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アトミヨソワカ

 今年は昔ながらのクヌギが多く残る『阿古谷(あこたに)』地区から、原木を調達した。八月に帰った際に伐り出した山を見に行ってみた。そこには、しっかりと『萌芽更新(ほうがこうしん)』により再生されたクヌギの姿があった。『萌芽更新』とは、切り株から新しい芽が生えてくること。森の中で静かに生えているその姿は、ある種異様な存在感と生命力を感じさせる。森の長老のような大きなパワー。僕はこの風景が好きだ。

阿古谷地区

 原木しい茸を作るには、クヌギやコナラなどの原木が必要。これらクヌギなどの樹は伐ることで、『萌芽更新』が行われ、何百年と生きる事できるという。また、人間はそのクヌギの樹の恵みを受け続ける事ができる。このようなクヌギは、根元の台だけが太くなっていくため猪名川上流の地区では『台場クヌギ』と呼んでいる。この地区には江戸時代初期から四百年以上も続く、歴史のある台場クヌギの里山が残っている。

萌芽更新する台場クヌギ

 台場クヌギの森を見ていた所、ちょうど先日、小川三夫(おがわみつお)棟梁にお会いしたことを思い出した。※小川棟梁は最後の宮大工と言われ、数百年に一度の法隆寺の大修理を行った方

「現代の人は考える時間のターム(期間)が昔の人と比べて非常に短いと思うんです」

 小川さんはそうおっしゃられた。小川さんは、宮大工の仕事に打ち込むうちだんだんに昔の人の考えて声が聞こえるようになったそう。材木に使う杉は樹齢七百年を超えるものあり、七百年後の私たちに思いを巡らし樹を植えた人の繋がりや、大工さんの工夫を感じられるようになったんだという。昔の人は、繋がって生きてきた。その時代の横の繋がりもあれば、祖先という時間の繋がりもある。しかし、今は自分本位の短い単位の時間の過ごし方をしてしまっていると。過去からの繋がりの中で生かされている自分の行動に責任をもって将来に繋いでいく。その瞬間瞬間に最善の事を行う。そうした姿勢を『アトミヨソワカ』というんだそう。この呪文のような『アトミヨソワカ』の『アトミヨ』は「跡を見て、もう一度確認せよ」、『ソワカ』は成就を意味するという。

、宮大工の小川 三夫さんと!

 クヌギの話に戻ると、更新された新芽は二十年後には立派な原木としてまた活用することができる。先人は自然を熟知し、持続可能なシステムを作ってきた。持続可能な社会を求める現代で、昔からのバトンを繋がず新たに考えるだけでなく、さらに発展する方向も考えたい。


 今日は『四百年の時間』を感じながら、しい茸をたべてみたい。

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