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2016年 100冊目『パナマ文書 : 「タックスヘイブン狩り」の衝撃が世界と日本を襲う』

「ハロー、私はジョン・ドゥ。データに興味はあるか?」

「ジョン・ドゥ」とは、イギリス圏の裁判で実名が公表されては困る人物、あるいは身元不明の死体に用いられる仮名。

「パナマ文書」として世界を揺るがしたスクープは、南ドイツ新聞へのこの一通のメールから始まった。

こうして、本書の著者である南ドイツ新聞のジャーナリスト、バスティアン・オーバーマイヤーのもとに214,000 の架空会社が関係、1,150万件にものぼるデータが秘かに送られて来ることになったのです。

文書の出どころはパナマの法律事務所、モサック=フォンセカ。世界各国のタックスヘブンでオフショア・カンパニーを作るコンサルティング会社です。

データ量は2.6テラバイト。過去のリークとは比べ物にならないサイズ(スノーデンファイルの1500倍)なのです。

南ドイツ新聞はICIJ に協力を求め、世界70か国、400 人にも及ぶジャーナリスト達が極秘に調査活動を開始したのです。

そして、16年4月、各国首脳・独裁者・FIFA役員・財閥総帥、サッカー界の世界的スターであるリオネル・メッシらの巨額な隠し財産、プーチン側近の極秘資産を発表したのです。

タックスヘブンのオフショア・カンパニーを活用して節税する事は、合法ですし、問題ありません。

今回は、多数のデータから、違法取引が発覚したのです。

例えば、コンサルティングなど取引や投資をしたことになっているのですが、実は多額の金を動かすための手段であるケースなどです。

例えば、「キャンセル料つかみ取り」と言う方法です。

オフショア・カンパニーAが別のオフショア・カンパニーBの株を買い取ることにする。ところが、B社が株を揃えることに失敗する。

そのためB社はA社に損害賠償金を支払う。こうして多額の資金を移管するのです。

例えば、もっと露骨なのは、巨額の信用供与による手数料としての移管、日付を遡った株取引、コンサルティング料などの名目で多額な資金を移管するのです。

これを政府関係者が行うのです。つまり、国の金を取るために使っているのです。アフリカの資源国やロシアで多かったようです。

つまり、自分の利益を脱税する事に加え、架空取引で利益を得ていたことも分かったわけです。

しかも、通常は、これらのオフショア・カンパニーは自分の名義以外では作れないはずなのですが、実際は簡単に作れること、それに世界の大手銀行が加担している事を、パナマ文章は明らかにしました。

この情報がきっかけで、何人かの政治家が失脚し、また多数が脱税の罪に問われました。

さらに、16年10月にパナマは、海外居住者の納税情報共有協定に調印しました。少しずつ変わろうとしていると信じたいです。

▼前回のブックレビューです。

▼新著『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』です。

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