第30話『落とし穴の中の髑髏』

 ある男が、夢の中で広い荒野の真ん中をさまよっていました。
 男は、この荒野で大昔に掘られた落とし穴を探しているのです。
 男が探している落とし穴には、未来を告げる髑髏が仕掛けられていて、その落とし穴に落ちて生き残ることができれば、髑髏から宝の場所を聞き出すことができると信じられています。
 これは、男の一族がずっと追いかけてきた秘密で、男も子供の頃から男の伯父と一緒に夢の荒野をさまよって落とし穴を探していました。
 ある日、男の叔父は落とし穴に落ちて死んでしまいましたが、その落とし穴の底に、探していた髑髏は無く、一族の悲願は達成されませんでした。
 一人さまよい続ける夢から戻ったある日のこと、男はインドからやってきた隊商から、落とし穴を発見するための特別なメガネを手に入れました。
 このメガネがあれば、地中で囁かれている声を見ることができます。
 男は果たして、目当ての落とし穴を見つけることができるでしょうか。
 多くの秘密は、特定の人にしか知られていないものですが、似通った別の秘密を探る全く無関係の人々が、不意に出会うということも稀にあることです。
 隊商の統領は、夢の中での探索について、男と多くの秘密を分かち合った言われています。

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