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美容室の開業 奥様の通帳残高は自己資金になるのか?

 創業融資の面談で必ず聞かれることが、家族構成についてです。結婚している場合は、配偶者がどんな仕事をしてきたのか、働いている場合はどれくらいの年収なのか、が確認されます。確認される目的はいくつかあるのですが、その目的の1つに万が一があった時にどれくらいの資金の手当てが可能かのかも含まれているようです。今回は、配偶者の通帳残高の存在が融資決定に大きく影響を与えたお話です。

〇自己資金を貯める期間が短かった
 開業予定の方は男性で、結婚をしており、二人のお子さんがいる方でした。今は賃貸住宅に住んでいますが、子供が小学校に入る時には住宅を買いたい、それを見越してそろそろ独立を、と考えている方でした。奥様は看護師で病院勤務。共働きで子育てをされている状態でした。
 もともと独立する考えは無かったようですが、将来を考えた時に、今のお店でずっといていいのか、子供の入学する時に住宅ローンは組めるようになるのか、漠然とした不安の中で開業を考えるようになったようです。それほど独立を意識していなかったこともあり、将来の独立のための備えとしての貯金はあまりなく、自分名義の貯金をかき集めても100万円ほど。お店の退職金ももらえるようでしたが、お店をやめた後の数十万円程度の状態でした。

〇自己資金が少なく、融資が難しそう、と懸念されていた。
 ご自身で融資申請をされていました。最初に融資担当者から言われたのが、自己資金要件を満たさないかもしれません、という指摘。自己資金要件というのは、借りる予定の金額の10分の1以上の資金を自己資金として準備していないと融資が受けられないというもの。かき集めての100万円でしたから、コツコツと通帳に貯めたお金ではなかったこともマイナス評価の要因だったようです。
 開業相談で私にお問合せを頂き、いろいろとお話をお聞きしました。すぐに答えが出ました。融資は問題ありません、と。

〇お金が借りられるかどうかは独立において重要ではない
 立地の診断をさせて頂き、出店予定の場所は駐車場もしっかりと確保され、道路からも分かりやすく、必要なセット面の台数も置ける広さで、家賃も予算の範囲内。立地もOKで、適正規模もOKでしたので、再び、融資申請にチャレンジしました。
 融資が問題ないと判断した理由は、奥様の預金通帳の存在でした。奥様は看護師として年収400万円ほどあり、ご自身のため、家族のためにコツコツとお金を貯金していました。もちろん、このお金はお店のためではありません。将来の家族のためのお金です。

〇奥様の通帳は自己資金になるのか?
 もちろん、自己資金とはなりません。そもそも、奥様のお金、もしくは家族のお金であって、美容室の開業に使うべきお金ではありません。明確に分けるべきです。ほとんどの場合、使わせてももらえないと思いますが。それが正解です。
 自己資金とはなりませんが、世帯で考えた時にご主人がサロンで働いた給料の内、生活費として奥様に渡して奥様が家計のやりくりをされていました。その中で、コツコツと貯めたお金と奥様ご自身が働いて貯金してきたお金が通帳にあるわけです。自己資金ではないのですが、コツコツと貯めてきたという事実は変わりません。この事実が大事なのです。

〇絶対に使ってはいけないお金だけど、融資の時だけ当てにしていいお金
 融資申請のご支援をさせて頂く時は、家族名義の預貯金はすべて確認させてもらいます。創業融資申請であてにできるお金はいくらで、絶対に使ってはいけないお金がいくらあるのか、を確認します。
 その上で、開業のために貯めてきた自己資金と創業融資として借りられる金額を上限にそれぞれの予算を立てます。
 内装をもう少しお金をかけたい、シャンプー台をいいやつにしたい、と思っては使ってはダメです。どうしてもというなら奥様に相談してください、と言って奥様に止めてもらうようにしています。

〇おわりに
 自分の独立なので、自分でお金をコツコツと貯めるのは当然ですが、生活費として将来のために貯めてきたお金もお店のためでなかったとしても、コツコツと貯めたお金です。自分の通帳に貯めていなくても、奥様の通帳に貯金されていた場合は、そのお金もちゃんと評価してくれるのです。もちろん、奥様ご自身が働いて貯めてきたお金も自己資金ではありませんが、コツコツと貯めたお金として評価されます。自己資金とはなりませんが、家族全員の通帳でコツコツと貯めてきたお金が無いかを確認されると良いです。ただし、絶対に使ってはダメですよ。

美容室専門税理士 中嶋 政雄

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