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2016年 103冊目『魚がたべられなくなる日』

水産資源管理と資源解析の専門家で東京海洋大学准教授の勝川俊雄さんの本です。

面白かったし、とても学びが多かったですし、日本の水産業の戦略不足に危機感を持ちました。

世界の漁業は2030年までに23.6%伸びる成長産業なのです。

ところが、日本だけ生産量が低下する見込みなのです。

世界で日本だけです。

その原因は、人口の多い中国などが乱獲しているという外部要因が原因ではなく、日本国内のルールにあるのです。

外部要因は言いがかりなのです。

ちなみに日本は世界で6番目に広い排他的経済水域を持っている国なのです。

戦略があれば、やりようがあるのです。

何が悪いのか、資源を管理せずに乱獲しているからです。

魚はきちんと管理すると減らないのですが、日本の排他的経済水域の魚だけが減っているのです。

その理由が管理していないからなのです。
正確に言うと管理しているのですが、ざるなのです。

水産資源を管理するには大別すると2つの方法があります。

1入口規制:漁船の大きさ、数、出漁日数、漁具などを制限する

2出口規制:水揚げできる漁獲量の上限を設ける。

加えて2の出口規制では、漁獲量の上限に対して早い者勝ちとするダービー方式と個々の漁業者に配分しておく個別漁獲枠方式があります。

世界の漁業は、入口出口とも規制をする。加えて出口はダービー方式ではなく、個別漁獲枠方式にするというものです。

なぜかというと、入口出口両方をチェックしないとずるいことができるからです。

加えて、ダービ方式にすると、漁船は対象魚の解禁日に一斉に量に出ることになります。

早めに獲らないと水揚げできないからです。

結果、出産時の雌を獲ったり、幼魚を獲ったりすることになり水産資源を減らします。

加えて、一時に水揚げするので加工場の設備・人員のキャパシティも一時だけ必要になり、コストが嵩みます。

当然、値段も一時に上下するので、売り上げも安定しません。

流通側もコストや売値も安定しないのです。

加えて、急がないと拙いので、天候不順であっても漁に出ることになり事故の確率が増加するのです。

一方、個別漁獲枠方式にすると、高く売れる成魚のみに絞れます。

大型の道具も不要になります。

小型の道具で丁寧に対応することで高く売れるのです。

水揚げタイミングも、加工場のキャパシティに合わせることが可能になります。

危険を顧みずに漁業に出る事もしなくてよくなります。

良いことだらけなのです。

ところが、日本は入口出口戦略も無茶苦茶だし、ダービー方式をとり続けているのです。

何が無茶苦茶なのか。

日本は、基本の船のトン数でさえ低めに見積もっているのです。

毎年抜き取り調査をすると20%程度が過少申告しているのです。

また出口の総量規制も、水産資源を多めに見積もり、規制枠を多めに設定しているのです。

結果、規制枠を下回る水揚げしかないのです。

これでは規制枠の意味がありません。

世界各国もかつてはダービー方式だったり、高めの規制枠をはめていたのです。

しかし、業界団体、政治家、官公庁が話し合い、水産資源の管理を進めていき、結果、漁業関係者の収入も増えているのです。

ニュージーランド、アイスランド、北欧各国は成功しているのです。

この本には、具体的な日本の漁業再生の進め方も載っています。

大賛成の中身でした。

▼前回のブックレビューです。

▼新著『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』です。

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