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途上国の森林保護と地域住民の生計向上

以前に在職していた住友林業では、東京からの出張ベースと現地駐在も合わせて約5年間ほど、東南アジアでの環境保護活動を担当しました。
東南アジアでは、地元住民の無計画な農林業による森林破壊が多く、持続的な方法で地元経済を回すことが非常に重要です。
こうした活動の中で、私が影響を受けた方に、ベトナム・ハノイでコーヒーショップを経営しているフォンさんという方がいます。
彼はコーヒー栽培を通じて農家に賢く生きる方法論を伝えています。

賢く生きる方法①:商品の差別化

ロブスタ種(缶コーヒーに使われる)がほとんどのベトナムですが、アラビカ種(美味しいが栽培難易度は高い)の栽培適地では栽培技術の指導をしています。自分の農地が栽培適地であっても、栽培適地である事自体を知らない農家は多く、いわんや栽培技術をやです。

賢く生きる方法②:マーケットの選択

ベトナムのコーヒービジネスは海外輸出向けが主流です。
厳しく選別された良品は日本等へ輸出され、選別ではじかれた豆が国内で流通します。フォンさんはベトナム国内市場に準良品クラスのコーヒー豆を流通させれば競合が少ないとみて、その販路を自ら担っています。

賢く生きる方法③:できることを増やす

コーヒーが口に入るまでには、精製や焙煎といったいくつかの工程があります。小規模であっても、農家がある程度、各工程の加工を自分で担えるように指導しています。

賢く生きる方法④:情報交換をする

なるべく自分で加工度を上げた方が利益を取れると考えがちですが、実は違います。各工程には設備の稼働率を重視する専門業者が存在するため、場合によって果実のまま専門業者へ販売した方が利益が大きいケースすらあります。このため、各農家が横の繋がりを持ち「どこまで加工してどのエリアの誰に売れば一番有利か」の情報交換をするネットワークを持つことも重要です。

住友林業でのプロジェクトでは、フォンさんとコーヒー有機栽培を通じた生計向上をはかり、当該地域の過度な焼畑農業を抑制し、水源涵養林を取り戻そうとしました。
Google Earthを見る限り、まだまだ焼畑農業は続いているようですが、一方で現地産のコーヒー豆販売も続いていますし(http://oriberry.com/muong-phang-shade-grown-arabica)現地政府の努力も続くと思います。20~30年もあとには、水源涵養林が育っているのかも知れませんし、てんでダメなのかも知れません。
そのころには私の子供も成人しているでしょうし、ゆっくりと、答え合わせに訪問するのを楽しみにしています。

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