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美容室の開業 居抜譲渡契約書の書き方次第で融資金額が減らされる?

 美容室の居抜き譲渡。出店費用が抑えられることもあり、居抜き譲渡での出店を希望している人も多いです。居抜き譲渡の契約については、一般的に居抜き譲渡の契約書はネット上にあるテンプレートを使って作成されることが多いのですが、書き方を間違えると創業融資の融資額を減らされてしまう可能性があるので注意が必要です。今回はどんな場合に減らされる可能性があるのかをご紹介します。

〇居抜き譲渡の契約書には何を書くの?
 美容室を売りたい人と、開業するために買いたい人。この二人が当事者として合意して作成する書類が居抜き譲渡の契約書となります。
 契約は自由ですから、基本的にはどんなことを書いても双方の合意があれば何を書いても問題はありません。
 一般的に記載される内容は、①いくらで譲渡するのか、②どんな内容の譲渡なのか、③支払いはいつか、④だれとだれの契約なのか、⑤約束に違反した場合はどうなるのか、概ねこんなところでしょうか。
 巷で言われるM&Aという格好いいものではなく、仲介会社が入ることは少なく、売りたい人と買いたい人が話し合いをして決める場合がほとんどです。

〇譲渡する資産を細かく書いた方が有利って聞いたけど?
 今回の相談者の方は、お店を開業する側、つまり買い手側の方でした。売主さんからは、今のお店の内装や機材をそのまま引き渡すとして、例えば300万円だったとします。多くの場合は、この対象となる資産は何か?と譲渡金額に関心が向くと思います。買い手の方は、契約書の中に売買する内容を細かく書いた方が節税になる、と聞いて売主に頼んでシャンプー台、セット面、給湯器など、内容と金額を細かく分けて書いてもらったようでした。売主さんは300万円で売れるなら何でも良かったので買い手の方の提案をそのまま受け取り契約書を作成したようでした。

〇どうして融資額が減らされる可能性があるのか?
 譲渡する美容室のシャンプー台やセット面などは、実は新しいものに付け替える予定で本当は必要なかったのです。しかし、売主からは今のお店の状態で値段提示を受けていたことから、本来は不要な美容機材なども含めて300万円で購入することにしていました。創業融資の申請書には、新しい美容機材の購入をするとして設備資金の借入をするために見積書をつけて融資申請をしていました。
 しかし、融資担当者から言われた言葉は、譲渡契約書にも美容機材が書かれている。新しく購入する必要は無いのではないか?と言われてしまいました。いやいや、譲渡契約書に書かれている機材は引き取るけど、すぐに廃棄して新しい機材を購入します、と説明したものの、今後は、では譲渡契約書に書かれている機材を買わないとすれば、もっと譲渡金を下げられるのではないか?と指摘されてしまいました。

〇おわりに
 問題だったのは、譲渡契約書に美容室の機材について細かく書いてしまっていたことでした。確かに税務上は買い取る資産の詳細が分かれば、経費として計上する金額が大きくなることはあります。これは間違った情報ではないのですが、融資担当者からすればごもっともな話で、中古を買い取るなら新品の購入は二重になるから必要ない、もしくは、値段が付いている機材を使わないならその分を買い取らなければ譲渡金が下げられるはず、というのは当然です。
 美容室内装機材一式、という表記であれば問題はなかったのですが、細かく記載してしまったことが逆効果となってしまいました。どうせやるのであれば、不要な美容機材に相当する金額は運転資金として融資申請をしておけばよかったと思います。
 居抜き譲渡の契約書は、第三者が入ることなく作成することが多いです。お互いにとっては問題はなくても、金融機関などの目もはいることを想定して作成することが大切です。

美容室専門税理士 中嶋 政雄

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