2016年9冊目『ザ・ラストマン 日立グループのV字回復を導いたやり抜く力』
日立製作所の元会長の川村隆さんの本です。
話題になったので読まれた方も多いかもしれません。
とても良かったです。リーダは必読ですね。
三枝さんのV字回復の経営が好きな方も多いと思います。あれはミスミさんの復活劇を雛形に数社のエッセンスを加えた名作です。
この本は2009年過去最高赤字7000億円(しかも4年連続赤字)を2年で過去最高益の2000億超の黒字、そして2014年には5000億円超の最高益更新を実現した大企業、日立製作所のV字回復のリアルストーリでーす。
しかも川村さんは社長就任時69歳。初めての子会社の社長で、本体に復帰し、社長になった人の話なのです。
ちなみに、このラストマンと言う言葉は、川村さんが設計課長になった時に工場長の上司に「この工場が沈む時が来たら、君たちは先に船を降りろ。それを見届けてから、オレはこの窓を蹴破って飛び降りる。それがラストマンだ」と言うエピソードから来ています。自分の後ろにはもう誰もいない。この覚悟を持っているかどうかという事です。リーダたるものこうありたいですね。
川村さんはハイジャックに遭遇された経験があります。操縦士は刺され死亡、副操縦士は外に出されました。犯人が操縦桿を握っていました。非番のパイロットの山内純二さんという方が乗り合わせていて、CAの制止を聞かず、マニュアルを無視し、操縦室に飛び込み、事なきを得たのです。緊急時のラストマンの仕事を体感されたわけです。
川村さんが何をされたのか、ポイントを書いておきます。
・意思決定者を少なくし、結論を尖らせた。13名から5名に。
・緊急時の戦略は、「出血を止める」「キャッシュを生む事業を見つける」の両方を行う。緊急時に前者だけをするリーダーが多い。
・「近づける事業」と「遠ざける事業」を決める。前者は注力事業、後者は縮小・撤退事業の事。その際に参考にしたのはスマイルカーブ。上流と下流は儲かるが中流(組立て)は儲からない。
・日立本体以外に利益が流れるのを防ぐために、16の上場子会社を完全子会社化。
・健全な競争を生むカンパニー制を導入(過去、大手企業が導入し、失敗していたのを大改良)そのポイントは、Hitachi IR Day:カンパニー長が直接株主(機関投資家)にアカウンタビリティすることで経営者マインドを醸成。
・社外取締役によるカメラの目:1100億円以上コスト削減した際に、欧米の利益率と比較し、どうするのか詰問するような人を選択。
・会議で必ず結論を出す。15分で決める。そのためには、情報不足でも決める。
・世界で勝てる事業を考える。シェア1〜2位。3〜4位は下位と合併して戦う。それ以下は諦める。
・社長はただの専門職と心得る。専門性は、業績を伸ばす。持続成長できる経営を行う。
・平時の構造改革も行う。
・シンプルな5つのステップ。1現状を分析する。2未来を予測する。3戦略を描く。4説明責任を果たす。5断固、実行する。
・ラストマンにとって大事なのは、実行力である。
1現状を分析する
:必要なのはただ一つデータ。成長産業では前進し、成熟産業からは撤退する。(例外は残存者利益が見込める時のみ)
2未来を予測する
:「先」の「もう一つさき」を読む。読みが外れた際の対策まで読んでおく。フィリピン向けの工場新設。ダメな場合は隣国のインドネシアに進出。
:きちんと止めることも重要。創業のテレビ撤退。
3戦略を描く
:数字以外の話もできる。世の中にどのように役立つのかの話もする。
:朝令暮改もルールがある。戦術は変えても、戦略は変えない。
4説明責任を果たす
:未来を話すことで、社内外がワクワクする意思表明を行う。
:メッセージを伝えるためのキーワードが重要。例えば「稼ぐ力」
:文尾は、「〜します」。「〜したいと思います。」では弱い。
5断固、実行する。
:「情」より「理」をとれ
:PDCAのPDが弱い日本人を認識する。
・修羅場体験で人は成長する。日立流のタフアサインメント。
・逃げたくなる気持ちをマネージする。大きな視点で考えると大したことないという開き直りも重要。
・51点で満足する。そのためには、早く小さく失敗することが重要。
・部下の指導に2割の時間を割く。
・叱ると詫びるを徹底する
・慎重なる楽観主義者:水が半分も入っているけれど、コップいっぱいになればもっと良い。と考えられる人。そして、そうするために考えられて、皆をその気にさせられる人。
・読書で鍛えられるものがある。三大幸福論を読む。
・必要以上に群れない。
・自分の健康に責任を持つ
・ラストマンのラスト(引き際や交代)が大事。
とても参考になります。お勧めです。
▼前回のブックレビューです。
▼PIVOTに出演しました。よかったらご覧ください。
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