投資などの「うまい話」に乗ろうとしている大学生へ 〜具体的・実践的な「危ない話の見分け方」〜
目次
0 はじめに
1 具体的事例
2 怪しい大人、怪しい話の見分け方
3 では、どうしたらいいのか
拝啓
成長意欲みなぎる大学生の皆さんへ
こんにちは。
往還型・パラレルキャリア教員の中山です。
今私は私立の中高一貫校で社会科の専任教諭として勤務しています。
ありがたいことに、多くの卒業生/教え子などの大学生と今も交流が多く、そのため私の元には日々様々な「お悩み」や「相談」が寄せられます。
その内容は「バイトの給料が支払われない」「離婚の危機にある」「進路に悩んでいる」「借金を背負ってしまった」などなど実に多様なのですが、そのうち、この1年ほど最も多い悩みとなっているのが「投資スクール/投資のノウハウ系」の詐欺(まがい)・ネズミ講(まがい)の案件についての相談です。
驚くことに、私の教え子が通っている大学のうち、その手の話を聞かない大学はないくらいです。
先週も2件そのような相談があり、私も夜中までその対応に追われていました。
本人たちは「いい話」だと思っていても、周りが怪しんで私に連絡してきたり、勧誘された人が「これって本当に儲かる話だと思いますか?」「この経営者の人は信用できますか?」といった形で連絡してきてくれるのです。
おそらく、この記事をお読みくださっている大学生の皆さんも、すでに一度はこの手の話を耳にしたり、勧誘されたりしたのではないでしょうか。
そこで、この記事では、日頃私が相談に来た卒業生たちに話している「怪しい話・大人の見分け方」について、なるべく客観的に、かつ実践的・具体的にまとめたいと思います。
理由は、あまりにこの手の相談が多く私の手が回らなくなりつつあるため、これ以上私の大事な教え子に被害者(と加害者)を出さないため、そして広く大学生の皆さんにも知っておいてもらい、被害者を出すことを防きたいためです。
ただし、ちょっと長いので、具体的事例は読み飛ばして頂いても結構です。
2 怪しい大人、怪しい話の見分け方
だけでも目を通してみて頂けたら幸いです。
参考:https://news.livedoor.com/article/detail/17008148/
1 具体的事例
(1)K・K君の事例
昨年のことです。K君はある友人から「絶対に儲かる投資の方法が書かれているUSBメモリを買わないか」と持ちかけられました。
すぐに私のところに相談に来たのですが、明らかに怪しい(というか詐欺まがいの)はなしだったため、その旨を丁寧に説明し、本人もその時は納得して、購入をとどまりました。
ところが、それから数ヶ月後、K君から連絡があり「絶対儲かると言われて購入したのに利益が出ない。それどころか赤字が膨らんでいる。助けて欲しい。」と連絡がありました。
あの後また何度か呼ばれて話を聞くうち、あまりに説得力があったため、購入してしまったとのことでした。
しかも、消費者金融で合計200万を借金しているというのです。
当然返済が滞り、毎日のように催促の連絡が来るため私に連絡してきたとのことでした。
ちなみに、このケースでは「勧誘して他の人に購入してもらえると報酬が入る」仕組みになっていたため、K君はかなりの数の高校の同窓生に声をかけており、そのうち数名はすでに購入してしまっていました。
彼らも損失が出てしまっています。
「K君は自分に勧めた友人の責任を問いたい」「弁護士に相談したい」とのことだったので、厳しいだろうなあと思いつつも私の知り合いの弁護士さんに相談し、時間を作って頂いて三人で話し合いました。
しかし、「契約書は内容が難しかったから捨てた」というありさまでもあり、またそもそもでその友人を探すことも、まして法的責任を問うことも困難であるため、自己責任で親と返すしかない、ということになりました。
(2)S・Y君の事例
Y君は最も直近の事例です。
在校中から、とても真面目で向上心のある高校生でした。
しかし、つい先日、怪しげな「投資スクール」に入ったようで、その勧誘をしていると元クラスメートから私に連絡がありました。
さすがにそのクラスメートは怪しいと思っており、なんとかY君を止めてあげて欲しい、との相談でした。
そこで、本人とそのクラスメートを交えて三人で話をしたのですが、聞けば聞くほど「アウト」なことばかり出てきます。
例えば、契約書を見せてもらうと、契約書には「投資」のとの字も出てきません。
書いてあるのは、「健康食品が毎月送られてくる」という契約です。
その会社のHPも見ましたが、登記上もやはり「健康食品の販売」となっており、健康で人々を幸せにする、などと書いてあります。
さらに、彼が関わっているという社員さんのFacebookページもみましたが、ほとんど友達はおらず、投稿も広告的なもののシェアばかり。
明らかに怪しいのは一目瞭然…なはずなのですが、結局彼とは夜中の一時くらいまでオンラインで話し、次の日は知り合いの弁護士さんにも相談してやはり同意見だったためそれを伝えましたが、彼の耳には届きませんでした。
彼はもうその組織・社員さんを信じ切っており、いわば洗脳されている状態だったためです。
彼も20万ほどを振り込み済みとのことでした。
依然として他の同窓生に勧誘を続けていたようなので、私からは他の生徒たちにその手の勧誘に乗らないように連絡を回しつつ、まだいくつかの手段で対応を続けています。
(3)K・R君の事例
最後にご紹介する事例はK・R君という、県内有数の進学校から難関大学に進学していた生徒です。
彼の場合も投資の儲かる方法があり、それを自分でも20万円で買った上で、大学の自分のサークル内や高校時代の同窓生・部活の後輩などに勧誘していました。
そこで高校の私の教え子から「R先輩からしつこく連絡が来る。内容も怪しい」と連絡があり、私の知るところとなりました。
彼の場合、既に過去に所属しているサークルで勧誘活動を行っていたことが問題となり、そのような活動を行わないようにと厳重に注意されていました。
しかし、再度そのようなことを行ってしまい、結果的にそのサークルは追放処分となりました。
彼とは直接話しましたが信じ切っており、たまたまお母さんとは連絡先を交換していたため、直接お母さんに連絡し、なかば強引にやめさせる形となりました。
しかし、本人が消費者金融から借金をしてしまっていたのみならず、彼が勧誘してしまった人も同様に借金を抱えてしまい、その分も保護者と本人で返済していくことになりました。
電話していた間、お母さんはずっと泣いていました。
このケースでは、大学生・成人であるにもかかわらず、最後は結局親に強制されるまで脱退できない現実と、その結果彼が背負った代償の大きさがお分かりになるかと思います。
(彼はサークルは追放、勧誘していた高校の部活のOB会も除名、この歳で借金を背負い、母親を泣かせ、友人を失いました。)
2 怪しい大人・怪しい話の見分け方
ここまで私が関わったり耳にしたりした数多くある事例のほんの一部をお示ししましたが、皆さんがそのような目に合わないために、怪しい大人・怪しい話をどう見分けたらいいのか、簡単にできるチェック項目をいくつかお伝えしたいと思います。
①登記できないビジネスの時点で怪しい
そもそも、真っ当なビジネスをしているなら隠し立てなどする必要はありません。
登記できなかったり、看板を出せなかったりするのは、何か理由があるからと考えるのが自然でしょう。
②「絶対儲かる」「99%儲かる」ビジネスは(少なくとも私の知る限り)存在しない
そんなものがあったらみんなお金持ちになっています。
「絶対」などという言葉を安易に使うと大人は、一見「強そう」に見えるかもしれませんが、無責任と捉えるべきだと私は思います。
③Facebook上の友たちが少ない・友達は多いのに投稿に「いいね」が全然ついていないのはおかしい
それだけ儲かるビジネスをやっているのなら、ある程度友達=繋がりがある方が自然です。
にもかかわらずそれがないのは信用がないと思われます。
また「やけに友達は多いのに投稿に全然いいねがつかない」のは、「ダミーの友達」を数稼ぎに登録してる可能性が高く、やはり信用できません。
④マルチ商法・ネットワークビジネスは、無限に顧客を増やし続けられるわけがないため、破綻する可能性が高い
この手のビジネスに引っかかっている、またはひっかかりそうになって悩んでいる子たちがよく聞いてくるのが、「これは違法ですか?」という質問です。
冷静に考えてください。あなたの行動基準は「違法かどうか?」ですか?
そもそも、「このビジネスって違法かな?」と考えている時点で、真っ当な商売ではないと思いませんか?
その上で内容としても、「顧客が無限に増える」ことはない以上、そもそもこの手のビジネスはモデルとして破綻しています。
「違法と認定されていないから大丈夫」「うちは顧問弁護士がいるから平気」なのではなく、その発想の時点で真っ当なビジネスではないのです。
⑤「これをやれば絶対儲かる」などと「絶対」「真理」などの言葉を多用する大人、または「このままだと一生負け組」「資産運用していないと老後は生活できない」などと不安を煽る大人は怪しい
先にも述べたとおり、世の中には「絶対」などというものはそうそう存在しません。
かりに存在するとして、それを本当に証明するにはとても骨が折れます。
ましてやこれほどまでに変化の激しい時代において、私たち大人でさえ「正解」を持っていません。
だから、不安になるのは当然です。ましてや、大学生の皆さんはもっと不安でしょう。
得手して狙われるのは「意識高い系で人と違うことをしたり、お金を稼いだりしたいと思っているが、やりかたを知らず、だが成長意欲は高いために言われたことをどんどん吸収してしまう若者」です。
この手の「怪しい大人」はこのような若者の不安に漬け込み、向上心を利用し、食い物にします。
しかし、結果としてみなさんがいくらの損失を出そうが、人生が破綻しようが、彼らは何の責任も取ってはくれません。
3 では、どうしたらいいのか
ここまで暗い話が続きました。ですが、最後にもう一度だけ強調させてください。
楽して稼ぐ方法はありません。人生に正解はありません。そして、世の中に究極の真理もありません。
私たちはその中で、手探りしながら、地に足をつけて一歩ずつ歩んでいくことしかできません。
確かに「運がいいこと」も「運が悪いこと」もあります。前者だけ見たら、「大成功した人」がいるように見えるかもしれません。
しかし、「運がいいこと」はあっても「奇跡を自在に起こせる人」も「その方法」も、残念ながら今のところありません。
騙されている大学生の多くは、向上心は強く持っています。
ぜひ、そのエネルギーを誤った方向に、楽な道に、どうか使わないでください。
もし悩んだら、迷ったら、1人で決めず、ぜひ「複数の大人」に相談してみてください。
親、学校の先生、大学の教授、近所の人、誰でもいいです。ポイントは「複数の大人」であり「決して1人で決めない」ことです。
私たち大人も「正解」は持っていませんが、少なくとも「三人寄れば文殊の知恵」という言葉のとおり、「より確からしい答え」は導ける可能性が高いと思います。
最後に。私が思うに、いい大人とは「正解を与えてくれる人」ではなく「一緒に悩んでくれる人」だと思います。
あなたのそばに、本気であなたのことを考え、一緒に悩んでくれる大人はいますか?
ビジネスのためでも、自己のためでもなく、あなた自身のために本気になってくれる大人を、ぜひ大切にしてください。
そして、そんな存在をなるべく複数持ってください。
もし必要なら、いつでも私に連絡ください。FacebookでもLINEでもインスタでも構いません。
あるいは、「専門家」を頼ってください。もちろん、専門家がいつも正しい訳でも、いつもいい大人なわけでもありませんが、少なくとも「自称投資のプロ」や「自称ファナンシャルプランナー」よりは、弁護士や会計士など、「国家資格」を持っている人の方が、相対的には安心です。
ぜひ、周りの大学生にこの記事を、あるいは内容だけでも、拡散してください。
もし周りに、「怪しい大人」に捕まっている人がいたら、声をかけてあげてください。
綺麗な心と向上心を持った若者がこれ以上傷つくのを、私は絶対に許せません。
皆さんのお力添えをお願いします。
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