2015年 45冊目『シャープ液晶敗戦の教訓』
立命館アジア太平洋大学教授でシャープで33年間太陽電池、液晶研究に携わり、液晶事業本部技師長、シャープアメリカ研究所研究部長などを歴任された中田行彦さんの本です。
帯には、「一人負け」から抜け出せないソニー、BtoBに活路を見出すパナソニック、IGZOで起死回生を図るシャープとあります。
最終製品で台湾、韓国、中国陣営に完敗の日本のものづくり。
なぜ日本は「勝てる最終製品」を生み出せなくなったのだろうか。
誰も気づかなかった「成功の罠」と「技術立国」衰亡の真の原因を明らかにし、世界で勝つための、画期的「すり合わせ国際経営」モデルを提言しています。
タイトルはシャープに対してネガティブに感じますが、著者の愛情を感じられる本です。
第一部では「日本のものづくりの」の崩壊について、第二部ではシャープ「液晶敗戦」の内幕が、第三部では「日本のものづくり」復活への道が書かれています。ポイントを書いておきます。
第一部「日本のものづくりの」の崩壊
日本は関係企業との「擦り合わせ」により素晴らしい最終製品を作ってきました。
ところが、各パーツが「モジュール化」されたことにより、結果として技術力が低い会社でもモジュールを組み立てる事で一定以上の最終製品を作ることができるようになりました。
スマホでは、結果サンドイッチ・ジャパンと著者が言う現象が起きたのです。
ソニーの遺伝子を継いだAppleに高機能製品を抑えられ、中国に低価格製品を抑えられ、日本メーカは両側の圧力でシェアを落とし続けたわけです。
更に投資に失敗(タイミングやイノベーションのジレンマに陥った)液晶、半導体などにも言及し、提携や日本メーカの技術者リストラにより、中国、韓国メーカへの技術流出が、彼らの成長に拍車をかけたことを説明しています。
第二部 シャープ「液晶敗戦」の内幕
世界の「亀山モデル」の成功から、その4倍規模の「堺工場」の建設を始めます。
横軸に時期を取り、縦軸に液晶のガラス基盤面積を取ると正比例しているという「新西村の法則」と言うのがあるそうです。
堺工場は10世代液晶への投資で、対象、時期ともドンピシャでした。一方で同じく横軸に時期を取り、縦軸にガラス基盤面積あたりの投資額を取ると負の相関があると言う「中田の法則」から見ると、堺工場の投資額は、単位あたり2倍と大き過ぎたことが分かります。
投資額の失敗と言うことです。
更にテレビもモジュール化され、サンドイッチ・ジャパンが起き、加えて4原色ディスプレイへの投資と販売不信が拍車を掛けたわけです。
そこにIGZO技術を活かし、サムソンとの提携、中国CECパンダとも提携を行います。しかし、OEMの巨人フォックスコンとの提携は暗礁にに登り、成果は限定的になってしまいます。
第三部 「日本のものづくり」復活への道
ここはざっくり言うとオープンイノベーションで行こうって話ですね。ベンチャーを目利きし、あるいは大学との共創を、得意な「すり合わせ」技術を駆使し、行うと良いと言う話です。
冒頭にも書きましたが、著者はシャープに愛があります。かなりわかりやすい本です。お勧めです。
▼前回のブックレビューです。
▼PIVOTに出演しました。よかったらご覧ください。
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