美容室の開業 お金が返せない場合はどうしたら？
創業融資を受ける時の一番の不安は、「こんな大金を借りて大丈夫なのだろうか？本当に返せるのか？」ではないでしょうか。出来るだけリスクを抑えるために借入は少なくしたい、という人も多いと思います。お金を借りるうえでこの不安は絶対に消えません。返せる自信はあったとしても、何が起きるか分かりません。消せない不安であれば、万が一が起きた時にどうしたら良いのか、どんな対応策が打てるのか？を知っておくと、少しは不安も抑えられるのではないでしょうか。
〇何があっても返さなければなりません
当たり前のことですが、借りたお金は返さなければなりません。極論ですが、自分が死んでしまっても借金は消えません。自分の相続人が借金を引き継いで返さなければなりません。もっとも、この時のために団体信用保証という制度がありますから、是非、加入することをお薦めしています。死んでも消えない借金な訳ですから、何があっても返さなければならないお金ということになります。
〇返済が苦しくなった時にやってはいけないこと
売上が落ち込み、お店の家賃、給料などの経費の支払いはできるが、借入の返済は厳しいという状況になってしまった時にどうすべきか？
一番やってはいけないことは、銀行に事前に相談することなく銀行口座からの引き落としができない状態になってしまうことです。引落が一日出来なかっただけでも、今後の金融機関の関係で致命的な悪影響を与えてしまいます。返済の遅れは信用情報に記録され、今後、５年間は他の金融機関でも情報を共有されることになります。
〇返済が難しくなりそうな時に打つべき手
まずは返済が難しくなりそうになっていることを「事前」に金融機関に相談をしてください。金融機関としても返済をしてもらわないと困るのです。もっとも、返済の見込のない人に追加融資はしてくれませんが、返済が難しくなってしまった理由によっては助けてくれることの方が多いです。
創業融資を受けてからどれくらの時間が経過しているのか、つまり、どれくらの実績を積んできているかにもよりますが、最も打ちやすい手は、追加でお金を借りるやり方です。このやり方には２つの方法があります。
１つは純粋に追加で運転資金を借りるというもの。創業融資を借りた銀行で追加融資を相談するか、もしくは、新しく取引をする金融機関でお金を新たに借りるというやり方があります。後者については、お店をオープンしてからの売上、利益の状況を重視されますので、お店の経営状況が悪化している時は現実的には難しいと思っておいた方が良いです。そのため、創業融資を借りた銀行で、相談しながら追加融資を受けるのが現実的な対応となります。
もう１つは、追加でお金を借りるのではなく、一番最初に借りた金額での「借換」という方法でお金を借りる方法です。例えば、1000万円の創業融資を借りた人が、これまで100万円のお金を返していたのであれば、再び1000万円の融資を受けるというお金の借り方です。実質的には100万円の追加融資を受けるのと同じ効果がありますが、金融機関としては追加融資をするよりも、こちらの借換の方が対応しやすいようです。
〇据え置き期間を設定する
追加融資や借換で追加の資金を調達する際に、「据え置き期間」を設定することで当面の間の資金繰りの負担を少なくすることが出来ます。据え置き期間というのは、通常は融資を受けたらすぐに返済が始まるのですが、元本部分の返済はせずに、最初は利息だけを支払うことで毎月の返済として出ていくお金を減らすことが出来ます。追加でお金を借りても、結局返さなければならないことに変わりはありませんので、返済の目途が付くまで少しでも時間を確保することが重要となります。
〇それでも返せない時は？
最後の手段ですが、今の借入のリスケジューリングです。追加融資や借換ではなく、今の融資自体の返済が難しいということで、当初の計画の見直しを行うことをリスケジューリングと言います。毎月8万円返済すべきところを、毎月必ず支払える金額を決めその金額で返済計画を立て直して返済をする、というものです。状況によっては仕方のない事ですが、この返済条件の見直しというのも致命的な信頼失墜行為となりますので、できるだけやるべきではありません。
〇おわりに
借入は怖いもの。こんな話をするとより一層怖さが増したかもしれません。お店を開業した後に何があるか分かりませんし、絶対に大丈夫という保証が無いからです。
普段から注意したいのは、怖いから借入を減らすのではなく必要な金額を借りるということと、返済が難しい状況になれば予め金融機関と相談して、信用情報に傷がつかない状況の内に対策が打てるような準備をすることです。最悪なケースでも常に選択肢を把握しておくことがとても重要となります。
美容室専門税理士 中嶋 政雄
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