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13-コミュニケーションのデザイン(構造編)。少人数の場合。

「グループのカタチ、行動のカタチ、言葉の方向性」の3要素の組み合わせからバリエーションを作り、コミュニケーションの構造をいかに豊かにするか、という点を解説しているコミュニケーションのデザイン(構造編)。前回は大人数ワークショップの事例を元に、いかにテンポよくバラエティに富み、グルーヴを作っていくか、という視点であったが、では参加者が少人数の場合でのワークショップではどうしていくか、といったことを伝えていきたい。

・小人数ワークショップの場合(かつ動きの少ない講座系)

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旧来の講座や講義というのは上記のような「講師が一方通行的に喋り、受講生は座って聴いている」カタチであり、これからいかに脱するかが、アクティブラーニングやワークショップの課題であり特徴である。とは言え、学習系の講座は上記のカタチをベースにせざる得ないものであり、いかにこのカタチ以外を交えるかがポイントになる。

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例)WSD 切磋琢磨だ!学び直しの会(≧∀≦)

参加者数8人。ワークショップデザイナー育成プログラムを修了した人たちが有志で「学び直しの機会を」ということで企画されたもの。ワークショップのプログラムを考える際の基本のコツを伝えるため、プログラム構成は極力シンプルにした(部屋が狭い。必要以上に動き回らない。道具類をたくさん使わない。演出を控える)。

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<チェックイン>
丸一日のプログラムだったため、午前中は講師から何かを伝えることは全くなく、受講者の自己紹介や参加動機を語り合うことを中心に構成。「声を出す」→「身体と感受性を刺激する」→「対人スキル脳を発動する」と心身も段階的に使用している。

メリハリのポイントとしては身体も脳も感受性も開くことを目的としたため、

①アクティビティを「喋る、聴く」以外のフィジカルな要素(紙をくしゃくしゃにする)を取り入れたこと。
②参加動機自己紹介の段階で、一人が全員に喋った後、そのまま次の人にいくとテンポは平坦になるため、要約を混ぜてリズムやテンポに変化を持たせたこと。
③その要約も徐々に受講者にしてもらうことで、「聴く」を受動的な意識から、能動的に変えることで、脳のスイッチも変えたこと
④リレー形式で順に喋る際も、「右回り順」といった予測可能なものから「名前の50音順」というように一見でわからないものにすることで順番にもアクセントをつけたこと


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<講義&アクティビティ①>
午前中に受講者同士の語らいや学ぶ雰囲気が出来上がったため、講義を中心に学びの要素を強める。

ここでのメリハリのポイントとしては午前中は個々の発言や行動が全員に受容されているという「安心感」を作られたため、講義を聴くに加えて「全員で一つのことをやる」というフェーズに持っていくことである。

そのため、以下の2点をポイントを心がける。

①講義タイムでの「環境のデザイン」では、席替えや配置レイアウトの実験を全員でいろいろ試すことによって、フィジカルも使いながら実感をベースにした共有知を紡いだこと
②アクティビティでは、講義で伝えてきた「ワークショップをデザインするとは?」を踏まえて、今までの流れを振り返り分解することを全員で手がけ、共有知のみならず達成感も味わってもらったこと。

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<アクティビティ②とふりかえり(チェックアウト)>
アクティビティ①はワークショップデザインのHOWTOを体験学習であったため、アクティビティ②では今までの講師のふるまいが、ファシリテーションのHOWTOに紐づいていたことを合わせて解説する(適宜受講生からの感想や質問はきく)。ふりかえりは受講者一人一人の動機に対して、今日の時間がどのような接点があったかを問いかけ、考え直す機会と今後の課題を各々で見つけられることを狙う

ここでのポイントは

①アクティビティ②の講義に挟む双方向性のやり取りは(暗に)「今日のふりかえり」になるよう心がける。
②長丁場のワークショップのふりかえりでは、ワークショップの非日常感あるコミュニケーションを解除する必要があるため、ゆったりと車座でフリートークにし、普段の対話や雑談に近しい雰囲気で進める。

・コツ①言葉の方向を変える

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まずは「講師から受講生」という言葉の一方通行なベクトルを変えることだ。「講師ではなく受講生から」といった語る側を変える工夫や、喋った後に要約や質疑応答を入れたりと「対話」の要素を入れてテンポに変化を入れるといったことだ。

・コツ②行動のカタチを変える

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次に「ただ座って聞いているだけ」な状態を変化させること。一人一人に意見を聞いていく際の順番を50音順といったように少し頭を働かせるものにしていたり、会場レイアウトやアクティビティで全員で何かを成し遂げる、という類を混ぜて構成する。

・まとめ

少人数のワークショップでできるプログラムが限定される中でも、「言葉の方向性」「行動のカタチ」のバリエーションに趣向を凝らすことで、飽きのこない構成はできることが伝わっただろうか。少人数ではフィジカルを用いたグルーヴ感を作るのは難しい。その代わり、思考の使い方もパターンの一つとして用い、学びや気づきが深めることにはできることが特徴であろう。

参加人数の大小別に「グループのカタチ、行動のカタチ、言葉の方向性」といったことを組み合わせ、どれだけ豊かにバリエーションを持ったふくらみのあるコミュニケーションを生んでいくかといった「コミュニケーションの構造」について言及してきた。

起点となる関係のデザイン、コミュニケーションを促進させる環境のデザイン、バリエーションを持ったふくらみあるコミュニケーションをつくる構造のデザイン、と説明してきたが、次回はワークショップの目的に応じたコミュニケーションを生むツールや手法を効果的に取り入れて考える「方法のデザイン」へ言及していこうと思う。

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