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初めての北アルプス 常念岳(2023/09/01)

筑波山に登ってからというもの、すっかり登山にハマって、大菩薩嶺、奥高尾縦走、塔ノ岳、御岳山縦走と東京近郊の低山で練習を積んで、そろそろアルプスに挑戦してもいいだろう(というか高山に登りたい!)ということで、北アルプスの常念岳に登ってきた。
タイトルには「初めての北アルプス」と書いたが、むかーし燕岳に登っているので正確には2回目である。ただし、それも15年以上も前だし、大人になってからは初めてなので、やっぱり気持ち的にはファーストタイムと言ってもいいのではないか。

初めての高山、最初に登るべき山はどこか

やっぱり日本の山と言ったらアルプス、その中でも北アルプスが特に有名で人気である。急峻で険しい北アルプスの山々の中にも、もちろん初心者向けの山というのがいくつかあり、アルプスデビューする人は最初にどの山に登るかで迷うことになる。
色んなサイトを見たり、信州 山のグレーディング で難易度 B の中から手頃な山を探してみる。ということで候補に上がったのは

  • 燕岳

  • 唐松岳

  • 常念岳

  • 焼岳

  • 爺ヶ岳

あたり。
燕は難易度的にも魅力的ではあるが、一度登ったことがあるからとりあえず却下。最終的に常念に決めたのは地元安曇野の山であり、小さい頃からその名前を聞いたことがあったからというのが大きい。

移動手段

東京から登山口までの移動には毎日あるぺん号を使った。

こんなツアーバスがあるのを知らずに今まで生きてきたけど、登山者の間では有名らしい。まあこういうものがないと登山口までアクセスするのは中々大変だよな、というのはその通りである。このバスは早朝の登山口まで直行してくれるので、バスから降りてそのまま登り始めることができるのが特徴。マイカーを持っているならいざ知らず、他の公共交通機関だとやはり登山口に着くのが遅くなってしまったり、前泊を余儀なくされてしまう。また、マイカーであっても駐車場争奪戦というのがあるらしく、人気の山では相当早く前入りしないと駐車場が満車になって詰む、ということもあるらしい。のんびりしたくて山に行ってるのにそんな殺伐とした戦いに巻き込まれるのも嫌な気分である。
ツアーバスであればその点心配はいらない(夜行なのでそれはそれできついのだけど)。

ルート

メジャーな一ノ沢登山口からピストンするコース

活動ログ

距離:15km
獲得標高:1990m
タイム:Day1: 7時間19分(休憩込み)、Day2: 4時間43分

Day1

仕事を終わらせて深夜の竹橋、毎日新聞社前へ。
ここから夜行バスで長野に向かう。ロビーに着くと、すでに登山の格好をした大勢の人たちが通路に鎮座していて、なんだこの空間はと思った。
すぐ横のファミマで行動食なんかを調達してから、程なくして受付が始まった。自分は現地の常念小屋で一泊のプランだったのでここで宿泊表みたいなものをもらえた。そういうシステムか。

毎日あるぺん号

あとはバスに乗り込んで寝るだけだが、高速バスの座席なんかで当然寝れるはずもなく…。狭いし、微妙な間隔でサービスエリアに着くのもあって寝るのは無理ゲー。諏訪湖サービスエリアで降りた時は寒ってなった。半袖じゃ寒い。真っ暗な諏訪湖を眺めながら、これから山に登るんだという謎の高揚感があった。諏訪湖で運転手が交代して安曇野 IC で高速を降りて山の中へ。

一ノ沢登山口

朝4時半に一ノ沢登山口に着く。あたりはまだ暗い。同じバスで降りたのは10人ほどだった。自分は朝ごはんのおにぎりを食べながら登山靴に履き替えたり、登山届を出したりして、5時ぐらいにスタートした。寒かったのでシェルを着て、暗かったのでヘッドランプを装備。最初はなだらかな道を進んでいく。

しばらくすると明るくなり、気温も上がってきたので上着を脱いでTシャツ一枚になる。

今日は金曜日。有給を使って山に来たわけだけど、平日ということもあってか人が少ない。つい昨日の夜までコンクリートジャングルの中にいたのに、今は山の中に一人。不思議だ。

周囲が見えるようになると、北アルプスを歩いているんだという実感が段々湧いてきた。

沢沿いの道を歩く

沢沿いの道なので沢のせせらぎが聞こえたり、ところどころ水が流れてる中を歩いたりと中々楽しい。

6:50 笠原沢

笠原沢の出合。ここでちょうど中間地点らしい。
ちょいちょいある支流の湧水で水を補給できるので、水の管理はそこまでシビアにならなくて良さそうなのがありがたい。

振り返ると結構高いところまで登ってきたのがわかる
7:30 胸突八丁

あまり休憩もせずどんどん登っていったらいつの間にか胸突き八丁まで来ていた。足の疲れはあまりないけど寝不足のせいか頭が少し重い。
胸突き八丁とはあまり聞き慣れない言葉だけど、一般名詞になっていて「物事を成し遂げる過程で、いちばん苦しい正念場」という意味らしい。つまり、ここからはこの登山道の中でもとりわけ険しく急登であるということか。

確かに登りが急にはなったけど、普段ランニングで鍛えているからか、まあまあ余裕を持って登ることができた。

最終水場

最終水場に着いた。水を補給してちょっと休憩。中々景色が開けないので実感がないけど、もう既に標高2200mを超えている。登山口から1000mも登ってきたらしいけど実感がない。東京タワー3つ分を登ってきたことになる。

この先は最後の一踏ん張りということで、気合い入れてそこからは一気に登っていく。いくつかのベンチを過ぎてしばらく登ると、急に開けた場所に出た。

8:30 常念乗越

常念乗越キター。視界が開けて周りの山々の山容を目にすることができる。天気が最高だったので槍ヶ岳や穂高がくっきり見えた。そして達成感が半端ない。ひとしきり感傷に浸ると同時に、意外とサクッと登れてしまったなとも思った。乗越までコースタイム4時間半のところを3時間半で登ってしまった。若者で調子が良ければそんなものなのだろうか。

ベンチで少し休憩したら、ザックをデポして山頂を目指す。

乗越から山頂までの道のり

山頂までの登りはゴツゴツした岩場の急登を登っていく感じ。乗越までは整備された登山道だったけどここからは岩の道で、結構体力を持ってかれた。景色がいいのでちょいちょい止まって景色を楽しみつつ、ゆっくりと登っていく。

そしてついに…

9:45 常念岳山頂

常念岳、登頂!!

標高2857m。登山口から1500mも登ってきた。
雲はあるが全体的に晴れていたので景色が良すぎる。穂高連峰も槍ヶ岳も富士山も松本平野も全部見える。
この景色を見るために何時間もかけて登ってきたとも言える。

はあ、最高。ずっと眺めてられるなあ。

本当に来てよかった、心からそう思えた。充実感が半端じゃない。ここまで上がってこないと見れないこの景色、最高以外の言葉が出てこない。

金曜だけど山頂にはそこそこ人がいた。ソロの人やらお揃いの金峰山Tシャツを着たおばさん3人組やら全身アースカラーで固めた山ガール4人組やら。

槍、大キレット、穂高
奥は上高地方面
大天井岳方面
安曇野の街。右端に富士山も見える。

山頂で景色をたっぷり1時間近く堪能したら乗越まで下って外のベンチで休憩。

ちなみに今回の相棒は MILLET のサースフェー40L。数年前にバックパッカーをやった際に購入して、それ以降押入れに封印されていたザックをまさかここで使うことになるとは思ってなかった。

旧モデルのサースフェー

時間は正午前。常念小屋にチェックイン。山小屋にチェックインするのは人生で初めて。一泊二食付きで15000円也。部屋が相部屋で、コロナ対策なのか、かなりゆったりとしたスペースがあった。

11:40 常念小屋

お昼に何を食べようか迷って、結局ラーメンを食べた。隣のテーブルの人が食べてるカレーが美味しそうだったのでまた来ることがあったらカレーを食べたい。

懐かしの味噌パンが売ってたからそれも買ってみた。口の中の水分が全て持っていかれるパン。安曇野民にとっては懐かしの味。小学校の給食でもたまに出た気がするなあ。

売店で手拭いとポーチを購入。登山バッジが売り切れだったのが残念。

さて、ここまでやってまだ午後1時、めっちゃ暇になってしまった。なんもやることないから2時間ほど昼寝したけどそれでもまだ15時。常念岳は健脚なら日帰りもできるぐらいの山であるので、今回自分の足としてはかなり余裕のある工程を組んだということになるが、初めてのアルプスで何が起こるかわからないしこれは自分なりにリスクヘッジだ。山を舐めたらあかんから。

小屋に置いてあった雑誌を読んだり岳を読んだりビールを飲んだりしながらぼーっと時間が過ぎるのを待つ。なんとも贅沢な時間。

小屋のテラスから槍ヶ岳がバーンと見えるのが最高で、そこのベンチに座ってただただ山を眺める。いつかあの槍の穂先にも登りたいなあなんてことを考えていた。

ベランダからの眺めが最高

夕食はハンバーグ。相席だったのだけどソロの人はソロの人で席が固められるのでみんな黙々と食べる。談話室の席がほぼ埋まるほどだったから50人ぐらいいたかなあ。ほぼ年配の人で若い人はほぼいなかったけど。ご飯のあとはビールをちびちびやりながら本を読む。

夕食

19時過ぎに外出たら月がすんごいのよ。まん丸でとにかくでかい。あとで知ったけどスーパーブルームーンの次の日だったっぽい。静寂の中、月と安曇野の夜景、これも乙。山の夜は早いので20時には消灯。同部屋の人がイビキがすごくてしんどかった。

Day2

24時過ぎに暑すぎて起きてしまったのでフリース脱いだ。そこからは割と熟睡できて4時に目が覚めた。みんな朝日を見ようと準備をし始めていた。小屋の外に出ると、東の山々が赤く染まって綺麗だった。

ただ中々朝日が顔を出さなくてもどかしい。諦めて小屋に戻っちゃう人もいたが、辛抱強く待つ。夏とはいえ稜線上は風があって結構寒い。フリースとシェルを着ていたがそれでも辛い寒さだった。

後ろを振り返れば槍ヶ岳方面のモルゲンロート。

30分ぐらい粘っていたらようやく朝日が顔を出した。

朝日を拝んだら、小屋で朝ごはん。普段の朝ごはんよりもしっかりしている。

朝食

朝ご飯を食べたら、下る前に一回山頂登っておくか、ということでアタック。体が軽く40分ぐらいで登れた。そんでまた今日も景色が最高なのよ。山頂で会った人は三俣から登ってきたらしくこれから蝶ヶ岳まで行くらしい。いいなあ。一通り眺めて名残惜しさを感じつつ下る。

山小屋で一ノ沢からのタクシーの予約をしてもらった。一ノ沢は公共交通機関がなく、電波も入らないので小屋でタクシーの予約をするのが一般的らしい。下山のコースタイムが3時間半なのでそれに合わせて予約してもらう。

さあて後は下るだけということで下山開始。朝8時。土曜だから登ってくる人も結構いてすれ違いが大変だった。

細い道でのすれ違いは神経を使う

ゴールが近づくにつれ、「やっと終わったか」ではなく「もう終わってしまうのか」「もっと山にいたい」という感情が沸き起こっていた。後ろ髪を引かれる思いで下山していく。

調子良くどんどんと下ったので11時には登山口に着いてしまった。

10:50 一ノ沢登山口

にしても無事下山できてよかった。登山口が見えた時はホッとした。来る前は本当に登れるのか不安もあったけど、2日間、特にアクシデントもなく、初めてのアルプス登山にしては上出来なんじゃないだろうか。

毎日あるぺん号の帰りのバスはほりでーゆに来るらしいのでタクシーでほりでーゆまで移動。
温泉に入って一息つく。ほりでーゆに来たの高校生ぶりだな懐かしい。蝶ヶ岳温泉という名前がついているの知らなかった。ほりでーゆはほりでーゆだからね。
食堂でお昼食べてまったりしてバスで帰宅。

今まで低山を登ってきて、今回が初めての高山登山となったが、下山して思うのは「やっぱり山はいい」ということ。登山なんて人によってはただ辛いだけだと思うかもしれないが、自然との触れ合い、達成感、そして登った人しか味わえない景色が、自分の心を豊かにしてくれる、そう思える山行だった。やっぱり山はいい。

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