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何を求めて山に登るのか〜ガスだらけの唐松岳、五竜岳縦走〜(2023/9/18)

山に登る理由は人それぞれ。100人いれば100通りの山登りがある。
今回の山行で、自分は何を求めて山に登るのかがなんとなくわかってきたような気がする。そんな登山だった。

はじめに

常念岳に登って、登山の味を完全に占めてしまった。次にどこに登ろうか。
前回はピストンだったので次はちょっとだけレベルを上げて縦走に挑戦したい。唐松岳は初心者でも登りやすく、五竜岳への縦走路もそこまで険しくないとのことで、一泊二日で唐松岳、五竜岳を縦走することに決めた。

今回の工程で悩ましかったのは1泊にするか2泊にするか、という点。2泊で登る事例も結構出てくるが、前回の常念登山で自分の体力レベルがある程度把握できていたので、1泊でも問題なくこなせるのではないかと思い、今回は1泊2日で行くことにした。また、五竜と唐松のどちら側から登るかというのも悩みポイントの一つだったが、早めに難所の牛首を通過できること、遠見尾根の登りがなんとなくきつそうだったので唐松側から登ることにした。

ルート

ゴンドラで八方池山荘まで上がって、唐松岳、五竜岳と登って遠見尾根で五竜側のゴンドラまで下山するルート。

活動ログ

距離:19.3km
獲得標高:2264m
タイム:Day1: 5時間54分(休憩込み)、Day2: 6時間

Day1

夜の23時、アルピコの深夜便で新宿から白馬方面に向かう。

新宿

朝の5時半ぐらいに八方バスターミナルに着いた。とりあえずローソンに行って朝ご飯等々を調達してゴンドラ乗り場まで15分ほど歩く。雪がない状態のスノーリゾートを歩くのはなんだか不思議な感じがする。冬に来たらそれはそれはいい雰囲気だろうなあと思いながら歩く。スキースノボでは一度も来ることがなかった八方に初めてこうして登山で来ることになるとは。

登山口まではゴンドラとリフトを乗り継いで上がるのだけど、始発が7時なので、それまで靴を履き替えたり準備運動したり朝ごはん食べたりしながら待つ。

チケット売り場の横にはかりがあったのでザックを乗せてみたら11kgだった。これが重いのか軽いのかよくわからない。1泊2日山小屋泊の荷物としては重いような気もする。テントとか寝袋とかクッカーとか入れたら15kgぐらいにはなるのでここからさらに1.5倍かあ、それはきつそうだなあなどと思っているうちに、ゴンドラが稼働し始めたのでゴンドラとリフトで一気に標高を上げていく。リフトから下に目を向けるとトレランの人が走っていた。道は整備されており、ゴンドラ等を使わずに自力で登ってくる人たちもいるようだ。

ゴンドラからの眺め

7時40分、登山口である八方池山荘に着いた。
リフトから降りた登山客を待ち受けていたのは真っ白な世界。あれ、なんかガスだらけで何にも見えないんだけど。。

八方池山荘

下界から見上げていた時にはそこそこ晴れていたのに、リフトに乗っているうちに一気にガスだらけになってしまったらしい。

まあそんなこともあるか。てんくらはA判定だったし登ってるうちに晴れるかな、なんて呑気なことを思いながら登り始めた。

2023年の北アルプスは水が不足しがち

ちなみに2023年は北アルプスの一部の山小屋は深刻な水不足に陥っている。暖冬による雪解け水の減少や夏場の少雨などが原因で水が十分に確保できなかったかららしい。山荘の水道が使えないのは中々ハードな感じだ。
一応その辺は事前に確認して、今日泊まる予定の五竜山荘の方はまだ水があるらしく、安心して登れる。

残念ながら周りはガスだらけで何も見えない。。
道は比較的なだらかで、樹林帯というわけではなく背が低い植物しかないので、晴れてたら景色が良くてめっちゃ気持ちいい道なんだろうなあ。

1時間弱で八方池に到着。
雲の間からかすかに白馬方面が見える…!

8:20 八方池

と思うのも束の間、あっという間にガスに包まれて何も見えなくなってしまった。
なんてこったい。

その後もガスの中をひたすら登る。

一向に晴れないガス。
景色の見えない登り道を一人淡々と登るという行為はもはや修行に近い。なぜこんなことをやっているんだろうという気持ちになってくる。

数十メートル先までしか見えない

その後も景色が見えないのでサクサク登っていくと、いきなり稜線に出て唐松岳頂上山荘と唐松岳頂上が見えた。
ギリギリ雲にかからず唐松岳頂上付近の山容を眺めることができた。

唐松岳頂上山荘と唐松岳

美しい稜線にしばし見惚れる。

唐松岳山頂への道

山荘から頂上まではおおよそ30分ほど。

唐松岳登頂!!
うーん、何も見えない!!!

11:00 唐松岳頂上

景色が一ミリも見えないので、写真だけ撮ってすぐに山荘まで引き返してきた。

山荘の向こうは五竜岳方面

山荘の前でカップヌードルを啜る。山の上で食べるカップヌードル、めちゃめちゃうまい。いや、カップヌードルはどこで食べても美味いんだけど、より一層うまい。これで景色が見えたら最高なんだけど。

唐松岳への登りはそこまで急登が多いわけではないし、距離的にも短いので、割と危なげなく登ることができる。

今日はここからまだ五竜山荘まで縦走しないといけないのだけど、体力的には全然余裕な感じ。
ただ難所の牛首があるのと天気が良くないのが心配。休憩もそこそこに、11時40分には出発して牛首を攻める。

牛首入り口の看板

山荘からすぐに牛首の鎖場がある。

確かに足場が悪くて、切り立っているので危険度がそこそこある。
足を滑らせたら普通に死ぬので慎重に歩いたり登ったり。

高度感のある岩登り

ただ、ガスで景色が見えないので高度感がゼロというのもあって恐怖感はあまりなかった。確かに落ちたら死ぬけど3点確保でしっかり踏んでいけば心配はない。むしろ面白い。単調な登りよりもこういった岩場の方が自分は楽しめるらしい。
意外とあっさりと突破。

ガスの中の稜線

そこから先は本当なら最高の景色を見ながらの縦走のはず…だったのにガスで何にも見えない。今回はこの縦走の景色を楽しみに来たのに。。

歩けど歩けど似たような景色ばかりで正直本当に退屈だった。景色見るために登山しているようなものなのでこれはちょっとキツイなあと思いながら淡々と歩く。何も見えない北アルプスの稜線を歩きながら、果たして来た意味があったんだろうかと何回か自問自答した。

途中から雨も降ってきたのでザックカバーをかけてレインウェアを着た。

白岳

次第に強くなる雨。

どんどん条件が悪くなっていくけど、これも勉強。
今後、山を登っていればいろんなことがある。雨やガスの中を登るなんていくらでもあるだろう。自然はコントロールできないからね。こうした自然の変化と向き合うのも登山の醍醐味かもしれない。

山荘まであと少しのところで本格的に雨が強くなってきてしんどいので、ペースを上げて白岳を登り切ると、ガスの向こうに五竜山荘が見えた。

13時20分 五竜山荘

唐松岳から五竜山荘までの縦走コースタイムが2時間半ぐらいのところを1時間40分で歩いてしまった。なんだか勿体無い気がした。
でもとにかく無事に着けてよかった。チェックインを済ませて、濡れたものを乾燥室で乾かす。

五竜山荘の食堂
夕食

夕ご飯。カレーと味噌汁が美味しすぎておかわりしてしまった。

同席だったおじさんとちょっとお話しした。栂池から入って白馬三山を通って五竜まで縦走してきたらしい。すげえー。めちゃめちゃ楽しそう。

食べ終わって部屋に戻ってどうしようかなあって感じだったのだけど、同部屋の3人と楽しく山のおしゃべりをすることができたのでいい感じに時間を潰せた。流れで明日の朝の五竜岳ピークハントも一緒に行くことに。

Day2

山頂で朝日を拝むために4時すぎぐらいに起きて、準備を始める。まだ暗いけど雨は止んで晴れ間も見えている。同部屋の4人でヘッデンをつけて登り始める。

東の方がうっすら赤く染まっているのが見えた。

五竜岳への登り
ハードな登り
かなりの傾斜の岩場

岩場で道がちょっとわかりづらい箇所や中々険しい岩のクライミング箇所がいくつかあった。

1時間ほど登って山頂に到着。ピークで朝日を見ようなんて話をしていたのに思ったより時間がかかり、すっかり明るくなっていた。

五竜岳頂上

晴れろ、晴れろ、と心の中で念じながら登っていたが、残念ながらまたガスガスで何にも見えないという。時々ガスが晴れて鹿島槍や立山方面が見えたり見えなかったり。いやあ残念すぎる。

鹿島槍ヶ岳方面

しばらく待ってたけどダメそうなので下山。
五竜山荘前で一緒に登った人たちと別れ、そのまま遠見尾根を下り始めた。

しばらく下るとちょっと晴れてきて周りの山々が見え始めた。下ると晴れるという、くそー。
それでも五竜岳は雲がかかっていて、山頂付近は見えない。登ったのに結局どういう形の山なのかをついぞ知ることができなかった。自分は本当に五竜岳に登ったのだろうか。

中遠見、小遠見と通って、下の方まで下ってきた。最後はやっぱり名残惜しくもう終わっちゃうなあ、もっと山にいたいなあという気持ちになった。

10時40分 ゴンドラ乗り場

終わりに

今回の登山は楽しいとは言い難いけど、悪天候の中でもしっかり縦走する体力があるというのがわかってよかった。

そして、自分が登山に何を求めているか。
それは「山の上から見る雄大な景色」だなと思った。
登った者しか味わえない、地球の雄大さを感じさせてくれる眺め。

今回、2日間ともガスだらけの山行となり、景色はほとんど楽しむことができなかった。それ故に不完全燃焼というか満足のいくような登山ではなかった。ピークを踏むことにそんなにこだわりはなく、とにかく景色を見て地球の凄さを感じたい。
もちろん、一歩一歩自分の足で登っていくことの達成感や自然との触れ合い、自分と向き合う時間というのも魅力ではあるが、自分の中ではやはり眺めへの渇望が強い。

今回の山行を通して、また一つ登山の奥深さを知ることができた、気がする。

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