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次回公演は以前上演した作品の再演

少し前置き

富山県で活動している劇団血パンダ。次回の公演は、珍しく再演なのだけれど、役者たちの台本の解析が進んでいて、初演時に意識しきれなかったことまで把握されているので、一応記しておく。
稽古中役者たちには全部つながっているし、違うように見える同じ様な話を繰り返していると言いはしているものの、それがかなり実感されている様子。
再演と言いながら、キャストは全てシャッフルしていて、同じ役を演じる人間は居ないので、別物に仕上がるのは当然のことだが、それでもこれまでになく、ふわっとしたところの無い仕上がりになるものと思う。
戯曲は公開済みなので、こちらもどうぞ。→戯曲 (dec_001.pdf/627KB)

ここから本題

富山県で劇団が結成できて、演劇再開して十数年になる。
関西で静かな演劇を模索していたときの発見をメンバーに共有して、そのまま技法の拡張の模索を開始した。

結成当初から、立ち位置を定めたり、動きを指定することはほとんどしていない。
単に台本から読み取れた範囲の妥当さだけを手がかりに会話をするし、基本的に役者は常に自分が中心として見られている前提で振る舞う様にしている。
その時の位置関係とタイミングが全てで、どうしても会話のイニシアチブが欲しければそう振る舞えばいいし、妥当な範囲を探っていくのが稽古場での作業のほとんどだ。

この作業自体は、高校演劇などの演劇経験があると概ね体に染み付いている、セリフの終わりをなにかの起点にするタイミングのとり方と親和性が低いので、かなり苦労することになる。
しかし、これに慣れることで、役者は進行上の都合の段取りをなぞる作業から開放され、明確な指標もなく、セリフの音をどうやって出すのかで迷い続ける稽古からも開放される。
自発的に位置取りをし、言葉を発する結果、稽古の密度が変化し結果的に時間の短縮にもつながる。
演出は妥当さのジャッジと、ニュアンスの取り決め、より効果的な瞬間を求めて演劇的なピークをどうするのかの操作を担当する。
多少の練度は必要になるが、人のコミュニケーションが妥当に見える範囲には、ある程度法則があるので、これに慣れると、いかに振る舞うかの妥当さだけを掘り下げていくことになり、役者は自分自身と台本の流れを使って楽器でセッションをするかのように瞬間を作っていくことになる。
こうして、まるで即興でやっているかの様な演劇ができあがる。

それでもまだ、去年の段階でも、今よりもセリフを追っていたことは確かだ。
今ようやく、会話自体が何を話題にしているのか、どんなつもりで話をしているのかを埋めていくことで、舞台上には「反応」しか存在する必要がない。という状態に至った。
セリフの言い方を決めるために、台本にあるセリフの意味を見出そうとして読解を進めていた状態から、行為と思考に着目して、自分が何をするかを明確にする形に変化すると、かえって台本の読解の精度は向上する。
「この登場人物が理解できない」としても、振る舞いをトレスすることはできて、他者の行為を再現することが可能になるし、「この登場人物は私自身だ」という事故もなくなる。
テキストを立ち上げるにあたって、妥当さを体現するのが演技で、利用しているのは日本語の日常に見える光景なので、やっていれば見えてくるものがある。

これは、抽象的な会話が、ただの音の応酬に見えることも防ぐための模索でも明らかになった。やりとりされている指示語や、会話の中心になっていることについて、わからないまでも、相手の言葉を拾う反応を繰り返していくことで「把握して話している様に見える」のだ。さしあたり、実際にわかっている必要はないが、セリフを言い合っているだけだと永遠にたどり着かないが、反応を繰り返していると、会話自体からなにかを掴む瞬間がくる。

こうなってようやく、インプロビゼーションの技術が手がかりとして使える様になってくるし、行動分析の手法を逆算して人物像を形作ることも可能になる。知識を手がかりに、できないことをやってみて、各々が妥当さを発揮できる力加減の加減を知る作業をするのだけれど、これは普段の生活の中でなにかを吸収する精度をあげることにもつながる。
この手法に慣れないうちは何もしていない様に感じて不安になるかもしれないが、台本を立ち上げるために普段の自分がしない選択をすることにもなるのだから、これは演技だ。
こうなると、稽古時間は自ずと短縮できる様になってくるし、必要なのは段取りをこなすことよりむしろ、集中力のやりくりになってくる。

結成当初から、全員集合の稽古は週に1回だし、稽古場を確保して以来、役者は各自足りないと思った瞬間に予定を合わせて集まることはあるけれど、本番直前に流石に追い込みが必要になっても、稽古日が一日増えることがあるくらいだ。
演劇が専業でない大人がどうやって研鑽していくのかを考えたら、身体性を捨てて際を攻めていくことが妥当で、これは関西での経験から身にしみていた。
ひょっとして、最初からサンフォード・マイズナーのメソッドでもやっていたら、もうすこし早めにこの域に来ていたのかもしれないが、それは今とは全く別のファンタジーだ。
4月から週1で劇団外の人向けにもワークショップをやっているが、やはり演劇経験者は頭で理解しても、体が即対応できない様子。だが、変化は確実にある。

それはさておき、チケットを売らなければならないのですよ……。
実は正月の地震で割れた稽古場の台所のガラス窓がまだ入っていないのでした。

『冬の練習問題』Peatixにてチケット発売中
2024年6月8日(土)15:30〜/19:00〜
6月9日(日)15:30〜/19:00〜
開場30分前
会場:内川Studio(富山県射水市本町3丁目13−4
料金:2,000円(リピート割1,000円)



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