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2021年 6冊目『進化する形』

松岡正剛さんのHyper Corporate University  AIDAの課題図書です。
「なぜ世界にはこれほどさまざまな生物がいるのだろう。動物の「形」進化の謎を解明する。と帯にあります。


系統進化の歴史については、遺伝子や化石によりかなり正確に分かってきた。
しかし、進化が分かった気がしない。

構造主義でも還元主義でもない理論、「アルシャクラシス理論」が90年前に提出された。

第一章 原型論的形態学の限界

自然界にはなぜこのような多様な生物が棲息しているのか
しかし荒唐無稽な怪物や天使は実在しないのか
両者をつなぐ中間型は存在しないのか

多様なパターンは共通性から生まれる
→多様性と共通性は表裏一体の現象
利己的な遺伝子が闘争に勝つことで、現在見ている遺伝子の多くは適応的であるから残っている

→分かるけれど、それで説明できない事も多い
なぜ我々の身体は大まかに左右対称なのか
同じく一対の眼を持つ、背骨を持ち、頭蓋を持つ、神経が分節的に走行するのはなぜか?
選択によってゲノムが篩にかけられる現象:内部選択
主要コンポーネントのような遺伝子がある:マスターコントロール遺伝子、ツールキット遺伝子群

2つの時間軸
進化の時間
発生の時間

→発生プログラム自体も進化する
左右相称動物:バイラクテリア
19世紀の比較発生学者は、脊椎動物の原型、原型論を見出そうとした。

→ニュートン力学が相対性理論の近似で会ったのと似ている
変化にはムラがある
門→網→目→科→属→種
動物界には30門あるが、数億年前、カンブリア爆発の前の比較的短期間に出現した
形の理解
ジョルジュ・キュヴィエ

→必要なセットがある事を示した
特定の動物群に共有された、動物の基本形:「ボディプラン」
発生法則
例:頸椎の数が7つ、耳小骨3つ、横隔膜を用いて呼吸する
→原初の姿、あるいは 安定化の果てに成立した共通性
左右対称動物の特徴は、ある程度サイズを持ったゴカイのようなもの(が元)ではないか(著者)

→「ウルバイテリア仮説」と相性が良い
ボディプランには、下位により小さなグループを定義するサブカテゴリーが入れ子式になっている

第二章 形態学的相動性

相同性:ホモロジー:人の腕の鳥の翼は形や機能は異なっていても形態学的な本質は同じ

相似性:アナロジー:形状と機能は似ているが、見かけの類似性に過ぎない
進化的相同性と深層の相同性
原型と相同性の認識
→結合一致の法則→同じ器官は動物を超えて同じ個所にある
→女神の翼はこの法則を満足できない。
→人の腕と鳥の羽は形態学的には同じ。だから両方を持っている事はあり得ない。

発生、進化、相同性
相同性は、進化とは関係なく純粋に形態学的な概念として成立した。

第三章 分類体系をなぞる胚
胚はモジュール的構成からできている
ベーア

18世紀のドイツの発生学者ヴォルフ
→前成説(もともと決まっている)ではなく後成説を唱えた
キュヴェィエ
→天変地異説

ベーアは両方の影響を受けて、自分の眼で観察し、原型的な胚がある事を確認
ホックス遺伝子群
→特定の機能を特定の場所に作る遺伝子
→ファイロティピック段階で、決まる

第四章 進化を繰り返す胚
親の形が種ごとに様々だとしても、胚の頃には互いによく似ている。
ペーアの法則
→分類学的な入れ子関係が、発生過程において胚に現れる諸特徴の出現する順序とパラレルである。
ファイロタイプは原型的で、最も本質的
脊索は発生負荷(器官設計プロセスに対して責任を負っている)

第五章 反復を超えて
アルシャクシス理論
アナボリー
 →発生後期課程に変更≒微修正
アビーレン
 →発生過程中期に変更
アルシャラクシス
 →発生初期から変更
 →個別適応ではなく進化的新規形質を得る

第六章 進化するボディプラン:アロモルフォーゼ
アロモルフォーゼ
→大きな分類群を定義するボディプラン自体が変化すること
→大進化と小進化
ボディプランの進化とアルシャラクシス理論の展開

終章:試論と展望
反復論も原型論もその事例は多いが、この世界の生物の多様性を説明できない。

→小さな分類群の中でしか通用しない
左右対称動物の特徴は、ある程度サイズを持ったゴカイのようなもの(が元)ではないか(著者)

→ウルバイテリア仮説と相性が良い
機械と同じようにモジュールを組み合わせて作っている
左右対称動物を見渡せば、細胞型の大まかな分類体系と、初期発生過程における細胞系譜の序列がほぼ一致する。

→3つの胚葉に由来する細胞型のカテゴリー
 消化管の上皮細胞は内胚葉に由来
 結合組織や筋、骨格を形成する細胞型は中胚葉から発し
 表皮や神経細胞、内分泌細胞は外胚葉に由来

→ベーアの胚葉説:胚葉の同一性が形態的相動性の根拠となる
実際は逆で、安定化選択の結果としての三胚葉
コ・オプション

→新規形態を生み出す機能→角や手足などが実例

→足をつかさどる機能が角を作っている事例がある
アルシャクラシスは、真の相同物(共有派生形質に近い)
コ・オプションは見かけの類似性や、深層の相同性
ボディプランの進化可能性
いったん出来上がった複雑な体制の動物がそのままの形に留まることなく、アルシャクラシスの過程を経て、別のボディプランを持つ別の動物門を創り出した
かつての生物は、その種独自の器官も多かった、しかしその後は種を超えて同一のものが増えている
実際の進化は原型論を受け付けない、よりダイナミックなものであり、しかも、動物門の進化はこれまで考えられていたほどに困難ではない。
最初から高度な体制を持った動物において、その初期発生過程が変更されることにより、新しいボディプランがもたらされた。
どうすればボディプラン進化は可能か(試論)

→ラディカルなモジュールの繋ぎ変えによって進行してきた

→できかけのボディプランは存在しえない
動物門の数=ボディプランとしている

おさらい
形態学的相動性は、特殊相同性(特定の器官、構造)と一般相同性(分節性、左右対称性など)がある。
ここで扱っているのは、特殊相同性。
発生システム浮動(相同な形質の下部構造が進化的に変化すること:発生頻度も多い)
新しいボディプランの進化とは、基本的体制の軸や極性を再定義し、器官の配置を再統合することを意味する。

一連の基本的パターンは、初期発生プロセスにおいて決まっているので、アルシャラクシスのみがボディプラン進化を説明できる。
エビジェネティック・ランドスケープ

→いくつもの分岐がある谷を越えて成長していくモデル

→進化とは、この地形が変形していく過程
1安定化それ自体が両義的
2生じる揺らぎは不均一なシフトに帰結する
3偶発的な組み合わせが、淘汰の篩にかかり、速やかに安定化していく可能性がある(筆者)
カンブリア紀以降には、動物門の創出は事実上不可能であったのではないか(オープンマーケットが無くなった)
眼ができる時にも、必要な機能が必要な個所にできている
ボディプランの進化の本質とは、安定化選択、アルシャクラシス、コ・オプション

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