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2023年 39冊目『キーエンス解剖 最強企業のメカニズム』

トヨタ(30兆円)、ソニー(16兆円)についで日本の時価総額第3位(15兆強)のキーエンスについての本です。

営業利益率(粗利ではなくて)が実に55%。

平均年収2200万円の会社です。

キーエンスはいわゆるセンサーなど機械を扱っているメーカーです。

しかも製造を外注しています。

いわゆるファブレスメーカです。

日本中に類似の会社はたくさんありますよね。

そうなのに営業利益率55%なのです。

何が違うんでしょう。

例えば、カタログに載っている商品はすべて即納なのです。

1500万円の商品でも、即納で、早ければ翌日に届くのです。

即納率は国内で99.9%、海外でも95%以上だそうです。

即納の何が良いのか。

顧客にとってセンサーが無ければ、工場のラインを止めないといけないのです。

その損失は膨大です。

だから即納してくれるキーエンスは選ばれるのです。

即納するには、在庫が必要です。

キーエンスは直近の利益よりも即納を優先して、在庫を持っているのです。

ある意味、究極の顧客志向だと言えますね。

そして、私の大好きなABCD(当たり前のことを馬鹿にせずにちゃんとできる)を高いレベルで実施している会社ですね。

素晴らしい!

それを個人の意識ではなく、仕組みでできているのです。

こんな高い給料なので成果主義で年収が決まると思いがちですよね、でも実際はプロセス重視なのです。

できることをきちんとすれば、成果が出る。

営業の行動データが蓄積されて、何をすると成果が出やすいかがわかっているのです。

だから、例えば1日の電話の量も規定されていて、それがディスプレーで見える化されています。

顧客が資料をDLしたら、すぐに営業担当に連絡が来て、すぐに電話をするのです。

問い合わせが無くても、1か月に3~4回連絡をして、在庫の納期を伝えるのです。

そして、これらの行動データが蓄積されると、さらにどのような頻度で何をすれば成果につながるのかがわかるようになっているのです。

このような行動管理をして営業担当同志を競わせると、個別最適な行動をと取りそうですよね。

でも、そうではないのです。

キーエンスは9事業×テリトリー制です。

いわゆる縦割りの組織です。

ところが他事業×テリトリーにニーズを紹介して、受注になるとインセンティブがもらえるのです。

これは同業のオムロンを京都で倒すために事業部の壁を壊して協力することが突破口になると気づいたのがきっかけだそうです。

そして、これに代表されるようなナレッジマネジメントも活発だそうです。

営業のナレッジを共有する仕組みがあり、これを共有するのが当たり前。

ださないで囲い込んでいる奴はダサい

しかも、全社の利益が増えると全員の給与が増えるので、ナレッジを囲い込んで自分だけという部分最適な行動を無くせるのです。

これもよいですね

また、悪い兆しを把握する仕組みもあります

それは監査の専門部署の報告データと従業員のアンケート結果の差分です。

大きな問題が起きる前のスモールホールの段階で異変に気付けるようにしているのです。

どこの会社もするとよいのではという仕組みもあります

それは「時間チャージ」

新年度が始まると全社員に共有されるそうです。

前年度の付加価値(粗利)を全社員の総労働時間で割った数字です。

つまり1人が1時間あたりに生み出すべき粗利のことです。

こうすることで、1時間無駄に過ごさない。

時間と利益の結びつきが強くなるのです。

これ良いですよね。

そして、そもそもの高い営業利益率。

これは、営業利益率が7割になるように設計段階から作っているのです。

そうなるような売値をつけて、原価を下げられないかを考え抜いているのです。

頑張って結果、高い営業利益率になっているのではなくて、事前からそうなるようにしているのです。

もちろん顧客のニーズを把握する仕組みもきちんとしています

上述のように営業情報を把握できているので、顧客よりも横の情報を知っていたりします。

必ずロールプレーイングをして商談に臨みます。

情報は購買ではなく、工場・現場から入手し、本当に困っている課題を解決します。

必要であれば、要件定義が決まった後も追加機能を作ります

そもそも顧客のニーズが出る前に予想しています

一方で、現場を信頼しても信用せずにマルサもいます。

無駄なことはしません。

だから飛び込み営業はしないし、接待もしません。

これは海外でも成功しています。

間もなく売り上げの7割は海外になるそうです。

そして、これはキーエンスだけに限らないのです。

MAした会社でも実現できるのです。

ジャストシステムをMAして、同じやり方で年収800万円が1600万円に。

再現性もありそうです。

▼前回のブックレビューはこちら


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