FA-05_WSの特徴_

05-ワークショップの特徴

私はワークショップを「共振・共鳴する場、わかちあう場」と定義づけているが、実際にプログラムを設計していく立場として、もう少し具体的な特徴を6点に絞り、今回は述べたい。

と言っても、中野民生氏の「講義など一方的な知識伝達のスタイルではなく、参加者が自ら参加・体験して共同で何かを学びあったり創り出したりする学びと創造のスタイル」(『ワークショップ』岩波新書 11頁)という定義づけからさほど変わらないのは重々承知であるが、実践者として自分の言葉に置き換える、という作業は大切にしているので、このまま筆を進める。

特徴①一方通行的な知や技術の伝達ではありません。

まず「一方通行」ではない、ということ。言い換えるなら「教える」場ではない、ということだ。先生役がいないと考えても良い。もちろん、今の日本の現状で人前に立つ以上、”講師”や”先生”として「教える」役回りを期待されるのは否定できない。ただ極力、一方通行な時間は減らすようにする。もしくは一方通行な講義を求められていたとしても、双方向なコミュニケーションがうまれるようには配慮したい。

特徴②答えがあるわけではありません。

「教える」先生役がいないため、いわゆる「答え」がない。もう少し噛み砕いて言うと「あらかじめ決まった答えはない」。この”あらかじめ決まった”というところを特に大切にしたい。これはワークショップにおいて最も気をつけておきたい心構え「決められた結論に誘導しない」ということに通じる。

特徴③多様性を認めます。

あらかじめ決まった答えがないのだから、多様性を認める、というのは必然のこと。ただ「多様性」は言葉では一言で済ませられるのだけど、これは中々どうして難しい。「多様性の幅をどれくらい許容するか(広げられるか)」はファシリテーターの器量が問われる部分だし、「多様性」をどんな風に多様かをそれぞれ言語化して違いを他の参加者に伝えなければいけない目と口の良さも求められる。(「みなさん、それぞれに違いますね〜」というまとめは、多様性の皮をかぶった画一性である、とも厳しく言っておきたい)

特徴④参加者が自ら参加・体験した「実感」を大切にします。

ただただ「教えない、答えがない、多様である」としたら、集まる意味はない。何らかの学びや創り出すことが求められる中で、「教えない、答えがない、多様である」状況だから難しいのだ。その中で唯一信じられることは、参加者個々がその時間をどう過ごし何を感じたかという「実感」しかない。そこを顕在化していくことで、その場にいる参加者だから見つけることができた「答え」が創られる。

特徴⑤グループの相互作用の中で学びあったり創り出したりします。

そのため、ワークショップは参加者同士の言語・非言語問わずコミュニケーションが重要になってくる。互いの関わりあいによって、個々に変化が生まれ、誰のものでもない(誰のものでもある)一つのモノ・コトがうまれてくる。ワークショップをデザインする初心者で陥りがちなのは、ファシリテーターと受講者の関わりあいには気は配れるが、受講者同士の関わりあいに対して、気が回せていないことだ。

特徴⑥安心・安全な場づくりを心がけます。

最後はワークショップを手がける際の鉄板用語と言っても過言ではない「安心・安全」。これは心身ともに「安心・安全」であるということ。ワークショップは親密性が高くなるので、個々の情報が見えやすくなる。時としてナイーヴな情報を得られることもある。もし、そのようなワークショップを手がける際は、参加者に「今日知った相手の情報を他所で言わないように」と個人情報の保護に関して伝えておくこともそうだし、「時間通り始まり、時間通りに終わる」であったり、ワークショップ前に今日がどんな目的か、どんな流れで進むか、といった「見通し」をつけてやることも「安心・安全な場づくり」というモットーに準じた工夫となる。ただし、過剰な「安心・安全」への配慮は、ワークショップの醍醐味を損なう場合もある。そのあたりは、主催する側が、このモットーを理解した上で、目的や参加者の性質に応じてチューニングを変えていくことが求められる。安心・安全な場というのは「こうすれば安心・安全」というものではなく、参加者の不安感や緊張感をどれくらい払拭するか、ということでもある。

まとめ

①一方通行的な知や技術の伝達ではありません。
②答えがあるわけではありません。
③多様性を認めます。
④参加者が自ら参加・体験した「実感」を大切にします。
⑤グループの相互作用の中で学びあったり創り出したりします。
⑥安心・安全な場づくりを心がけます。

以上がワークショップの特徴である。細々としたワークショップデザインの工夫や配慮も大切だが、参加者同士が共鳴・共振していくための着眼点としてこの6つの特徴を意識しているだけでも随分パフォーマンスは変わる。それでは次回はこういった点に配慮されたワークショッププログラムを進行するファシリテーターの心構えに触れていこうと思う。




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