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身体と数字: 「2の世界」と「3の世界」

「10」という数は扱いづらい。
2のべき乗数じゃないからだ。

身体は、基本的には1、そして2のべき乗数が馴染みやすい。
太極拳的に言えば「太極→両儀→四象→八卦」と展開するので、これに沿っていたほうが身体に馴染む。

体育やスポーツでも「1,2,3,4,5,6,7,8。2,2,3,4,5,6,7,8」と数を数えることが多い。

スクワットでも正拳突きでも、「8」で折り返すのと「10」で折り返すのを比べれば、「8」で折り返したほうがやりやすい。

人間社会で十進法が定着したのは指が10本だからだが、これも「親指」と「人差指〜小指」を別物として捉えれば「8+2」となる。
さらに「第六の指」である豆状骨を入れれば「8+4」になる。

日本の伝統的な履き物は「足の親指」と「他4本」で分ける。
また英語でも、親指は「thumb」と呼ばれ、「finger」とは区別される。

コンピュータも二進法を基軸としており、2のべき乗数によって動いている。

ただ、2のべき乗数以外でも武術で重要となる数字がある。
「3」だ。

「2」が生じたとき、その「1」と「1」の間に「中点」を見出すことができる。
これによって「3」が生じる。

つまり、「3」は「分割」によって生じ、2のべき乗数とは性質を異にする。

「3」という数は「裏」「逆」「反」「転」と関係が強い。

拍子と拍子の間に拍子を割り込ませると「裏拍子」になる。
また「仏の顔も三度まで」「三度目の正直」など、「3」は状況転換が起こる数字でもある。
同じ動作でも、3回繰り返すと事態が変わることがある。

「2の世界」の中に「3」を割り入れると、「2の世界」は対応できない。
ただし、「3」は安定と不安定の際どい境界にあり、扱いが難しい。

形意拳は「三体式」の名でもわかる通り、「3」を根本に据えた流派である。
形意拳が難しいと言われる理由はこのあたりにある。

同じ内家拳と言われる太極拳や八卦掌は「2の世界」の流派だ。

形意拳と八卦掌はお互いによく交流し、お互いを研究してきた。
相補的な関係にある故であろう。

まあ武術に限らず、およそ身体を動かす際には、こうしたことを念頭に置いておいて損はない。
「1,2,3,4,5,6,7,8,9,10!」と数えてスクワットをやることを避けるだけでも、より効果的な練習ができるだろう。

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