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僕が音楽を志した理由。#5 80年代のHR,HMの世界へようこそ

 中学生時代の後半1982年頃から、社会人になる90年ぐらいまで、僕はハードロック、ヘヴィメタルが大好きだった。
 きっかけは、#2にも書いたが、エレキギターを弾きはじめて、伊藤銀次さんのギター教本で、このジャンルに出会ったからだ。

 80年代、ロックギターを志す少年の最初のお手本は、"Deep Purple""Smoke on the Water""Highway Star"だ。
 どうして、この2曲がお手本かというと、どちらもシンプルなギターコードの演奏なのに、曲がカッコイイのだ。リフをコピーするだけなら、初心者にもできる。なにせ、押さえる弦の本数も少ないし、これならできると、思わせてしまうぐらいの難易度なのだ。

 ハードロックやヘヴィメタルの曲には、シンプルなギターリフなのにカッコイイ曲が沢山ある。一曲覚えると、次々と弾きたくなってしまうのである。それの繰り返しで、僕のギターは上達していった。

 "Deep Purple"は、1976年に一度解散して、1980年代では伝説のバンドになっていた、このバンドを抜けた人気ギターリスト"リッチー・ブラックモア"は、70年代の終わりに"Rainbow"を結成して、活動していた。

 "Rainbow"をはじめとして、80年代になると、"様式美"と呼ばれる、ボーカル、ギター、ベース、ドラム、(キーボード)と言った編成の4人(5人)のハードロックやヘビーメタルバンドが、次から次へと現れてきた。バンドは脱退、結成を繰り返し、その都度、まだ無名の新人ギターリスト、ボーカリストが発掘されて、一夜にしてスターが生まれたりもした。

Rainbow - Kill The King (Live in Munich 1977)

 "Deep Purple" から派生した"Rainbow"、その"Rainbow"を辞めたボーカリスト、"ロニージェイムス・デュオ"は、"Dio"を、"グラハム・ボネット"は、"ALCATRAZZ"というバンドをつくる。

 "Dio"には、"ヴィヴィアン・キャンベル"、そして、"ALCATRAZZ"には、"イングヴェイ・マルムスティーン""スティーブ・ヴァイ"という超絶技巧のギターリストが、それぞれ誕生した。

Dio - We Rock (Official Music Video)

Alcatrazz(Yngwie Malmsteen) - Live Jet To Jet

  "イングヴェイ・マルムスティーン"は、超早弾きギターリストとして、評価が高かった。雑誌の特集でも"最も早弾きのギターリストは誰か?"などには必ず名前が挙がる人だった。イングヴェイは、その実力以上に傲慢だという悪評が立ち、突如"Alcatrazz"を脱退した。イングヴェイが、その直後にリリースした"Rising Force"というギターインストのアルバムは素晴らしかった。

 "Alcatrazz"の、誰が次のギターリストになるのか、僕は「後任のギタリストはイングヴェイを超えられるのか?」と、"Guitar Magazine"等を読みながら、その報告をドキドキして待っていた。
 そこに登場したのが、超絶技巧のギターリスト、"スティーブ・ヴァイ"だった。彼の演奏は、それまでのロックギタリストのモノとは明らかに異なっていて、トリッキーなのに正確な演奏、個性も強かった。
 彼の加入後にリリースされた、"DISTURBING THE PEACE" は、ヘヴィメタルという枠組みを大きく広げる作品にだった。
 ギターがうまいだけではなく、その後のこのジャンル寿命を大きく伸ばしたのも、彼の功績は大きいと思う。1985年のリリースだ。

Alcatrazz - God Blessed Video (1985)

話は少し戻り。

 1984年には"Van Halen""Jump"が大ヒットして、一躍時の人となった。Van Halenのギタリスト"エディ・ヴァン・ヘレン"は、右手をフレットにタッピングして演奏する"ライトハンド奏法"と呼ばれる演奏で、当時トップギタリストに名前を連ねていた。ちなみにマイケルジャクソンの"Beat it"のギターソロの演奏などでも有名である。

 "Jump"のイントロのシンセサイザーのリフは、楽器屋さんのキーボードコーナーに行くと必ず誰か弾いていた。

Van Halen - Jump (Official Music Video)

 このバンドのフロントマン、個性的なボーカリストの"デイヴィット・リー・ロス"は、"JUMP"のヒットの後、カバー曲を集めてソロアルバムを出すのだが、それが大ヒット、他のメンバーとケンカして、あっさり"Van Halen"を脱退してしまう。

 そこで、"Van Halen"は、"デイヴィット・リー・ロス"の代わりに、ソロのロック歌手としてすでに活躍していた、"サミーヘイガー"を連れてくる。一見、全く違うタイプのボーカリストを連れてきて、大丈夫なのかとも思ったが、、、。

 前作に劣らぬ大ヒットを飛ばす。

Van Halen - Why Can't This Be Love (1986) (Music Video)

  一方、"デイヴィット・リー・ロス"は、先の"Alcatrazz"で大活躍した"スティーブヴァイ"を、自分のバンドにスカウトし、さらに早弾きのベーシストとして有名だった、"ビリーシーン"を連れてきて、スーパーバンドを結成する。

David Lee Roth - Yankee Rose Official Video

 "Van Halen""David Lee Roth"、当時はバチバチやっていたが、2012年によりを戻して、アルバムを発表している。
 この時代の、ヘヴィメタルバンドの情報源は、ほとんどが雑誌かラジオからしかないのだが、このバチバチやり合っている様は、毎月のように報告されて、次にどんな音源が上がってくるのか、わくわくしながら、心待ちにしていた。

 1984年は話題が多く、解散した伝説のバンドである、"Deep Purple"が、再結成を果たし、なんとオリジナルアルバムを発表した。ギターキッズにとったら、あの"Smoke on the Water"を演奏したバンドがオリジナルメンバーで再結成するのだから、大事件だった。僕も発売日にレコードを買いに言ったのを覚えている。

Deep Purple - Knocking at Your Back Door (Perfect Strangers)

 さらに1980年代には、他にも"N.W.O.B.H.M"(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル、New Wave Of British Heavy Metal)と言われるヘヴィメタルのムーブメントがあって、"IRON MAIDEN"や"DEF LEPPARD"というバンドが人気があったり。

Def Leppard - Photograph

  またアメリカでも、西海岸を中心に、"LAメタル"呼ばれる、アイドルばりのルックスを持ったグループ、"RATT""Mötley Crüe"といったバンドに人気が集まった。モトリークルーの自伝的映画"ダート"が、Netflixでみれる。当時の時代背景が良くわかるので面白い。

Ratt - You're In Love

 他にも、"ブラックサバス"を辞めた、"オジー・オズボーン"、そのバンドの、ギターリスト"ランディ・ローズ”"ジェイク・E・リー”の話や、北欧メタル、特に、"The Final Countdown"で、全世界的に大ヒットした、スウェーデンのグループ"Europe"など、兎に角ハードロック、ヘヴィメタル界のバンドの話は尽きない。1980年代中盤のこのジャンルは本当に面白かった。

Europe - The Final Countdown

 今見ると、どのバンドも大体ルックスがいい。そして、ヘヴィメタルと言いつつも、今聞けば、キャッチーでポップに聞こえてしまう。この時代のアイドルだったことがわかる。

 80年代も終わりの頃になると、"様式美"のハードロック、ヘヴィメタルは、そのジャンルに新規性を見いだせずに、停滞気味になっていた。
 徐々に新しさを感じなくなると、僕の興味も薄らいでいった。

 話をデイヴィッド・リー・ロスのバンドに戻す。

 "スティーブ・ヴァイ"は、二枚のアルバムに参加後で"デイヴィッド・リー・ロス"の元を離れ、これまた、"Deep Purple"から派生したバンド、"White Snake"の助っ人ギターリストとして移籍する。その後はソロで活躍するようになる。

 さらに、ベースの"ビリーシーン"は、新たなバンド"Mr.Big"を結成する。この時、"Racer X"、から連れてきたギターリスト"ポール・ギルバート"は、それまでのヘヴィメタルのギタリストとは違う、新世代の超絶技巧のギタリストだった。
 何より、"Mr.Big"は、曲が良くて、テクニックがあって、すぐに人気のグループになっていった。

Mr. Big - Daddy, Brother, Lover, Little Boy

 だいぶ駆け足で、色々端折っているのだが、"Mr.Big"が僕の中のヘヴィメタブームの最後のバンドだった。このバンドはテクニックと高い音楽性と、さらにルックスを備えていたバンドだったように思う。

 ここまであくまでも、僕が見てきた80年代のロック史なので、誤解しないで欲しい。"Queen""KISS""Aerosmith""AC/DC" など、他にも人気のあったロックバンドの話は、すっぽり抜けている。特に海外よりも日本の方が、このジャンルに熱かったようだ。

 ちなみに、最も好きなロックバンドは?といわれると"Led Zeppelin"で、アルバムは全て持っている。
 1985年に"Live Aid"で再結成ライブが行われた時は興奮した。3年後の1988年のアトランティックレコードの40周年でも再結成され、本格的な活動再開も何度も噂されたので、非常に熱かった。

Led Zeppelin - Atlantic 40th Anniversary

 結局、本格的な再結成での活動は無かったのだが、メンバー個々には様々なスタイルで音楽活動をしていた、特に僕はボーカルの"Robert Plant"が好きで、80年代の、独特の彼のロックミクスチャの音楽が好きだった。

Robert Plant | 'Heaven Knows' | 

 その後も、彼は様々に音楽スタイルを変えながら、現在でも活躍中である。中々来日してくれないのだが、数年前のサマーソニックで、初めて彼のステージを見ることができた。10代から追いかけていた人のステージは感動だった。

 さて、好きなギターリストは?と言われると、"Jeff Beck"になる。"Jeff Beck"もヤードバーズ時代から音源は集めている。おそらく、コンサートに行った回数も様々なアーティストの中で、"Jeff Beck"が最も多く、一番最初は高校3年生の時だったと思うのだが、来日される度に可能な限り、彼のコンサートには通った。中でも印象的なのは1999年のこのライブである。

Jeff Beck - Tokyo Full Concert (1999)

 "Jeff Beck"は今も現役で元気に活躍しているが、1960年代から常に新しいサウンドを取り入れて、ずっとわくわくさせ続けてくれた。
 時代によって、その音楽のスタイルを、様々に変えている、このライブ映像は、テクノサウンドをバンドに取り入れた時代の物だ。

 僕がミュージシャンとして、特に尊敬するのは、最後に名前を挙げた二人"Robert Plant"と"Jeff Beck"、なのだが、理由はわかっていただけるだろうか。

 60代、70代を超えてもまだ、新しい音楽に興味を持ち続け、そして自分なりの解釈でそれを取り入れていこうとする姿が素晴らしいと思っている。

 僕が音楽家として、最も学びたい側面だ。

 できるだけ完結にしたかったのだが、言いたいことを書いたらやはり長くなってしまいました。80年代のロックはとても面白かった。それは今僕が夢中になっている、今のK-POPのジャンルと似ている。

 次から次へと生まれる、同じような編成のバンド、似た様なコンセプト、しかし、真剣勝負の楽曲勝負の世界、奇抜さやアイディアだけでは勝てない。そして、見ている方の温度は非常に高い。 

ここまで読んで頂いた方、本当にありがとうございます。

つづく

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