生に座っていられる、それだけで十二分に幸せかもしれません。それはそうなんです。研究機関に就職できただけで恵まれている側面は間違いなくあります。

それでもやっぱり隣の芝生は青いのです。大学院までの研究者を輩出するような機関から離れてしまうと、研究環境は一変します。諸々ありますが、たとえば、じぶんと同じような領域の研究者と会話をする機会が減ります。そもそもの数が減るからですね。そうすると、次第に精一杯戦っているみなさまを外から見ているだけの立場になっちゃったりします。まさにこのように嘆いちゃう。

研究者で居続けるために、研究を続けていくために、環境を整備していかないといけない。じぶんがもっと強くて、もっと能力があればよいのですが、そうではないので、やろうとする環境から整備しようという。断絶されてしまうので。

そこで先輩の経済学者とはじめたのがサロンです。研究領域を問わず、研究の話をしていこうという会で、詳しくは下記の通り。

 サロンの趣旨は、最近興味をもっていることや研究の構想・萌芽期にあるものを共有して気軽に議論をしようというものです。
 イメージとしては、大学院生時代に先輩や同級生に研究の相談をしていたような場を思い浮かべていただければと思います。それゆえに領域は問いません。最近読んだ書籍・論文について話したいなどでも良いと思います。
 サロンの狙いとしては、2つあります。①大学教員になると意外と気楽に研究の話をできる場がないぞという問題を解消したい。②ゆるやかに研究を止めていくのではなく研究をしているという空気感を醸成して自分のやる気を高めたい。だいたいそんな感じです。

出所:広島人文社会科学研究会(https://sites.google.com/view/local-research-seminar/

辺境を豊かにする:開かれたコミュニティの創造

辺境は辺境なりに荒れていてタフな環境だからこそ得られるものが当然あります。異分野の研究者とのコミュニケーションによってこそ得られるものも当然あります。その価値もまた貴重であることは間違いない。思わぬところから得られた知識・情報との新結合は、イノベーション研究者として当然に重視しておきたいです。

というところまでは来ていました。揺さぶられたのは、先輩からの問いかけです。

「いちばん研究の話をするのは誰なのか」という問いは、辺境で育ってきた人間には思わぬクリティカルヒットでした。強いホームがないんですよね。もちろん、常に研究の話をする環境まではできており、それはそれでありがたいです。でも、もう少し議論をしたい、お話を超えて。

さてここでいきなりですが、辺境には2つの意味があります。学問的に主要な研究機関ではないという意味と、主要な研究機関から地理的に離れた地方の研究機関という意味です。
前者の意味では、同期や同じ研究室の研究者仲間がほぼいない。後者の意味では、同じ領域の研究者仲間がほぼいない。

そのようなわけで、大学院までは、そして大学院から近いところにあったファーストキャリアでは、指導教員がいちばん研究の話をする相手でした。文字通りの指導ですね。

それがここ数年、というか地方都市にやってきてからは「いちばん研究の話をするのは誰なのか」と問われると、「えぇと、いないかもな…」となりました。直近の直近では、共著者とのミーティングがあり、それはとてもたのしく有意義であるからこそ、あゝこれかとなるわけです。
特定のプロジェクトに紐づかないけれども、共有されたテーマについてじっくり議論できる環境。それこそ心理的安全な環境。それが強いホームなんだろうなと、それがエコシステムとしての「研究室」なんだろうなと。

そんなコミュニティをいまのいまから作れるのかまったくわからないのですが、やってみようかなと思いました。じぶんの研究について、簡単に方向性を確かめてみたり、雑なアイデアをインキュベートしてみたり、最近読んだ本や論文について議論してみたり、そのような研究コミュニティがあるとよいなあと思いました。リジェクトが続いたりすると、自信がなくなり、無くなった自信の穴には不安が入り込む。そんなときに議論ができる場所を創れるとよいなと思いまして。辺境をネットワークで結んで豊かに耕そうというものです。
経営戦略やイノベーション・マネジメント、アントレプレナーシップまわりに関心のある研究者が5人程度でも集まれば十二分だと思っております。基本的にZoomでミーティングをしましょう!こちらのフォームからぜひ!

これまでの、広く経営学研究コミュニティに向けたGiveとはまた少し異なるものですが、上手くいくとうれしいな…!

いただいたサポートは研究室の学生向けに活用します。学生の研究用書籍や研究旅費の足しにすることになると思います。