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共感と生きる

読んでいた連載が終了した。
Googleのおすすめページに突如表示されたのがきっかけ(たぶん検索ワードに入れてたんだろうな)で、時たま更新されると読んでいた。

筆者は、私と同世代。テーマは「共感にあらがえ」。
紛争解決という、私には想像できないような課題と向き合っているはずなのに、自分の言語化できていないもやもやも解き明かされるような、でも自分で考える余地を残しているような連載だった。
筆者の、真摯に問題に向き合うゆえの危うさみたいなものを時折感じながらも、対談を通して柔軟に視野を広げていく姿勢が印象的だった。

それにしても、こういうのって、しかるべきタイミングで現れるから不思議だなあ。
今回も記事の投稿から数日経っておすすめページに現れた。
第一回からさかのぼって読んでみて、また気づくことがあったのでこちらに書いてみることにした。


コロナ禍くらいだろうか?
「共感」にネガティブな感情を抱く自分に気づいた。
SNSやニュースなど幅広い対象に共感しすぎて(ときには共感を求めすぎて)疲れるなあと思うことが増えた。
多分これは「共感しすぎた」、だけじゃなくて、「共感し、相手の求めるものに応じなければならないという思い込み」もあったのだと思う。

SNSは個人の意見がダイレクトに発信され、強い言葉で端的に書けば書くほど伝わりやすい。
それから対話も十分にできない(目にした投稿すべてに丁寧に向き合わないとという思い込みもあるけど)状況で、なんとリアクションをしたらいいのだろうと考え込んでしまった。
よく考えればわかるのだけど、自分が発信するときは「ちょっとわかってくれる人がいればいいかな」「言いたいだけです」くらいなので、ほかの人もそういう投稿があったのだろうな。

ニュースの場合は、正しい情報や必要な情報を伝えることよりも、共感を武器にしている印象を受けてしまった。
品薄になったトイレットペーパーの棚の映像を流したり、謝罪会見の一部を誤解を招くような形でタイトルにして抜き出したりバッシングを加速させたり…

もともと「共感」という言葉を意識するようになったのは、看護学生の頃。
「患者さんと援助的関係を築くために、共感を示すことが必要です」
というような、手段としての「共感」だった。
「患者さんの痛みや苦しみは体験できないけど、それを感じている患者さんを受け止める」というような意味合いで使われていた。
「わかるよ」というような言葉ではなく、そっとさすったり、何か話したそうなタイミングで手をとめて視線を向けたりするような。

その後、気づけば「共感の時代」と言われるように、SNSの流行(これは高校生くらいのころから始まっていたけど)やクラウドファンディングなど、共感による仕組みは身近なものになっていった。
私が記憶する限りでは、ドラマや漫画の主人公も等身大を意識したものが増えていったように思う。

共感してもらえるって嬉しい。
共感できるって嬉しい。
共感から勇気をもらうことは多い。

現在の自分の行動を振り返ってもそう。
職場を含む、所属する団体やグループでも、共感で結びついたものが多い。
そこでクラファンをしたり、SNSのアカウントを作成したり。
応援したりフォローすることもある。
もちろん、これは手段としての共感。
共感を利用することで、より力を集結させて、これまで届かなかったものにスポットを当てることができる。

ただ自分に限ったことで言えば、共感が目的になってしまっている部分や危うさに気づいていない部分がある。
前置きが長くなったけど、それが今回の気づき。


共感100%で生きることって、最初は楽しいかもしれないけど危ういし寂しいことだと思う。
自分と似た価値観の人ばかりを求めていては、少しの対立で排除が始まり、人を傷つけ、最終的には孤立してしまう。

大事なのは、共感は人と人の関係性の最初の一歩であり、手段であるからポジティブ(その目的にもよるけれど)なのであって、それを目的としてしまうと、暴走する可能性があるということ。
共感を受け取る場合も、その先のことは自分で一度考えるほうがいい。
共感できないことも認めていい。相手を尊重しないこととイコールにはならない。

多様性が尊重される社会であってほしい。
そう思いながら共感できないことがある自分をちょっと責めていたのかもしれない。
ネガティブに感じていたのは「共感」ではなくて、自分に対してだったのかもしれない。

これからも、共感は切っても切り離せない。
疲れてしまうこともあるかもしれない。でも、ちゃんと認めていこう。

最後に、連載で対談されていた臨床心理士・東畑開人さんの言葉を引用して
自分に言い聞かせたいと思う。

「不快な共感」は「深い共感」への入り口です。
「共感」とは、お互いに傷つけ合うなかで、それでも相手を理解していくタフな営みだと思います。


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