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美容室の開業 身内からのお金は自己資金として認められるのか?

2-1-7 美容室の創業融資 自己資金

美容室専門税理士の中嶋です。
美容室開業で知っておきたい知識をノートでまとめて配信しています。
一定記事までまとまりましたら一部有料化を予定しております。
今回のテーマは、「身内からのお金は自己資金として認められるのか?」です。

創業融資を申請する時に、「自己資金」がいくらあるかはとても重要なテーマです。日本政策金融公庫で創業融資を受ける人は「自己資金要件」をクリアーしていることが融資申請の最低条件にもなります。その意味でも、自己資金を出来るだけ多く見せたいとするのはだれしも考えることです。

〇自己資金は多い方が良い?
 美容室を開業する時に自己資金の金額が多ければ多いほど、余裕を持った開業をすることが出来ます。ただし、自己資金がたくさんあるからと言って、創業融資で借りる金額を少なくすれば開業で使えるお金の総額は変わりません。また、創業融資は最初に少なめに借りたからと言って、その後にお金が借りられる、という保証はありません。借りられるときに借りておかないと使えるお金に限りがありますので、経営が有利になるということはありません。また、自己資金がたくさんあるからといって、高額な内装工事、高額な美容機材にお金を使ってしまっては、こちらも経営が有利となることはありません。高額な内装、美容機材で集客できるほど簡単ではないからです。自己資金には、創業融資を借りるために必要なお金として、また、開業した後の余裕資金としてのお金の2つの役割があります。

〇身内からのお金とは?
 2つのパターンがあります。1つは、自分で貯めた自己資金が少ないので、親兄弟からお金を借りるパターンです。もう1つは、親兄弟がわが子、身内の独立のために返さなくてよいお金として渡してくれるお金のことを指します。もちろん、お金を受け取った側では、ありがたく受け取る場合もあれば、返すつもりで受け取る場合もあります。
 
〇金融機関は身内からのお金をどう見ているのか?
 お金に色は付いていません。このお金は親に返す必要のあるお金なのか、返さなくて良い貰ったお金なのか、は判断が付きません。身内からのお金であることが分かれば、貰ったお金なのか、返す必要のあるお金なのかは、それほど重要視はされません。もちろん、しっかりと金銭消費貸借契約書を作り、返済計画表まで作っている場合には借りたお金として認識されますが、そこまで準備している人は現実的には少ないです。また、いつか返すお金であっても、いつ返すかは明確ではない場合は、実質的に貰ったお金であると認識されます。そのため、貰ったお金でなく、いつか返す必要のあるお金であったとしても、金融機関からは肯定的な材料として見られます。

〇身内からのお金を自己資金とするために
 両親から貰ったお金だとしましょう。この場合には、ご両親の通帳から、自分の通帳にお金を移してください。通帳にお金を渡した人の名義が残るようにお金を移してください。いきなり現金だけが入金されると、本当に身内からのお金なのか、返さなくても良いお金なのか、の判断が出来ません。最も確実なのは、「贈与契約書」を作成することです。贈与というのは、お金を渡す方が「お金をあげる」と意思表示して、お金を受け取る方が「お金をもらう」と意思表示して初めて「贈与」が成立します。この関係をしっかりと契約書の形で残しておくと説得力が増します。
 ちなみに、お金を受け取る方が「お金は借りたものなので返します」と意思表示していたら、「贈与」は成立しません。ただ、「ある時払いの催促なし」のような状態は実質的に「贈与」があったものと税務上は判断されます。これは税務の判断の話なので、融資の場面においては、贈与の事実を証明するためには、贈与契約書の作成か、親の通帳から自分の通帳に記録が残るように振込をすることが望ましいです。

〇金融機関が危惧していることは?
 親からの貰ったお金、親から借りたお金とは言え、親がそのお金をどうやって準備したのかも融資の判断では重要となります。
 わが子の独立に際し、自己資金が少ないと相談された。何とか独立を応援してあげたいが、自分もお金の余裕がない。でも、100万くらいなら、どこかでお金を借りることは出来る。融資の時だけの一時的なお金であれば、なんとか準備する、なんてことがあっては困るわけです。いわゆる「見せ金」です。親からの贈与、借入が健全なものであるかを判断するために、両親の仕事の状況、勤務先の名前、自宅が持ち家かどうか、を確認されます。身内からのお金を自己資金に含める場合は、ご両親が資金的に問題がないかどうかも確認されることを知っておいてください。

〇おわりに
 金融機関が見ている自己資金というのは「開業に向けてコツコツ貯めてきたお金」です。自己資金が少ないからといって、ご両親からお金のサポートを受けたとしても、そのお金は金融機関が必要としている「自己資金」とはならないということを知っておいてください。ただ、幸いなことに、ご両親からの資金的な援助が受けられるのであれば、それは受けておいてください。将来的に返済するのももちろん良いと思います。むしろ、数年後にしっかりと利益を出して、ご両親のためにお金を渡してあげるくらいが良いかと思います。ご両親からの支援金は、自己資金を多み見せるために使うのではなく、100%大丈夫なんてことはあり得ない経営の世界で、万が一、スタッフに給与が払えなくなるような状況になった時、生活が苦しくなるような状況になった時の万が一のお金としてありがたく残しておくことをお薦めします。本当に苦しくなった時に頼れるのは身内だけです。

ではまた。

美容室専門税理士 中嶋 政雄
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